月光に毒される(短編集)
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【ラムネ】
九月。上からの要請で流魂街の町を整備するよう指示があった十一番隊。先日の大雨で土砂が流れて橋が崩れた為、復旧作業が行われていた。何日も掛けて土砂を運び出す作業も大方目処が付いてきた。今日は材木を運び込む作業が始まった。
「あちぃな~。」
首に巻いた手拭いで汗を拭きながら、一角は呟く。他の隊員も汗だくになりながら作業を進める。夏のうだる暑さは落ち着いたものの日中、日差しの下で動けば汗が吹き出てくる。脱水症状にならないように各自水分補給をするように指示は出ているが、一度手を動かすとキリの良い所まで休憩しようとは思わないものだ。
「みなさん、差し入れをお持ちしました。一先ず休憩致しましょう。」
隊員に声を掛けたのは流魂街で茶屋を営むおばあさん。湧水で冷やした緑茶を振舞った。
「おちびちゃんはこれ。」
「わぁい!」
おばあさんはやちるにラムネの瓶を渡した。
「むくりん、一緒に飲もう!」
「お言葉に甘えさせて、頂きます。」
名前は茶屋の椅子に座るやちるの隣に腰かけた。
「ラムネだーいすき!」
「らむね…?」
透明の瓶に入っているのは無色透明の液体。おばあさんがわざわざやちるに渡すのだから、酒ではないようだ。
「むくりん、飲んだ事ないの?」
「初めてでございます。」
「そっかー!びっくりするよ。」
やちるは栓抜きのようなもので飲み口を押し付け、開封した。プシュッとガスの抜ける音と共にガラス玉が瓶の中に入る。普通の瓶と違い、飲み口の下がくびれておりガラス玉が下に落ちないようになっている。開けた瞬間から細かい泡が瓶の中で粟立っている。
「つめたくておいしいー!むくりんも飲んでみて!」
名前は自身が持つ瓶をやちるがやっていた通りに開封した。飲み口を咥え、少しだけ口の中に含んだ。冷たさよりもパチパチとした刺激に名前は驚いた。
「!?…っなんですか?これ…。」
口の中の刺激と共に甘い風味が口の中に広がる。
「甘くておいしいでしょー?」
確かに果物に似た甘さを感じ、美味しいと思った。しかしこのパチパチのせいで、時折むせそうになる。やちるはそれをごくごくと飲んでいくのだから驚きだ。ガスが入った飲み物を飲む事が初めての名前は恐る恐るラムネを飲んだ。
「お嬢さん、炭酸は苦手かね。」
おばあさんは名前に問いかけた。
「たんさんと言うのですか?」
「そうさ、ラムネは炭酸って言うガスが入っているんだ。子ども達はこれが大好きなんだよ。」
「そう…ですか。」
茶屋で涼んでいると、上半身半裸になった一角が名前の元に来た。
「あーあっつ…ばあさん、俺にも茶をくれ。」
「はいよ。」
一角はやちると名前が飲んでいるラムネを見て鼻で笑った。
「ラムネ飲んでんのか?」
「一角も飲む?パチパチして驚いた。」
「はっ、名前は炭酸弱ぇのか?」
一角は名前が差し出したラムネを受け取り、ごくごくと勢いよく飲んだ。
「冷たくてうめー!げふっ…相変わらず甘ぇけど。」
「つるりん、きたなーい!ゲップは音を立てずにするんだよ~。」
「あー?いいんだよ、気を遣わなきゃいけない場所じゃねーだろ。」
「げひんだな~。」
やちるの言葉に一角は鼻で息を吐いた。
「俺はいいんだよ。」
「……。」
その様子を見ていた名前は残ったラムネを口に含んだ。先程より炭酸の気が抜けたようで刺激が弱まった気がした。
(これなら飲めそう…。)
「うまいか?」
一角の問いに名前は頷いた。程よい甘さと喉を潤す爽やかな刺激。空き瓶に残ったガラスの玉がカラカラと小気味のいい音を立てる。ラムネは暑い日にピッタリの面白い飲み物だと名前は思った。
「お茶、お待たせ~。」
【ラムネ】...end.
