第二十五話 TP工房の思惑
「この職人には会ってきたのか?」
社長が男に問う。
「それが、気難しい男らしくて、面談は叶いませんでした」
「ふむ。これだけのこだわりを見せる男なら多少偏屈でも致し方あるまい。むしろ自然だ。ぜひ会ってみたいな。どれ、私が一筆手紙を書いてみよう。職人同士、話してみたいことがある」
幹部の一人が相槌を打つ。
「そして、あわよくば引き抜きですかね。小さな武器屋に収まる男ではないでしょう。ぜひとも欲しいですな」
「まずは工場見学がてら、TP工房の銃工場を知ってもらって、徐々に、交渉しましょう」
「気難しい男らしいからな。しくじるなよ」
銃を分解した男は会議が終わっても会議室に残り、そのギミックを長いこと研究していた。
「負けられぬ。この技術、絶対に我が物にしてみせる。どんな男か、引き出せるものはとことん引き出して搾りつくしてみせるぞ」
その後、晩秋のある日、アントンの元へ一通の手紙が舞い込んだ。
「僕に手紙を寄越すような人なんていないのに……何だろう?」
封を切ると、TP工房の工場見学兼銃作りの研修の案内がしたためられていた。
「えっ、大変だ、ジェイク!ジェイク!」
「あん?何だ?」
「ジェイク、大変です。TP工房から工場見学と研修に来いとの手紙が!」
「あにぃ?!TP工房から?!」
アントンは顔面蒼白だ。どこかでアントンのことをリークした客がいたのかもしれない。
「どうしましょう~。TP工房の銃をカスタムしたのがバレたのかも。絶対叱られますよ。『うちの銃をこんなことしやがって』って直々に叱られるかも」
ジェイクも冷汗が止まらない。カスタムさせたのはジェイクだ。プライドの高い老舗に目をつけられたとあっては、マクソン工房の存続に関わるかもしれない。
「おお、落ち着け。お前にカスタムさせたのは俺だ。俺が責任取って謝ってくるぜ。とりあえず、その手紙もう一度よく見せてみろ」
そこには、「アントン・ニコルソン氏お一人でご来社ください」と明記されている。
「やべえ、消す気だ」
「ええ~?!僕、TP工房に消されるんですか?!」
ジェイクとアントンは震え上がり、数日は死刑宣告を受けた気分で落ち着かない日々を過ごした。
「返事、どうしよう……」
社長が男に問う。
「それが、気難しい男らしくて、面談は叶いませんでした」
「ふむ。これだけのこだわりを見せる男なら多少偏屈でも致し方あるまい。むしろ自然だ。ぜひ会ってみたいな。どれ、私が一筆手紙を書いてみよう。職人同士、話してみたいことがある」
幹部の一人が相槌を打つ。
「そして、あわよくば引き抜きですかね。小さな武器屋に収まる男ではないでしょう。ぜひとも欲しいですな」
「まずは工場見学がてら、TP工房の銃工場を知ってもらって、徐々に、交渉しましょう」
「気難しい男らしいからな。しくじるなよ」
銃を分解した男は会議が終わっても会議室に残り、そのギミックを長いこと研究していた。
「負けられぬ。この技術、絶対に我が物にしてみせる。どんな男か、引き出せるものはとことん引き出して搾りつくしてみせるぞ」
その後、晩秋のある日、アントンの元へ一通の手紙が舞い込んだ。
「僕に手紙を寄越すような人なんていないのに……何だろう?」
封を切ると、TP工房の工場見学兼銃作りの研修の案内がしたためられていた。
「えっ、大変だ、ジェイク!ジェイク!」
「あん?何だ?」
「ジェイク、大変です。TP工房から工場見学と研修に来いとの手紙が!」
「あにぃ?!TP工房から?!」
アントンは顔面蒼白だ。どこかでアントンのことをリークした客がいたのかもしれない。
「どうしましょう~。TP工房の銃をカスタムしたのがバレたのかも。絶対叱られますよ。『うちの銃をこんなことしやがって』って直々に叱られるかも」
ジェイクも冷汗が止まらない。カスタムさせたのはジェイクだ。プライドの高い老舗に目をつけられたとあっては、マクソン工房の存続に関わるかもしれない。
「おお、落ち着け。お前にカスタムさせたのは俺だ。俺が責任取って謝ってくるぜ。とりあえず、その手紙もう一度よく見せてみろ」
そこには、「アントン・ニコルソン氏お一人でご来社ください」と明記されている。
「やべえ、消す気だ」
「ええ~?!僕、TP工房に消されるんですか?!」
ジェイクとアントンは震え上がり、数日は死刑宣告を受けた気分で落ち着かない日々を過ごした。
「返事、どうしよう……」