第九話 仲良しクッキング

 アリッサの説明した世界の秘密は、あとからジワジワとボディブローのように効いてきた。ふとした瞬間に世界の秘密について思いを馳せてしまう。
 人はどこから来て、どこへ行くのか。
 魂はどこから来て、どこへ還るのか。
 星の核とは、一体何なのか。
 近くて遠い真理のある場所に思いを巡らせると、自然と会話がなくなってしまう。丸一昼夜何も手につかない様子で答えのない思案に暮れていると、ジェイクの腹が鳴った。考えてみたら、食欲もなかったような気がする。
「そういや、腹が減ったな」
「そういえば、そうですねー」
「ああ、ちょっと気持ち悪いの、もしかしてお腹すき過ぎかな」
 「料理しなくちゃいけないけど、腹減りすぎてだるいなー」とジェイクが考えていると、ふと、いいアイデアを思い付いた。そういえば、アントンはジェイクのためなら何でもすると言っていたではないか。今こそ有効活用してやろう。
「アントン、お前、俺のためなら何でもするって言っていたよな」
「は?はい……」
「そんなこと言ったのアントン?」
「僕はジェイクのことが大好きだからね」
 ロゼッタは衝撃を受けた。いつの間にそんな仲になっていたのか。疎外感と嫉妬心にかられロゼッタはむきになってアントンに対抗する。
「あっ、あたしもジェイク大好きだよ!あたしもジェイクのためならなんだってするよ!」
 子供の精一杯背伸びした対抗心に、既に一歩リードしているアントンは勝ち誇ったようにせせら笑った。
「ふ。お子様になにができるっていうんだい?」
 今まで穏やかに笑っていたアントンが、かつて見たことのないような態度を取ったことに、ロゼッタは再び面食らう。信じていた大人に裏切られた。絶対に許せない。
「な、なによー!アントン急にどうしたの?別人みたいに嫌なやつになった!」
「そんなことないよ?」
「ジェイク!アントンのこと怒って!」
「何喧嘩してんだお前ら……。まあ、ちょうどいいや、お前ら、俺のためなら何だってするってんなら、俺のために三人分の昼飯つくれや」
 ジェイクの意外な命令に、暫時固まって思案したアントンとロゼッタ。二人の脳内ではせわしなく今後の展開が組み立てられていた。
 ジェイクのために料理する。すると株が上がる。そしてジェイクはより一層好きになってくれる。ここで差をつければ頭一つ抜きんでてジェイク獲得レースに勝てる。ハッピーエンド。
『はい!!!』
 アントンとロゼッタは同時に勢いよく返事した。
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