【短編番外】プレゼント

 翌日、役所は大混雑だった。毎年冬至は婚約するカップルが多く、翌日入籍の申請が混み合うのだ。
「あー、こりゃいつ申請できるか分かんねえな」
「日を改めますか?」
「そうだな。せっかくだからお前が初めて店に来た日に申請するか」
「あ、いいですね。記念日」
「じゃあ止めだ!帰ろ帰ろ!」
 二人は踵を返し、近くの喫茶店に入って休日を過ごした。
「どこか旅行にでも行くか、近いうち」
「旅行!いいですね!骨董品店でいいものが仕入できるかもしれないし」
「仕事の話かよ。まあ、そうだな。仕入旅行ってのも悪くねえな」
「温泉とかどうでしょう?」
「温泉かあ、いいなあ。それか、前に繊細族の朝市で買ってくれたお菓子を探しに、アントンの家に行くのもいいな」
「えっ、僕の家ですか?それはちょっと……」
「なんか不味いか?」
「男性とパートナーになったなんて知られたら殴られます……」
「雇用主としてあいさつに行っちゃまずいか?」
「そ、それなら、多分」
「じゃ、それでいこうぜ」
「じゃあ、故郷の美味しいもの紹介しますよ。食べ歩きもいいかも」
「お、いいねえ」
 二人はコーヒーが冷め切るまで、いつまでも、共に未来を思い描いていた。

END.
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