単発

「幸せって…何だろうね」
 夜更け、基地のおれの部屋のベッドで亮とまったりしていた時に、おれはふと呟いた。
「唐突だな」
 亮は静かに返しつつも、目を細めた。
「なんとなく思っただけ。亮の幸せって…なに?」
「雅人だ」
 即答だね、とおれはクスクスと笑う。この答えに、胸がほわっとあったかくなった。この瞬間も「幸せを感じた」というのだろう。
「だが、昔はもっと複雑で大きいものだと考えてたな」
「えー、意外だね」
「悟りを開くとか、強くなるとか、その先にあるものだと…な」
 亮は言葉を続ける。
「だが、雅人と出会ってわかった。お前がそうやって笑顔でそばにいるだけで、満たされて、温かい気持ちになる。だから、俺の幸せはお前だ」
 そう言いながら亮は、おれの頭をゆっくりと撫でた。手の感覚が気持ちよくて、また心があったかくなる。
「キザだね…でも嬉しいよ、亮」
「雅人の幸せは何だ?」
「…やっぱ、亮がそばにいることだね。だけど、昔は親父の言うとおりにして、親父のようになれば幸せになれるって思ってたな」
 ふと、小さい時からたくさんの習い事をしていたり、帝王学を学ばされていたりした時のことに思いを馳せていた。
「会社継いで、お金稼いで、結婚して子供作るとか…でも」
 亮に擦り寄る。
「今は亮とこうやってそばで喋ってる時とかに、幸せを感じるよ」
「雅人も幸せを自分で見つけられたんだな」
 視線が交錯する。
「うん…おれさ、豪邸とかも式部家の一員であることも…なーんにもいらないや。ずっと亮と一緒にいられたらそれでいい」
 おれがこう言い終わったとたん、亮はクスッと笑って、そっとおれの頬へ触れる。そしてチュッと音を立てて、甘くて柔らかいキスが降ってきた。
「今ので、幸せを感じたか?」
「もちろんだよ。亮は?」
「俺もとっても幸せだ」
 亮はおれを抱き寄せる。亮の大きくてあったかい腕の中で幸せを感じながら、おれはゆっくりと眠りに落ちていった。
3/6ページ
スキ