第四幕

魔王は城の一室にスミレを連れてきて、魔法で部屋に閉じ込めました。その部屋には大きなベッドがありました。スミレは頭がぼうっとしていたので、最初は魔王が何をしようとしているのか考えもしませんでしたが、魔王が魔法を使って部屋を封印したのを見てハッとしました。先程の口づけには魔法がかけられていて、スミレは操られていたのです。
急に身の危険を感じました。
ドアに体当たりをして逃げようとしましたが、ドアはびくともしません。鍵は内側についているのに、鍵がどうしても開きません。
「貴様!何をする気だ!ここを開けろ!」
魔王は窓を背にしているので、逆光もあって表情がよく読めませんでした。
「私はお前を待っていたのだ。やっと久しぶりに来たのだ。今度は帰さない」
スミレはぞっとしました。
「貴様………何をするつもりだ……」
「無抵抗の私を殺さなかったことを後悔するが良い。私は気が変わった。お前をこの城に閉じ込めて二度と帰さないことにした」
「帰さないだと?」
魔王はベッドに座り、スミレを見据えています。
「私は、この数ヶ月、お前だけを待っていた。来る日も来る日も、お前を待ち続けた。しかし気の狂った野郎共ばかり殺到して、お前は全然現れなかった。なぜだ?」
「それは…」
「私は、お前だけを待っていた!なぜ来なかったんだ!今までは間をあけずよく来ていたのに!なぜ来なかった!?」
いつもは余裕を持った話し方をする魔王が、珍しく怒りをあらわにしています。
スミレは初めて心の底から魔王が怖いと思いました。
「剣の稽古をしていたんだ……貴様に勝つ為に……」
「私と戦えばいいだろう」
「貴様に内緒で強くなるつもりだったんだ」
「私は……寂しかった…」
魔王はうなだれて、「寂しかったのだ……」と呟きました。
「それは……悪かったな………」
スミレは謝ることしかできませんでした。
すると、魔王は急に立ち上がり、やおら着ているものを脱ぎ始めました。
「な、何をしている?!」
魔王は答えません。そしてベッドに横になり、こちらに背を向けて寝始めました。
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