第九話 仲良しクッキング

 そうしているうちにロゼッタがバジリコを摘んで戻ってきた。
「ジェイク―!いっぱい採れた!」
「よし、じゃあそれ丁寧に洗って、ボウルの中に細かくちぎって入れて、また混ぜてくれ」
「はーい!」
 一方アントンはトマトのカットが終わったようだ。カットしたトマトをボウルの中に投入する。とろりとした種部分も重要なエッセンスのため、まな板に零れたものも掬い取って全て加える。すると、塩味の付いたオリーブオイルにトマトのリコピンが溶けだして赤く染まった。
「美味しそう!」
「じゃあソースの仕上げにチーズをダイス状にカットしてくれ、アントン」
「1メノぐらいの大きさでいいですか?」
「ああ、そのぐらい」
 切ったチーズをボウルに加え、鍋を時々かき混ぜていると、ジェイクがセットしていたキッチンタイマーが鳴った。茹で上がりのサインだ。
「よーし!じゃあ麺をザルにあけて水で締めるんだ。火傷すんなよ!」
 アントンは水道を最大に開けて勢いよく麺をザルにあけ、水道水で洗って締めた。冷たくなったら完成だ。
「ロゼッタ!皿を出してくれ!盛り付けだ!」
「任せて!」
 一掴みずつ麺をパスタ皿に盛り分け、上から具とオリーブオイルの配分に気を付けながらソースを盛り付ける。ふわりとバジリコとニンニクの芳香が立ち上った。トマトの瑞々しい水分を含んだオリーブオイルが麺の隙間に流れ込んでいき、つるつると光を反射して煌めく。皿から零れ落ちそうなほど山盛りのトマトが食欲を掻き立てた。
『神に感謝を!いただきまーす!!』
 三人はお祈りもそこそこに、空腹へさっぱりとした冷製パスタを流し込んだ。空っぽのお腹は食欲を増幅させ、味覚と嗅覚を鋭くする。待ちかねたようにパクリと口に含めば、世界が色づく。ロゼッタは思わず「美味しい!」と声を上げた。初めて自分で作った料理というのは、努力の味がして格別の美味しさだ。
 塩気の利いたトマトはオリーブオイルの風味も加わり弾けるようにフレッシュだし、バジリコの香りはアルデンテに茹で上がったコシのある麵の風味をワンランクアップさせてくれる。ニンニクの辛みがアクセントになっていて、嚙み潰した瞬間にひりひりと舌を刺激するのも心地いい。とっておきのお楽しみはダイスカットされたチーズだ。塩気のあるミルクの香りがいい箸休めになってくれる。初めて作ったとは思えないぐらい高い完成度に、ジェイクは合格点をあげてもいいと考えた。
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