第八幕

窓辺で夜の村を眺めていたスミレは、男の悲鳴を聞きました。
「!……まさか、魔物が出たのか?」
スミレは全身鎧を身につけ、大剣を背負って宿を飛び出しました。村の中を走っていますと、酒場のほうから喧噪が聞こえてきます。
スミレが酒場までやってくると、そこではなんと、魔王と見知った戦士たちが戦っているではありませんか。そしてそこには、スミレのよく知っている顔がありました。記憶の中の姿よりいくらか精悍な顔つきになりましたが、間違いありません、幼なじみのライラックです。
スミレは叫びました。
「ライラック!お前はライラックか?!」
ライラックも驚きました。
「スミレ!スミレか!?こんなところに来ては危ない!こいつは魔王だ!」
大勢の戦士たちに一度に攻撃されて、魔王は押されている様に見えます。
「違うんだライラック!そいつは、人を襲うような奴じゃないんだ!」
しかし、スミレの声を聞き入れるものはいません。戦いはどんどん激化していきました。スミレはなす術もなく見ていることしかできませんでした。

一方その頃、魔王のお供の魔族たちは先ほどの魔物を追いかけていた所、いつの間にか逆に数十体の魔物に囲まれていました。
「な……?!囲まれている?!」
魔物の一人が下卑た笑みを浮かべました。
「ふふ……我々は囮よ。今頃魔王はどうなっているかな?」
「何?!」
「どういう意味だ?!」
しかし魔物は答えません。
「ふふふ……今から死ぬお前らが知る必要はない」
魔物達は一斉に襲いかかってきました。
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