一角短編集
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【雨の中の笑顔】
梅雨入りした夜。ぐずついた空模様が続いている。今宵も雨が降ったり止んだりを繰り返していた。
現世の任務に駆り出された苗字名前は傘も差さずに光を放つ町並みを見下ろしていた。
昼間は阿散井恋次含む先遣隊がいるため、名前は主に夜の警らを担当している。
現世で不穏な動きがないか見回りをしている名前だったが、今のところ怪しい動きは見られない。
現世の町の夜は瀞霊廷とは違い、繁華街に近い程眩しい。昼間同様に人々が騒いでいる事もあり、愚かだと一瞥する場面もあった。
街灯の明かりが辛うじて届く軒下で雨宿りをしていると、馴染みのある声が聞こえてきた。
「合羽 ぐらい使えばいいだろ?びしょ濡れじゃねーか。」
名前に声を掛けてきたのは同じく現世で任務に来ている斑目一角。今は義骸に入っている。
「別に気にならない。」
それより、人間に一角の姿は見えても義骸に入っていない名前の姿は見えない。
一角を見た人間は彼が一人で喋っている事になる。名前が雨に濡れる事よりも、そっちの方が問題だ。
「誰も見ちゃいねーよ。」
周囲の目を気にする名前の様子に気付いた一角は、自身の背中ごと傘で隠した。
「冷てーな。」
一角は冷えきった彼女の頬に触れ、目を細めた。名前は口付けようとする一角の胸を押し返した。
「人形と接吻する趣味はないわ。」
「へっ、それもそうだな。」
義骸に入っている事を思い出した一角はニヤリと笑った。そして腕に掛けていたビニール袋から、先ほど買ったおむすびを取り出した。
「とりあえず、これ食えよ。こんな時間なのに、握りたてみたいにうまいんだぜ?」
名前は差し出されたおむすびを手に取った。
「コンビニっつう24時間ぶっ通しで営業してる万事屋があって、そこですげぇ数の食い物が売ってんだぜ。」
「ふぅん…夜中なのに人が出入りしているから何かと思った。」
ビニールに包装されたおむすびをどう開けるか分からないだろうと、彼女の様子を見ていた一角だったが、
名前はおむすびをまじまじと見つめ、器用に袋を開けておむすびを食べ始めた。
「現世の鮭は美味しいね。」
「いや、待て待て!食べたことあんのか?このおむすび!」
「普通のおむすびじゃん…なんでそんな食い気味なの?」
「俺はこの袋を開けるまでにずいぶんかかったんだぞ!?何でこんなに早く開けられたんだよ????」
「ここに書いてあるじゃん。」
「……。」
包装をよく見ると丁寧に袋の開け方が絵で分かりやすく明記されていた。黙り込む一角の様子を見て、名前は吹き出した。
「っぷ…くくく…馬鹿。」
「あぁっ!?んだとこらぁ、笑うなよ!」
雨降る梅雨の夜。ジメジメすら吹き飛ばす二人の笑い声。
雨が降っている事など、二人はすっかり忘れてしまっているようだ。
「っくしょん!」
「だから言ったろ。ほら、着替えに行くぞ。」
【雨の中の笑顔】...end.
梅雨入りした夜。ぐずついた空模様が続いている。今宵も雨が降ったり止んだりを繰り返していた。
現世の任務に駆り出された苗字名前は傘も差さずに光を放つ町並みを見下ろしていた。
昼間は阿散井恋次含む先遣隊がいるため、名前は主に夜の警らを担当している。
現世で不穏な動きがないか見回りをしている名前だったが、今のところ怪しい動きは見られない。
現世の町の夜は瀞霊廷とは違い、繁華街に近い程眩しい。昼間同様に人々が騒いでいる事もあり、愚かだと一瞥する場面もあった。
街灯の明かりが辛うじて届く軒下で雨宿りをしていると、馴染みのある声が聞こえてきた。
「
名前に声を掛けてきたのは同じく現世で任務に来ている斑目一角。今は義骸に入っている。
「別に気にならない。」
それより、人間に一角の姿は見えても義骸に入っていない名前の姿は見えない。
一角を見た人間は彼が一人で喋っている事になる。名前が雨に濡れる事よりも、そっちの方が問題だ。
「誰も見ちゃいねーよ。」
周囲の目を気にする名前の様子に気付いた一角は、自身の背中ごと傘で隠した。
「冷てーな。」
一角は冷えきった彼女の頬に触れ、目を細めた。名前は口付けようとする一角の胸を押し返した。
「人形と接吻する趣味はないわ。」
「へっ、それもそうだな。」
義骸に入っている事を思い出した一角はニヤリと笑った。そして腕に掛けていたビニール袋から、先ほど買ったおむすびを取り出した。
「とりあえず、これ食えよ。こんな時間なのに、握りたてみたいにうまいんだぜ?」
名前は差し出されたおむすびを手に取った。
「コンビニっつう24時間ぶっ通しで営業してる万事屋があって、そこですげぇ数の食い物が売ってんだぜ。」
「ふぅん…夜中なのに人が出入りしているから何かと思った。」
ビニールに包装されたおむすびをどう開けるか分からないだろうと、彼女の様子を見ていた一角だったが、
名前はおむすびをまじまじと見つめ、器用に袋を開けておむすびを食べ始めた。
「現世の鮭は美味しいね。」
「いや、待て待て!食べたことあんのか?このおむすび!」
「普通のおむすびじゃん…なんでそんな食い気味なの?」
「俺はこの袋を開けるまでにずいぶんかかったんだぞ!?何でこんなに早く開けられたんだよ????」
「ここに書いてあるじゃん。」
「……。」
包装をよく見ると丁寧に袋の開け方が絵で分かりやすく明記されていた。黙り込む一角の様子を見て、名前は吹き出した。
「っぷ…くくく…馬鹿。」
「あぁっ!?んだとこらぁ、笑うなよ!」
雨降る梅雨の夜。ジメジメすら吹き飛ばす二人の笑い声。
雨が降っている事など、二人はすっかり忘れてしまっているようだ。
「っくしょん!」
「だから言ったろ。ほら、着替えに行くぞ。」
【雨の中の笑顔】...end.