時の飛礫

寂れた中心街
古びた住宅地に紛れて
一軒の宝石細工店
裏方の工房から
初老の痩せた職人

金銀五色の璧に囲まれ
自慢げに語る

『一番綺麗なのは川原の小石だね』

数々の功績をあげ
璧玉を掻き集め
こんなに寂れ埋もれた店で
客も見たことがないのに

彼の言葉には
長い長いアカシャのリボンが
見えないほどどこまでも続いていて

私の背中のアカシャの記録は
華奢な蚕の糸で

一体どこを辿れば
我がアカシャのリボンは
何年経れば
あの境地に立てるのか

ああ、我がアカシャのリボンのこの先は
我がアカシャのリボンのこの先は
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