第八話 男性恐怖症克服プログラム
「へえ、結構広いじゃない」
室内にはベッドが二つにソファが二つ、ローテーブルが一つ、テレビと冷蔵庫とバスルームがついていた。数日滞在しても困らないだろう。
「あたしソファーキープね」
ファティマが早速長ソファーに寝転がる。
「ベッド使えよ。女の子をソファーに寝かせるなんて忍びねえよ」
ヴィクトールがファティマを気遣うと、「とんでもない!」とファティマは反発した。
「ベッドなんかに寝たらあんたたちに寝込みを襲われるでしょ!ソファーがいいの。ソファーの狭さと寝にくさが安心できるの!」
「まだ警戒してるのかよ……」
ヴィクトールは心のどこかで少しは仲良くなれたような気がしていたので、相変わらずなファティマに心を打ちのめされた。これは脈も進展も完全にないだろう。
「ところでさ」
ファティマはソファーに横になったままで二人に話しかけた。
「なんであたしを殺さないの?」
エンリーケがヴィクトールの顔を伺った。ヴィクトールは固まる。
「なんでだろ?」
エンリーケもヴィクトールに訊く。二人の視線を集めたヴィクトール。自然と額から汗が噴き出す。なんと言い訳すべきか……。
「み、身代金で遊んで暮らしたいから……?」
語尾に「?」が付いたことに違和感を感じながら、エンリーケとファティマは一理あるかと考えようとした。しかしだ。
「身代金はもらえるかもしれないけど、あたしさえ殺せばあんたたちは生きられるし、逃げる必要もないんじゃない?あたしが憎いんでしょう?」
筋の通ったファティマの疑問に、ヴィクトールの汗が止まらない。
「お……俺たち、人を殺したことがないんだ」
「あんな闇組織にいるのに?一度も?」
「ああ、楽な仕事しかしてない。だから、人を殺すのが……抵抗があって……こ、殺しにくいなーなんて……。ほら、なんか俺たち打ち解けたじゃん……?」
「ふーん」
ファティマは、悪人の中にも得意分野と不得意分野があるものなのか、と納得した。
「でも別に一緒に逃げる必要なかったんじゃね?」
エンリーケがまた真実を突き、ヴィクトールは頭を抱えた。
「成り行きだよ……そうするしか考えられなかったんだよ……察しろよお前……」
「じゃあこのままどこまでも逃げんの?」
「殺せって言われて今更殺せるかよ!!俺たち逃げ始めたんだから逃げ続けるしかねーだろ!!」
エンリーケは顎に手を当てて、真っ赤になって汗だくで言い訳をするヴィクトールについて考察してみた。
「……ああ!何だ、お前、ひょっとして」
「その先言ったらお前からまず殺す!」
ヴィクトールが釘をさすので、エンリーケは完全に把握した。
「はぁん……。はいはい」
「どういうこと?」
ファティマが二人の微妙な空気を読めずにいると、エンリーケが
「人殺しにはなりたくないんだってよ♪」
と、空気をごまかした。
室内にはベッドが二つにソファが二つ、ローテーブルが一つ、テレビと冷蔵庫とバスルームがついていた。数日滞在しても困らないだろう。
「あたしソファーキープね」
ファティマが早速長ソファーに寝転がる。
「ベッド使えよ。女の子をソファーに寝かせるなんて忍びねえよ」
ヴィクトールがファティマを気遣うと、「とんでもない!」とファティマは反発した。
「ベッドなんかに寝たらあんたたちに寝込みを襲われるでしょ!ソファーがいいの。ソファーの狭さと寝にくさが安心できるの!」
「まだ警戒してるのかよ……」
ヴィクトールは心のどこかで少しは仲良くなれたような気がしていたので、相変わらずなファティマに心を打ちのめされた。これは脈も進展も完全にないだろう。
「ところでさ」
ファティマはソファーに横になったままで二人に話しかけた。
「なんであたしを殺さないの?」
エンリーケがヴィクトールの顔を伺った。ヴィクトールは固まる。
「なんでだろ?」
エンリーケもヴィクトールに訊く。二人の視線を集めたヴィクトール。自然と額から汗が噴き出す。なんと言い訳すべきか……。
「み、身代金で遊んで暮らしたいから……?」
語尾に「?」が付いたことに違和感を感じながら、エンリーケとファティマは一理あるかと考えようとした。しかしだ。
「身代金はもらえるかもしれないけど、あたしさえ殺せばあんたたちは生きられるし、逃げる必要もないんじゃない?あたしが憎いんでしょう?」
筋の通ったファティマの疑問に、ヴィクトールの汗が止まらない。
「お……俺たち、人を殺したことがないんだ」
「あんな闇組織にいるのに?一度も?」
「ああ、楽な仕事しかしてない。だから、人を殺すのが……抵抗があって……こ、殺しにくいなーなんて……。ほら、なんか俺たち打ち解けたじゃん……?」
「ふーん」
ファティマは、悪人の中にも得意分野と不得意分野があるものなのか、と納得した。
「でも別に一緒に逃げる必要なかったんじゃね?」
エンリーケがまた真実を突き、ヴィクトールは頭を抱えた。
「成り行きだよ……そうするしか考えられなかったんだよ……察しろよお前……」
「じゃあこのままどこまでも逃げんの?」
「殺せって言われて今更殺せるかよ!!俺たち逃げ始めたんだから逃げ続けるしかねーだろ!!」
エンリーケは顎に手を当てて、真っ赤になって汗だくで言い訳をするヴィクトールについて考察してみた。
「……ああ!何だ、お前、ひょっとして」
「その先言ったらお前からまず殺す!」
ヴィクトールが釘をさすので、エンリーケは完全に把握した。
「はぁん……。はいはい」
「どういうこと?」
ファティマが二人の微妙な空気を読めずにいると、エンリーケが
「人殺しにはなりたくないんだってよ♪」
と、空気をごまかした。