皆、ごめんね、じゃなくて

「葵、あたしたち、葵のために、頑張ったんだよ…?」
心優しい夕月は、さらに葵に助け船を出した。真緋瑠が葵から引き出したかった言葉。それは――。
「…………あ。あ、あ、あ、……あり、がとう……?」
恐る恐る葵が感謝を述べると、真緋瑠がたまらず破顔した。
「感謝の言葉が、遅すぎるでしょう?」
葵の目に、涙が溢れてきた。
「あ、あ、あ、あ、ありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう。ごめんね、気が付かなくて。本当にありがとう。ありがとう…」
「ごめんって言われるより、ありがとうって言った方がいいよ、葵。もう、十分謝ってもらったからさ」
夕月の目からも涙が溢れてきた。真緋瑠も、いつの間にか泣いていた。
三人は、抱きしめあって、泣いた。
そこへ、スノードロップが入口に顔を出した。もじもじと様子をうかがっていたが、葵が
「おいでスノードロップちゃん。あなたも頑張って戦ってくれたのよね。ありがとう。愛してるわ」
といって招くと、満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
「ゲヘへ!ウホッ!ゲヘへ!ウホッウホッ!!」
涎をまき散らしながら葵の顔を嘗め回すスノードロップ。
「スノードロップちゃんも今まで私に懐かなかったの。でも、これで、やっと今まで通りの私になれましたわ!よかった…よかった……」
葵は力いっぱいスノードロップを抱きしめた。
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