第二十三話 どこにも行かないで
すっかり夏の暑さも和らぎ、さわやかな秋晴れの続くある日。今日はアントンの誕生日であった。
ことの発端はジェイクの誕生日の七月の夜。
「そういえばお前らの誕生日っていつだ?」
ジェイクが訊くと、アントンが「九月ですねえ」と答え、「え!あたし十月だよ!誕生日近いんだ!」と、誕生日の話題で盛り上がった。
「じゃあ、お前らの誕生日も派手にお祝いしないとな!」
とジェイクが言ったので、カレンダーには二人分の赤丸が書き込まれていた。
待ちに待ったアントンの誕生日ということで、ジェイクは腕によりをかけてご馳走を用意した。ロゼッタもテーブルセッティングや配膳を手伝う。一方アントンは「主賓は何もするな!」との言いつけに、身を固くして料理の出来上がりをただ待っていた。
『誕生日おめでとうアントン!』
祝ってくれるのはロゼッタとジェイクだけの、小さな誕生パーティーだが、アントンは心の底から喜んだ。
「お前に、プレゼントをやる。毎年はくれてやれないレベルの誕生プレゼントだ。働き始めて一年目の記念に、特別にくれてやる」
そう言ってジェイクは重いスチール製の箱を手渡した。開けてみると、TP工房のレアものの銃だった。
「えっ、これ、店で一番高いやつ……!いいんですか?!」
「まあ、あんまり高くて売れないから、身内に譲ってやろうかななんて」
「ありがとうございます!大切にします!」
一方ロゼッタは、「いつも手が真っ黒のアントンにはこのくらいないとだめかなって!」と、ハンカチ五枚入りのギフトボックスを手渡した。
「ありがとうロゼッタ!ちょうど持ってきたハンカチが全部真っ黒になっていたところだよ。大切に使わせてもらうよ!」
そして二七個のラズベリーが乗ったケーキを三人で切り分けて食し、パーティーはお開きになった。
ご馳走でパンパンに膨れたお腹を撫でながらリビングで休んでいると、後片付けを終えたジェイクがアントンの元にやってきてこう言った。
「なあ……アントン。話したいことがあるんだ。一休みしてシャワー浴びたら、俺の部屋に来てくれ」
「えっ……?は、はい」
そう言うと、ジェイクはシャワーを浴びに行ってしまった。
「話って何だろう?」
もったいぶった前フリで呼び出されるとどんな重い話が飛び出すやら不安になってしまう。アントンはネガティブな妄想に駆られてまんじりともせずジェイクのシャワー上がりを待った。
ことの発端はジェイクの誕生日の七月の夜。
「そういえばお前らの誕生日っていつだ?」
ジェイクが訊くと、アントンが「九月ですねえ」と答え、「え!あたし十月だよ!誕生日近いんだ!」と、誕生日の話題で盛り上がった。
「じゃあ、お前らの誕生日も派手にお祝いしないとな!」
とジェイクが言ったので、カレンダーには二人分の赤丸が書き込まれていた。
待ちに待ったアントンの誕生日ということで、ジェイクは腕によりをかけてご馳走を用意した。ロゼッタもテーブルセッティングや配膳を手伝う。一方アントンは「主賓は何もするな!」との言いつけに、身を固くして料理の出来上がりをただ待っていた。
『誕生日おめでとうアントン!』
祝ってくれるのはロゼッタとジェイクだけの、小さな誕生パーティーだが、アントンは心の底から喜んだ。
「お前に、プレゼントをやる。毎年はくれてやれないレベルの誕生プレゼントだ。働き始めて一年目の記念に、特別にくれてやる」
そう言ってジェイクは重いスチール製の箱を手渡した。開けてみると、TP工房のレアものの銃だった。
「えっ、これ、店で一番高いやつ……!いいんですか?!」
「まあ、あんまり高くて売れないから、身内に譲ってやろうかななんて」
「ありがとうございます!大切にします!」
一方ロゼッタは、「いつも手が真っ黒のアントンにはこのくらいないとだめかなって!」と、ハンカチ五枚入りのギフトボックスを手渡した。
「ありがとうロゼッタ!ちょうど持ってきたハンカチが全部真っ黒になっていたところだよ。大切に使わせてもらうよ!」
そして二七個のラズベリーが乗ったケーキを三人で切り分けて食し、パーティーはお開きになった。
ご馳走でパンパンに膨れたお腹を撫でながらリビングで休んでいると、後片付けを終えたジェイクがアントンの元にやってきてこう言った。
「なあ……アントン。話したいことがあるんだ。一休みしてシャワー浴びたら、俺の部屋に来てくれ」
「えっ……?は、はい」
そう言うと、ジェイクはシャワーを浴びに行ってしまった。
「話って何だろう?」
もったいぶった前フリで呼び出されるとどんな重い話が飛び出すやら不安になってしまう。アントンはネガティブな妄想に駆られてまんじりともせずジェイクのシャワー上がりを待った。