九月。上からの要請で流魂街の町を整備するよう指示があった十一番隊。先日の大雨で土砂が流れて橋が崩れた為、復旧作業が行われていた。何日も掛けて土砂を運び出す作業も大方目処が付いてきた。今日は材木を運び込む作業が始まった。
「あちぃな~。」
首に巻いた手拭いで汗を拭きながら、一角は呟く。他の隊員も汗だくになりながら作業を進める。夏のうだる暑さは落ち着いたものの日中、日差しの下で動けば汗が吹き出てくる。脱水症状にならないように各自水分補給をするように指示は出ているが、一度手を動かすとキリの良い所まで休憩しようとは思わないものだ。
「みなさん、差し入れをお持ちしました。一先ず休憩致しましょう。」
隊員に声を掛けたのは流魂街で茶屋を営むおばあさん。湧水で冷やした緑茶を振舞った。
「おちびちゃんはこれ。」
「わぁい!」
おばあさんはやちるにラムネの瓶を渡した。
「むくりん、一緒に飲もう!」
「お言葉に甘えさせて、頂きます。」
名前は茶屋の椅子に座るやちるの隣に腰かけた。
「ラムネだーいすき!」
「らむね…?」
透明の瓶に入っているのは無色透明の液体。おばあさんがわざわざやちるに渡すのだから、酒ではないようだ。
「むくりん、飲んだ事ないの?」
「初めてでございます。」
「そっかー!びっくりするよ。」
やちるは栓抜きのようなもので飲み口を押し付け、開封した。プシュッとガスの抜ける音と共にガラス玉が瓶の中に入る。普通の瓶と違い、飲み口の下がくびれておりガラス玉が下に落ちないようになっている。開けた瞬間から細かい泡が瓶の中で粟立っている。
「つめたくておいしいー!むくりんも飲んでみて!」
名前は自身が持つ瓶をやちるがやっていた通りに開封した。飲み口を咥え、少しだけ口の中に含んだ。冷たさよりもパチパチとした刺激に名前は驚いた。
「!?…っなんですか?これ…。」
口の中の刺激と共に甘い風味が口の中に広がる。
「甘くておいしいでしょー?」
確かに果物に似た甘さを感じ、美味しいと思った。しかしこのパチパチのせいで、時折むせそうになる。やちるはそれをごくごくと飲んでいくのだから驚きだ。ガスが入った飲み物を飲む事が初めての名前は恐る恐るラムネを飲んだ。
「お嬢さん、炭酸は苦手かね。」
おばあさんは名前に問いかけた。
「たんさんと言うのですか?」
「そうさ、ラムネは炭酸って言うガスが入っているんだ。子ども達はこれが大好きなんだよ。」
「そう…ですか。」
茶屋で涼んでいると、上半身半裸になった一角が名前の元に来た。
「あーあっつ…ばあさん、俺にも茶をくれ。」
「はいよ。」
一角はやちると名前が飲んでいるラムネを見て鼻で笑った。
「ラムネ飲んでんのか?」
「一角も飲む?パチパチして驚いた。」
「はっ、名前は炭酸弱ぇのか?」
一角は名前が差し出したラムネを受け取り、ごくごくと勢いよく飲んだ。
「冷たくてうめー!げふっ…相変わらず甘ぇけど。」
「つるりん、きたなーい!ゲップは音を立てずにするんだよ~。」
「あー?いいんだよ、気を遣わなきゃいけない場所じゃねーだろ。」
「げひんだな~。」
やちるの言葉に一角は鼻で息を吐いた。
「俺はいいんだよ。」
「……。」
その様子を見ていた名前は残ったラムネを口に含んだ。先程より炭酸の気が抜けたようで刺激が弱まった気がした。
(これなら飲めそう…。)
「うまいか?」
一角の問いに名前は頷いた。程よい甘さと喉を潤す爽やかな刺激。空き瓶に残ったガラスの玉がカラカラと小気味のいい音を立てる。ラムネは暑い日にピッタリの面白い飲み物だと名前は思った。
「お茶、お待たせ~。」
【ラムネ】...end.