第六話 男性恐怖症
《お前、まだ殺していないだろう?》
「え?!こ、殺しました……」
《殺したという報告が入っていなかったが?》
「わ、忘れてました……ははは……」
《どこに処分した?》
「えっと……どこだったかな……」
《……お前に期限を設ける。一週間以内に殺せ。殺したら折り返し電話を寄越せ。どこに死体を始末したか教えろ。死体を確認したら金を振り込む。逃げたら容赦しないぞ》
そこで通話はブチっと切られた。
「まずい……殺してないことがバレた。一週間以内に殺して死体を見せろってよ……」
「え?!どうすんだよ?!」
ファティマは落ち着き払った様子で、「じゃあ殺せば?いいわよ、いつでも」と他人事のように言う。そんなことを言われても、いまさら情が湧いて殺しにくくなったなど、とても言えない。
「待て。考える……。あー、……あ!いいこと考えた!」
ヴィクトールが何か閃いたようだ。
「ファティマの親父、病院の院長なんだろ?金いっぱい持ってるだろ?ファティマを人質にして身代金ふんだくって、手に入れた金で逃げようぜ!」
「天才かお前!」
エンリーケが感嘆の声を上げる。ヴィクトールは悪事に関しては天才的に頭が回るようだ。ファティマはなおも罪を重ねようとするヴィクトールを軽蔑した。
「あんた……よくそこまでワルいこと考えつくわね」
「よしファティマ、親父さんに電話かけるんだ」
だが、何も音声を加工しなければ簡単に足がついてしまうだろう。エンリーケは不安になった。
「ボイスチェンジャーとかあるのかよ?」
「ふっふっふ。自作する」
するとヴィクトールは紙コップに穴をあけ、飲み口にアルミホイルをかぶせて即席のボイスチェンジャーを作った。
「ヴぁーヴぁー。ほら、かなり声変わるだろ?」
「天才かお前!」
「あんたって……悪知恵だけはホントに天才ね……」
そしてファティマの父に身代金10000ダラスを三日以内に振り込むよう指示した。無論振込先はファティマの口座だ。足がついてはいけない。
翌日、無事に10000ダラスが振り込まれたことを確認すると、手に入れた金でアパートを解約し、ワゴン車を長期でレンタルして、三人は見事雲隠れに成功した。
あの電話の一週間後に様子を見に来た組織の手下は、もぬけの殻になったアパートで歯噛みしていたという。
「え?!こ、殺しました……」
《殺したという報告が入っていなかったが?》
「わ、忘れてました……ははは……」
《どこに処分した?》
「えっと……どこだったかな……」
《……お前に期限を設ける。一週間以内に殺せ。殺したら折り返し電話を寄越せ。どこに死体を始末したか教えろ。死体を確認したら金を振り込む。逃げたら容赦しないぞ》
そこで通話はブチっと切られた。
「まずい……殺してないことがバレた。一週間以内に殺して死体を見せろってよ……」
「え?!どうすんだよ?!」
ファティマは落ち着き払った様子で、「じゃあ殺せば?いいわよ、いつでも」と他人事のように言う。そんなことを言われても、いまさら情が湧いて殺しにくくなったなど、とても言えない。
「待て。考える……。あー、……あ!いいこと考えた!」
ヴィクトールが何か閃いたようだ。
「ファティマの親父、病院の院長なんだろ?金いっぱい持ってるだろ?ファティマを人質にして身代金ふんだくって、手に入れた金で逃げようぜ!」
「天才かお前!」
エンリーケが感嘆の声を上げる。ヴィクトールは悪事に関しては天才的に頭が回るようだ。ファティマはなおも罪を重ねようとするヴィクトールを軽蔑した。
「あんた……よくそこまでワルいこと考えつくわね」
「よしファティマ、親父さんに電話かけるんだ」
だが、何も音声を加工しなければ簡単に足がついてしまうだろう。エンリーケは不安になった。
「ボイスチェンジャーとかあるのかよ?」
「ふっふっふ。自作する」
するとヴィクトールは紙コップに穴をあけ、飲み口にアルミホイルをかぶせて即席のボイスチェンジャーを作った。
「ヴぁーヴぁー。ほら、かなり声変わるだろ?」
「天才かお前!」
「あんたって……悪知恵だけはホントに天才ね……」
そしてファティマの父に身代金10000ダラスを三日以内に振り込むよう指示した。無論振込先はファティマの口座だ。足がついてはいけない。
翌日、無事に10000ダラスが振り込まれたことを確認すると、手に入れた金でアパートを解約し、ワゴン車を長期でレンタルして、三人は見事雲隠れに成功した。
あの電話の一週間後に様子を見に来た組織の手下は、もぬけの殻になったアパートで歯噛みしていたという。