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【稽古に付き合え!】
「おい、稽古付き合えよ。」
午後、ひと汗かきたいと思った一角は名前に声を掛けた。案の定、彼女はめんどくさそうに息を吐いた。読んでいた本を閉じ、時計を見て立ち上がった。
「先客がいるから他を当たって。」
「先客って誰だよ?」
名前は一角の問いに答えることなく、部屋から出て行った。
「ちっ、ツレねぇな…。」
一人残された一角は面白くなかった。
*
一刻後、出かけていた名前は鉄座衛門の声と共に帰宅した。
「こがいななぁ(こういうのは)女の意見が必要じゃ、助かった!」
「喜んでもらえるといいですね。」
「ありがとのぉ!」
綺麗に包装された紙袋を持つ鉄座衛門。誰かへのプレゼントだろうか。話の感じからして、贈り物の選定で名前を連れて行ったようだ。
(先客ってテツさんの事だったのかよ。もう用事は済んだみてぇだし、鍛錬に付き合ってもらおうじゃねーか。)
名前に声を掛けようと思った一角だったが、彼女は足早に何処かへ向かった。
(どこ行くんだ?)
名前は再び外に出た。よく見ると彼女は紙袋を持っている。先ほど買った物のようだ。
「肥料買ってきたよ。」
名前が来たのは弓親が世話をしている花壇。汚れる事を嫌うアイツが、土いじりなんて驚きだ。
「名前ちゃんありがとう。」
弓親は園芸用の手袋を嵌め、手慣れた様子で球根を植えていく。
「何を育ててるの?チューリップ?」
「これはスノードロップだよ。冬に可愛い花を咲かせてくれる。」
「楽しみだね。」
二人で楽しそうに話す様子を見て、一角は胸の中の苛立ちが更に増した。
(俺とは違って、楽しそうに話してんじゃねーか。)
すると弓親が此方を振り向き、俺を見た。
「てかさ、さっきから気になってたんだけど、名前ちゃんの後ろを付いて回って一角、何してんの?」
「『鍛錬付き合え』って追いかけまわされてるの。」
名前の説明が入り、俺は二人の前に割って入った。
「あぁん?!てめぇ、いつまで俺を待たせんだ、これで用事済んだろうが。」
「一角…付き纏うなんて気持ち悪いって。他の隊員に頼めばいいだろ?」
「うるせぇ、他の奴じゃ歯に立たねぇ。」
「私は一角と違って忙しいの、諦めて。」
「はぁっ!?また逃げんのかよ!!」
「一角、隊長寝てるから大きな声出さないでくれる?」
すかさず弓親に言われ、俺は青ざめた。隊長の昼寝を邪魔した暁には、塵になる覚悟でいなければならない。
「そんなに稽古つけてもらいたいなら、隊長起こしてお願いすれば?」
「いや…それはほら…なぁ?」
昼寝が趣味の隊長の睡眠を妨害したらどうなるか…稽古どころか、殺されちまう。一角としても、それだけは勘弁願いたかった。
「むっくり~ん!!!」
突如明るい声が聞こえたかと思えば、名前の腕の中にやちるが飛び込んできた。
「おそいからさがしに来たよ!」
「申し訳ありません、ただいま。」
「どこ行くんだ?」
「つるりんはほっといて行こう!」
「承知しました。」
「おいっ!」
一角の返答に答えることなく、やちると名前は共に姿を消した。残された一角は一人、更にイライラを募らせていた。弓親は土いじりに夢中で鍛練に付き合ってくれる筈もない。
「ったく…こういう時に限って恋次の野郎もいねぇし…。」
午前の合同鍛練が終わってから、恋次の姿を全く見ていない。どこをほっつき歩いているんだか。
「彼なら女性死神協会に顔を出しに行くって言ってたけど。」
「はぁ?詳しく聞かせろ。」
「今日はお菓子を作るって言ってたよ。彼、甘党だから目がないでしょ。」
そう言えばやちるは女性死神協会の会長…名前は菓子作りに駆り出されたというワケか…。
「まさかだけど、乗り込むつもりじゃないだろうね?」
