第九幕

それを聞いて、スミレは思いつきました。
「そうだ、ならばこうしてはどうだろう。魔王が新しい村長になるのだ」
一同はざわつきました。特に魔王はいやがりました。
「ええ~~~??私は嫌だぞ、そんな、めんどくさい」
スミレは自分の発案に意欲的です。
「いいじゃないか、丘とこの村は目と鼻の先だ。村一つ領地が増えてもそう難しくないだろう?お前は魔王なんだから!」
戦士は反対しました。
「お嬢ちゃんなあ、それじゃ村の脅威は無くならないじゃないか。年貢の代わりに生け贄を要求されたんじゃ堪らないぞ」
村人は激しくうなずきました。
それに魔王が憤慨しました。
「誰が人間の肉なんぞ食うか!あんな臭くて骨ばかりで食いどころのないもの、こっちがお断りだ!」
スミレは「まあまあ」となだめました。ジギタリスが付け加えます。
「魔王様は人間の肉がお好きではない。それに城の食料は魔界から調達しておりますので、村人を要求することはありません」
そして、
「よいではないですか魔王様。なかなかいいアイデアですぞ」
と、スミレに賛同しました。
「本当に人間を食ったりしないんですか?」
村人がおそるおそる窺いました。魔族は「ありませんな」と否定しました。
それを聞いて村人の一人が受け入れました。
「村長を倒して村を救っていただいたのは確かだ。俺はいいと思うぞ。どっちみち新しい村長が必要なのには変わりない。魔王が人を襲わないなら、他の魔物から、また守ってくれるかもしれねえ。な?どうだ?」
スミレの
「次の村長が決まるまでの間だ、いいだろう?」
という提案に、魔王は渋々了承しました。そしてスミレは村人たちへ、
「魔王が悪さをしないよう、わたしが丘の城に一緒に住み、魔王を監視しよう。それならいいだろう?」
と提案しました。
村人たちは勇者が監視するならいいだろう、と、魔王を受け入れることにしました。
ただ一人、ライラックがこの提案に猛反対しました。
「駄目だスミレ!そんなことをしたら、魔王や魔物たちに何をされるか……!」
スミレは平然と
「大丈夫だライラック、わたしは魔王の城の仲間は皆友達だ。安心しろ」
と、ライラックの心配を気にもとめませんでした。
「スミレ、大丈夫なわけがないだろう……!」
ライラックのみが反対しているので、多数決で魔王が新しい村長となりました。
謝礼は前村長の蓄えが思いのほか沢山見つかったので、あのとき居合わせた戦士たちに均等に分配することになりました。
「これで、村も平和になるでしょうか?」
村人の心配を、ジギタリスが約束しました。
「我々にお任せください、隣人よ」
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