皆、ごめんね、じゃなくて

動乱の夏が、間もなく終わりを迎えようとしている。葵たちは夏休みの宿題の討伐に追われている頃であるが、そのペン先も遅々として進まない。
夕月は真緋瑠から、「葵に構わないように」と釘を刺されていた。
真緋瑠はあれ以降、葵と一切連絡を取っていないという。
「確かに葵は変わってしまったけど…でも、性格が変わるってあらかじめ言われていたことなわけだし…」
夕月は、バラバラになってしまった三人の友情に、胸を痛めていた。
確かに、葵が血も涙もない人間になってしまって、鬼そのものになってしまったのはがっかりした。だが、話し合えばまだ仲良くできるような気がしていた。それなのに、真緋瑠のあの態度……。真緋瑠だけは地球がひっくり返っても葵にべったりでいると思ったいただけに、それもショックだった。
気がかりなことがあると、受験勉強も夏休みの宿題も、全然頭に入ってこないもので。
「このままあたしら、バラバラになっちゃうのかな…?」
夕月は、毎日涙を流していた。

葵もまた、まったく鳴らなくなった携帯電話の画面を見つめ、涙を流していた。
すでに何通もメールを送って謝っているのに、まったく返信がない。
「私の一体何がいけなかったというの?私、何かした?」
墓場の下の城の居間。そこで夏休みの宿題を広げていたが、何も手につかない。
ふと、居間にスノードロップが入って来ようとした。
「スノードロップ……」
スノードロップは、葵がいるのを見つけると、顔をしかめて鼻を鳴らし、踵を返して出ていった。あの一件以来、スノードロップも冷たい態度を崩さない。
「お前まで…。私が一体何をしたというのよ…ごめんって、言ってるじゃない…?」

夏休みも残すところあと一週間となった8月25日。夕月はたまりかねて、葵と真緋瑠に連絡を取った。
葵の家で、三人で勉強会をしようと。
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