弓親の冷ややかな視線を感じる。
「んな事するか!面倒くせぇ…。」
行ったところで目に浮かぶ。アイツら(女性死神、特に松本)に追い返される展開が。つか、恋次は男なのに許されるのが腹立つ所だ。
(あ~ムカつく…。)
*
陽が傾いた頃、恋次が戻ってきた。
「あ!一角さん。」
「おい恋次、てめぇどういう了見だこの野郎。」
「い、一角さん恐ぇっスよ…俺何かしましたか?」
帰宅早々、凄む剣幕の一角に恋次は驚いた。
「アイツらと仲良く菓子作ってたみたいじゃねぇか。」
「あ~コレの事っスよね?一角さんも食べますか?」
恋次は持っていた竹包みを一角に見せた。
「甘藷 (サツマイモ)の羊羹っす。我ながら巧く出来たと思います!」
恋次は落雁 (砂糖を型で固めた菓子)をぼりぼり食らう程の甘党。歯が浮くほど甘く味付けしてありそうで、少し気が引けた。
「いや、いい。それより名前はどこ行った?」
「苗字っスか?副隊長と隊長の所行ったんじゃないっスか?苗字、隊長に渡すんだって一生懸命作ってたから。」
「へぇ……。」
隊長に真っ先にってのが…部下なら普通の事だったが、何故か一角の胸に引っかかった。先ほどのイライラが痛みに変わった気がした。
(ちっ…何なんだ。)
「あれ、一角さんもしかして妬いてんスか?」
「莫迦な事言ってんじゃねぇ!」
「痛てててっ!!!」
一角に耳をつねられ、恋次は声を上げた。そのまま歩いて行ってしまう所を見ると、隊首室に向かったようだ。
「図星じゃないっスか。」
*
隊長が起きたようだ。隊首室の扉の前では既に中から賑やかな声が聞こえていた。
「失礼しまーす。」
「おう。」
隊長の声が聞こえたタイミングで一角は入室した。
「あ、つるりんきた〜!」
剣八とやちるは椅子に座り、ちょうど芋羊羹を食べている最中だった。名前はお茶を淹れている。
「うめぇぞ、一角も食うか?」
「マジっすか、頂きます!」
ありがたい事に、隊長から勧められて名前が作った羊羹にあり付ける。先程まで感じていたイライラが何処かに消えた気がした。
「来ると思った。」
名前はやれやれ、と言う表情で湯呑みを置いてくれた。
「これ食ったら今度こそ、鍛錬付き合えよな!」
「イヤ。」
「あぁっ!?何でだよ!!」
「気分じゃない。隊長、五月蝿いので私はこれで失礼します。」
「おう。」
しまった、と一角は青ざめた。『鍛錬』というワードを今出すべきではなかった。共に茶を飲む筈だったが、名前はさっさと部屋から出て行ってしまう。
「ちょ、待てよ!せめてこれだけは食ってから…って…!!?」
目の前にあったはずの芋羊羹が無くなっている。それはもちろん…。
「ごちそうさま、すごくおいしいかった〜!」
やちるの腹の中に全て収まった後だった。
「あ"あ"あ"あ"ーーーー!!!」
隊舎に響き渡った一角の声で近くにいた鳥が一斉に羽ばたいた。
(他の奴らの用事は付き合うのに、何で俺からは逃げんだ…名前!!!)
竹の葉に残された小さな羊羹の残骸が虚しい。しばらく打ちひしがれていた一角だったが、湯呑みの茶を一気に飲み干して立ち上がった。こうなったら、是が非でも名前を捕まえて稽古に付き合って貰おうじゃないか。
(絶対、稽古に付き合ってもらうぜ、名前!!!)
一方、聞こえてきた一角の叫び声を聞いた名前は微笑んだ。きっと、芋羊羹を副隊長に食べられてしまったのだろう。いとも容易くその光景が目に浮んでくる。暫くすると、一角の霊圧が急に高まり、自身に向かって走り出してきた。
(あぁ、始まった。)
今日の予定は全て済ませた。残すは一角との追いかけっこ。この感じ、かなり長引きそうだ…と名前は思った。
(鍛錬に付き合わない理由、そんなの決まってんじゃん。)
名前は空に向かって呟いた。
「一角の前だと、冷静じゃいられなくなるから。」
【稽古に付き合え!】…end.
