【番外】ちいさなこいのうた
11月、葵、真緋瑠、夕月の三人は、いつものように喫茶店に集っていた。話題は、「クリスマスをどう過ごすか」。
夕月は彼氏ができたばかりだが、真緋瑠と葵は恋人がいない。ひとり者の二人は夕月をからかった。
「夕月ちゃんは彼氏がいるから、クリスマスはラブラブですわよねー。リア充!爆発なさい!」
真緋瑠が恨みがましく夕月の幸せを妬むと、葵はまだ体験したことのない恋人同士のクリスマスに夢を馳せた。
「いいですわねー夕月ちゃん。きっと素敵な夜を過ごされるのね……。どんな夜だったのか、あとでお聞きしたら野暮かしら」
しかし夕月は照れくさそうに弁解した。
「ちょっと待ってよ!彼氏って言っても、基本ただの友達だから!そんな特別なこと全然ないからね!リア充じゃないよ!全然充実してないから!」
「葵さん、クリスマスは私たち二人で寂しく過ごしましょう……。リア充の爆発を祈りながら」
「そうね。夕月ちゃんの幸せを願って、私達はお邪魔しないようにしましょう」
「二人ともー!!あたしを仲間外れにしないでくれよー!!」
言われっぱなしで悔しくなった夕月は、葵に水を向けてみた。
「葵、二次元に恋人がいるっていつも言ってるけど、今まで好きになった人とかいないの?葵からそういう話全然聞かないんだけど」
葵はきょとんとして首をかしげた。思い当たる者はいない。リアルな人間など、なんだか近くて遠い存在だった。心のどこかで、自分は人間ではないと思う。
「本当に恋をしたことが無いの。いつも、私は魔族だから、人間と結ばれてはいけないと思っていましたし」
そう言われてみれば葵は魔族だった。触れてはいけないことに触れてしまったかと思って、夕月は反射的に「ごめん」と謝った。
しかし、真緋瑠はそれを聞いて、「じゃあ魔族で好きな人はいないのか」と訊いてみた。
「葵さんのお屋敷にはたくさんの魔族が働いてらっしゃるんでしょう?そうですわ!執事のギンモクセイさんとか好きになったことはないんですの?お姫様と執事の禁断の恋とか、よくある話ではなくて?」
真緋瑠の思いつきに夕月は色めき立った。
「あー!それありそう!!ギンモクセイさんめっちゃかっこいいよね!いっつも一緒にいるんでしょ?あんなカッコいい人がそばにいたら一度くらい好きになったりしちゃうよ!」
そう言われても、ギンモクセイは家族同然だし、そんなにカッコいいと意識したことはない。
「それは、幼い頃たまに一緒に寝てもらったことはありますけれど、ギンモクセイとは、そんな関係では……。それに、ギンモクセイはオジサンよ。年が離れすぎてますわ。お母さまより年上の方となんて……」
「えー!あんなにカッコいいのにお母さんより年上なの?魔族って見た目わかんないね!」
「葵さんが気にならないっていうなら、あたくしを紹介してくださらない?あたくしギンモクセイさん結構好きですわよ!」
そんなにカッコいいだろうか。葵は、なんだか複雑な心持になった。
夕月は彼氏ができたばかりだが、真緋瑠と葵は恋人がいない。ひとり者の二人は夕月をからかった。
「夕月ちゃんは彼氏がいるから、クリスマスはラブラブですわよねー。リア充!爆発なさい!」
真緋瑠が恨みがましく夕月の幸せを妬むと、葵はまだ体験したことのない恋人同士のクリスマスに夢を馳せた。
「いいですわねー夕月ちゃん。きっと素敵な夜を過ごされるのね……。どんな夜だったのか、あとでお聞きしたら野暮かしら」
しかし夕月は照れくさそうに弁解した。
「ちょっと待ってよ!彼氏って言っても、基本ただの友達だから!そんな特別なこと全然ないからね!リア充じゃないよ!全然充実してないから!」
「葵さん、クリスマスは私たち二人で寂しく過ごしましょう……。リア充の爆発を祈りながら」
「そうね。夕月ちゃんの幸せを願って、私達はお邪魔しないようにしましょう」
「二人ともー!!あたしを仲間外れにしないでくれよー!!」
言われっぱなしで悔しくなった夕月は、葵に水を向けてみた。
「葵、二次元に恋人がいるっていつも言ってるけど、今まで好きになった人とかいないの?葵からそういう話全然聞かないんだけど」
葵はきょとんとして首をかしげた。思い当たる者はいない。リアルな人間など、なんだか近くて遠い存在だった。心のどこかで、自分は人間ではないと思う。
「本当に恋をしたことが無いの。いつも、私は魔族だから、人間と結ばれてはいけないと思っていましたし」
そう言われてみれば葵は魔族だった。触れてはいけないことに触れてしまったかと思って、夕月は反射的に「ごめん」と謝った。
しかし、真緋瑠はそれを聞いて、「じゃあ魔族で好きな人はいないのか」と訊いてみた。
「葵さんのお屋敷にはたくさんの魔族が働いてらっしゃるんでしょう?そうですわ!執事のギンモクセイさんとか好きになったことはないんですの?お姫様と執事の禁断の恋とか、よくある話ではなくて?」
真緋瑠の思いつきに夕月は色めき立った。
「あー!それありそう!!ギンモクセイさんめっちゃかっこいいよね!いっつも一緒にいるんでしょ?あんなカッコいい人がそばにいたら一度くらい好きになったりしちゃうよ!」
そう言われても、ギンモクセイは家族同然だし、そんなにカッコいいと意識したことはない。
「それは、幼い頃たまに一緒に寝てもらったことはありますけれど、ギンモクセイとは、そんな関係では……。それに、ギンモクセイはオジサンよ。年が離れすぎてますわ。お母さまより年上の方となんて……」
「えー!あんなにカッコいいのにお母さんより年上なの?魔族って見た目わかんないね!」
「葵さんが気にならないっていうなら、あたくしを紹介してくださらない?あたくしギンモクセイさん結構好きですわよ!」
そんなにカッコいいだろうか。葵は、なんだか複雑な心持になった。