俺のフォルダに寝顔の写真が溜まっている事を君はまだ知らない
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今日は本当に大変な一日だった。小さなミスやトラブルが積み重なっててんやわんや、ようやく退勤する頃には心身共にへっとへとに疲れ切っていた。
「月曜日からこんなに疲れるってどゆこと…」
「おーおー、お疲れさん」
ソファーに身を投げ出してぼやく私にほくほくと湯気の立つマグカップを差し出すのは、絶賛同棲中の恋人、陣平くんだ。
ほのかに香るココアの甘い匂いに誘われてマグカップを受け取ると、隣に座った陣平くんがぽんぽんと頭を撫でてくれる。この大きな手に優しく撫でられると、何故だか決まってすぐに眠たくなってしまうんだよなぁ。
「今日も一日頑張ったな」
「…うん」
ずず、とお行儀悪く啜ったココアが陣平くんの優しい声と一緒にじんわりと全身に染み渡っていく。陣平くんもね、と返せば返事の代わりに温かい掌が頭から頬に降りてきて、長い親指が睫毛をくすぐりながら優しく瞼を撫で始める。あ、これはまずい。陣平くんに寝かしつけされちゃうやつだ。
「…待って、陣平くん」
「ん?」
「寝る前に、“いつもの”したい」
軽くなったマグカップをテーブルに置いていそいそと陣平くんに向き直ると、しゃあねーなぁと小さく笑って両手を広げてくれた彼の着痩せする厚い胸板にぼすんとダイブする。これが私達の“いつもの”だ。
ぎゅうっと背中に腕を回して、陣平くんの首元に頬を寄せると胸いっぱいに陣平くんの香りを吸い込んで深呼吸。…はぁ、今日もいい匂い。
一体どんな匂いなのかと聞かれると説明が難しいのだけれど、一日よく働いた陣平くんの香ばしくて甘い汗の匂いと、それから毎朝ワンプッシュだけ付けるいつもの香水の残り香がいい感じに混ざり合って、それはそれは良い匂いがするのだ。
私が陣平くんの腕の中でスーハーと深呼吸を繰り返す間、陣平くんは陣平くんで私の頭頂部の匂いを嗅ぐのがたまらなく好きなんだとか。(前に臭くないのかと聞いてみたら美味そうなパンの匂いがすると言われたからきっと陣平くんはご飯よりパン派なんだろう)
こうしてお互いの匂いを嗅ぎ合って、今日は匂いが強いねだとか聞いてもない感想を言い合ったりするこの時間が私にとって一日の内で何より大切で幸せな時間になったのはいつからだろう。
日々命懸けで街の平和を守ってくれている陣平くんが今日も無事に帰ってきてくれた事に感謝して、それからこっそり頬を擦り寄せた胸元でトクントクンと心地良いリズムを刻む心音に私が安堵している事を陣平くんは知らないだろうな。
今日も元気に帰ってきてくれてありがとう。世界で一番愛してるよ。そんな気持ちを込めて、今夜も私達は“いつもの”をする。
……たまにそのまま腕の中で寝落ちてしまうけれど、それはまぁ、ご愛嬌という事で。
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