「おい、稽古付き合えよ。」
午後、ひと汗かきたいと思った一角は名前に声を掛けた。案の定、彼女はめんどくさそうに息を吐いた。読んでいた本を閉じ、時計を見て立ち上がった。
「先客がいるから他を当たって。」
「先客って誰だよ?」
名前は一角の問いに答えることなく、部屋から出て行った。
「ちっ、ツレねぇな…。」
一人残された一角は面白くなかった。
*
一刻後、出かけていた名前は鉄座衛門の声と共に帰宅した。
「こがいななぁ(こういうのは)女の意見が必要じゃ、助かった!」
「喜んでもらえるといいですね。」
「ありがとのぉ!」
綺麗に包装された紙袋を持つ鉄座衛門。誰かへのプレゼントだろうか。話の感じからして、贈り物の選定で名前を連れて行ったようだ。
(先客ってテツさんの事だったのかよ。もう用事は済んだみてぇだし、鍛錬に付き合ってもらおうじゃねーか。)
名前に声を掛けようと思った一角だったが、彼女は足早に何処かへ向かった。
(どこ行くんだ?)
名前は再び外に出た。よく見ると彼女は紙袋を持っている。先ほど買った物のようだ。
「肥料買ってきたよ。」
名前が来たのは弓親が世話をしている花壇。汚れる事を嫌うアイツが、土いじりなんて驚きだ。
「名前ちゃんありがとう。」
弓親は園芸用の手袋を嵌め、手慣れた様子で球根を植えていく。
「何を育ててるの?チューリップ?」
「これはスノードロップだよ。冬に可愛い花を咲かせてくれる。」
「楽しみだね。」
二人で楽しそうに話す様子を見て、一角は胸の中の苛立ちが更に増した。
(俺とは違って、楽しそうに話してんじゃねーか。)
すると弓親が此方を振り向き、俺を見た。
「てかさ、さっきから気になってたんだけど、名前ちゃんの後ろを付いて回って一角、何してんの?」
「『鍛錬付き合え』って追いかけまわされてるの。」
名前の説明が入り、俺は二人の前に割って入った。
「あぁん?!てめぇ、いつまで俺を待たせんだ、これで用事済んだろうが。」
「一角…付き纏うなんて気持ち悪いって。他の隊員に頼めばいいだろ?」
「うるせぇ、他の奴じゃ歯に立たねぇ。」
「私は一角と違って忙しいの、諦めて。」
「はぁっ!?また逃げんのかよ!!」
「一角、隊長寝てるから大きな声出さないでくれる?」
すかさず弓親に言われ、俺は青ざめた。隊長の昼寝を邪魔した暁には、塵になる覚悟でいなければならない。
「そんなに稽古つけてもらいたいなら、隊長起こしてお願いすれば?」
「いや…それはほら…なぁ?」
昼寝が趣味の隊長の睡眠を妨害したらどうなるか…稽古どころか、殺されちまう。一角としても、それだけは勘弁願いたかった。
「むっくり~ん!!!」
突如明るい声が聞こえたかと思えば、名前の腕の中にやちるが飛び込んできた。
「おそいからさがしに来たよ!」
「申し訳ありません、ただいま。」
「どこ行くんだ?」
「つるりんはほっといて行こう!」
「承知しました。」
「おいっ!」
一角の返答に答えることなく、やちると名前は共に姿を消した。残された一角は一人、更にイライラを募らせていた。弓親は土いじりに夢中で鍛練に付き合ってくれる筈もない。
「ったく…こういう時に限って恋次の野郎もいねぇし…。」
午前の合同鍛練が終わってから、恋次の姿を全く見ていない。どこをほっつき歩いているんだか。
「彼なら女性死神協会に顔を出しに行くって言ってたけど。」
「はぁ?詳しく聞かせろ。」
「今日はお菓子を作るって言ってたよ。彼、甘党だから目がないでしょ。」
そう言えばやちるは女性死神協会の会長…名前は菓子作りに駆り出されたというワケか…。
「まさかだけど、乗り込むつもりじゃないだろうね?」
弓親の冷ややかな視線を感じる。
「んな事するか!面倒くせぇ…。」
行ったところで目に浮かぶ。アイツら(女性死神、特に松本)に追い返される展開が。つか、恋次は男なのに許されるのが腹立つ所だ。
(あ~ムカつく…。)
*
陽が傾いた頃、恋次が戻ってきた。
「あ!一角さん。」
「おい恋次、てめぇどういう了見だこの野郎。」
「い、一角さん恐ぇっスよ…俺何かしましたか?」
帰宅早々、凄む剣幕の一角に恋次は驚いた。
「アイツらと仲良く菓子作ってたみたいじゃねぇか。」
「あ~コレの事っスよね?一角さんも食べますか?」
恋次は持っていた竹包みを一角に見せた。
「
恋次は
「いや、いい。それより名前はどこ行った?」
「苗字っスか?副隊長と隊長の所行ったんじゃないっスか?苗字、隊長に渡すんだって一生懸命作ってたから。」
「へぇ……。」
隊長に真っ先にってのが…部下なら普通の事だったが、何故か一角の胸に引っかかった。先ほどのイライラが痛みに変わった気がした。
(ちっ…何なんだ。)
「あれ、一角さんもしかして妬いてんスか?」
「莫迦な事言ってんじゃねぇ!」
「痛てててっ!!!」
一角に耳をつねられ、恋次は声を上げた。そのまま歩いて行ってしまう所を見ると、隊首室に向かったようだ。
「図星じゃないっスか。」
*
隊長が起きたようだ。隊首室の扉の前では既に中から賑やかな声が聞こえていた。
「失礼しまーす。」
「おう。」
隊長の声が聞こえたタイミングで一角は入室した。
「あ、つるりんきた〜!」
剣八とやちるは椅子に座り、ちょうど芋羊羹を食べている最中だった。名前はお茶を淹れている。
「うめぇぞ、一角も食うか?」
「マジっすか、頂きます!」
ありがたい事に、隊長から勧められて名前が作った羊羹にあり付ける。先程まで感じていたイライラが何処かに消えた気がした。
「来ると思った。」
名前はやれやれ、と言う表情で湯呑みを置いてくれた。
「これ食ったら今度こそ、鍛錬付き合えよな!」
「イヤ。」
「あぁっ!?何でだよ!!」
「気分じゃない。隊長、五月蝿いので私はこれで失礼します。」
「おう。」
しまった、と一角は青ざめた。『鍛錬』というワードを今出すべきではなかった。共に茶を飲む筈だったが、名前はさっさと部屋から出て行ってしまう。
「ちょ、待てよ!せめてこれだけは食ってから…って…!!?」
目の前にあったはずの芋羊羹が無くなっている。それはもちろん…。
「ごちそうさま、すごくおいしいかった〜!」
やちるの腹の中に全て収まった後だった。
「あ"あ"あ"あ"ーーーー!!!」
隊舎に響き渡った一角の声で近くにいた鳥が一斉に羽ばたいた。
(他の奴らの用事は付き合うのに、何で俺からは逃げんだ…名前!!!)
竹の葉に残された小さな羊羹の残骸が虚しい。しばらく打ちひしがれていた一角だったが、湯呑みの茶を一気に飲み干して立ち上がった。こうなったら、是が非でも名前を捕まえて稽古に付き合って貰おうじゃないか。
(絶対、稽古に付き合ってもらうぜ、名前!!!)
一方、聞こえてきた一角の叫び声を聞いた名前は微笑んだ。きっと、芋羊羹を副隊長に食べられてしまったのだろう。いとも容易くその光景が目に浮んでくる。暫くすると、一角の霊圧が急に高まり、自身に向かって走り出してきた。
(あぁ、始まった。)
今日の予定は全て済ませた。残すは一角との追いかけっこ。この感じ、かなり長引きそうだ…と名前は思った。
(鍛錬に付き合わない理由、そんなの決まってんじゃん。)
名前は空に向かって呟いた。
「一角の前だと、冷静じゃいられなくなるから。」
【稽古に付き合え!】…end.
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