一角短編集
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【酒飲みの誕生日】
ドンッ...ドンッ...!!
就寝の準備をしていた名前は玄関の扉を叩く音に気付いた。こんな夜更けに誰だろうか、と思いを巡らせなくとも見当はついていた。それに今日は、彼にとってめでたい日だ。
ガララ...
扉を開けた途端、強い酒の匂いが名前の鼻をつんざく。やはり名前が思っていた相手だった。
「……うげぇ……吐きそう……。」
来客はまともに立ってはいられず、背を丸めてうずくまっていた。名前の彼氏である斑目一角は泥酔状態だった。彼が酒に吞まれる事はほぼないが、今日は誕生日と言う事もあり、沢山呑まされたに違いない。
「こんなところで吐いてもらっちゃ困るわ。早く厠へ行ってきなさい。」
飽きれた様子で名前は言ったが、一角は一向に動こうとはしなかった。
「すまねぇ……弓親。」
名前は一角が発した言葉にむっとした。一角は、自分を弓親と勘違いしているようだ。いくら酔っ払っていても、恋人の事くらい判別してほしいものだ。
「分かったわよ。そんなことはいいから、早く中に入って。」
今の一角に何を言おうと理解しないと判断した名前は、とりあえず彼の体を起こした。
(全く、この落とし前はキチンとつけるもらうんだから。)
すると一角の様子が急変した。今にも吐きそうだ。
「……厠まで連れてってくれ……うえぇおっ!!」
「馬鹿っ、こんなところで!!あーもうっ!!」
名前は急いで一角を厠へ運んだ。
*
「……全く、世話かけないでよね。」
名前は、隣で眠る男の寝顔を見ながら小さく呟いた。約半年ぶりの再会が、このような形で果たすことになるとは思ってもみなかった。
「楽しそうにやってんじゃない……。私は、いつも任務と鍛錬に追われてんのに。」
今まで会えなかったのは、名前に時間が無かったからだ。席官とはいえ、刑軍にも所属している名前は他の死神とは比べ物にならないほど働いている。今日も夜になるまで働き詰めだった。
「でも、明日の勤務は昼からなの。」
名前は一角の頬を突いた。相変わらず酒臭さは残っていたが、安らかな顔をして眠る一角の表情を見た名前は幸福だと思った。
この家に布団は一つしかない。その布団を大きく陣取っている一角に、寄り添いながら名前は横になった。
「私もね、さっきお酒飲んでたんだよ。一人で。」
夕食を終えた名前は風呂に上がった後、瀞霊廷内でも有数の上等酒を飲んでいた。疲労を癒す為でもあったが、名前は別の目的で飲んでいた。
「最近、よく眠れなくて…。」
酒を睡眠導入剤に使うのはよくないことだったが、これが一番手っ取り早かった。名前は一角の唇にそっと口付けを落とした。こんな形ではあったが、一角が自分に会いにきてくれたことが嬉しかった。名前は彼の胸に腕を回し、抱きついた。
「今夜は、私の好きなようにしてもいいよね?」
名前は寝巻きの帯を解いた。
***
「うぅ"……。」
薄暗い部屋。
重い瞼を開けると視界映ったのは板目材の天井。重い頭を抱え、ここはどこだ、俺は何をしていたんだ?と記憶を思い起こす。やわらかく体を包む感触とぬくもりを感じ、一角は現実に引き戻された。誰かが腕にまとわりついている感触を覚え、一角は顔を下に向けた。
「名前……?」
自分の横で寝ていたのは、一角が会いたくて仕方がなかった彼女だった。
てっきり自分を介抱したのは弓親だと思っていた一角は、驚きはあったものの、恋人と一緒に居れて嬉しかった。彼女はすやすやと幸せそうな表情を浮かべて寝ていた。急に彼女が愛おしくなり、一角は名前を抱きしめた。
「飲み会から記憶がねぇってことは、俺……酔い潰れちまったんだな。」
昨晩は自分の誕生日会ということもあり、いつもより盛大に酒を呑んだ。
十一番隊の飲み会の後、恋次や檜佐木たちとも居酒屋で呑んだ。自分でも呑みすぎたと思ってはいた。だが気分が高揚していて、出された酒は全部呑んだ。
「大変だっただろ?俺の介抱はよ。」
一角は彼女のそっと頭を撫でた。酔い潰れた自分を介抱する彼女を想像し、申し訳ない気持ちになった。
「ん?ちょっと待てよ……。」
一角は自分を抱きしめる名前が、寝巻きを纏っていないことに気がついた。慌てて自分の体を確認したが、やはり寝巻きを着ていなかった。一角は顔から血が引くのを感じた。
(……やっちまったーっ!!!!)
介抱してもらっただけでは飽き足らず、酔っ払った勢いで情交まで結んでしまった。しかも悪酔いで、全くその記憶がない。相手が恋人だったから良かったと思ったが、彼女には最悪なことをしてしまった。一角自身、こういうことはきちんとした気持ちで望むべきだと思っている。己にいつも言い聞かせていることだったが、今回はどう彼女に弁解すればいいか分からなかった。もういっそのこと、断酒でもしようかと一角が自己嫌悪に陥っていると、隣で眠っていた彼女が声を漏らし、目を覚ました。
「……んぅ……おはよ、一角。」
「おう、おはよう。」
天使や女神のようなという表現方法が一番しっくりくるように、名前は優しく微笑んでいた。その笑みがいつも以上に綺麗で、一角は男の欲が溢れてくるのを感じた。
「一角……気分はどう?」
彼女は昨晩のことを言っている。今ここで「覚えていない」と言ったら、彼女は斬りかかって来るだろう。
「あぁ、最高だぜ?」
名前はいつになく笑顔で一角を見つめる。一角は冷や汗が止まらなかった。
「ふ~ん……。一角、昨日の夜のこと覚えてる?」
素直に「覚えてません」と言えばいいのか?それとも、「何言ってんだ、覚えてねーわけねぇだろ」と言えばいいのか。どうすれば、彼女を傷つけずに済むのだろうか?一角は頭の中はごっちゃになっていた。しかし、彼女の返答は一角が思っていたものと違っていた。名前は一角の心を見透かすように言った。
「ふふふ……覚えてないんでしょ?分かってるって。どうせ、隊長や恋次に呑まされたんでしょ?」
「ああ……。よく分かったな。」
「十一番隊に一度でも所属していたら分かるでしょ。」
気分よく話す名前とは裏腹に、一角の気分はどんどん沈んでいった。
「すまねぇ……俺、犯っちまったんだろ?」
名前は一角の胸板に頬を寄せ、頷いた。
「あんなに激しかったのにね、覚えていないなんて。」
「本当にすまねぇっ!!今度なんか奢ってやるから、許してくれ!!」
彼女の言葉を聞き、とんでもないことをしてしまったと改めて一角は己の行動に悔いた。今の一角には、謝ること以外に何もできなかった。
「……ぷっ……はははははっ!!」
一角の様子を見ていた名前だったが、やがて糸が切れたように突然笑い出した。
「……は?」
怒るでもなく、すねてしまうでもなく、彼女はただひっきりなしに笑っている。一角は、また訳が分からなくなった。すると名前は話し出した。
「ふふふ……ごめん、一角。嘘だよ。一角は私を無理やり犯したりなんてしてない。本当だよ。ただ、どんな反応するか、試しただけなの。……ふふふ。顔真っ青にして謝るんだもん、おかしくて、おかしくて……!!」
「待て、何で俺ら全裸なんだよ。」
「私が脱がせたの。実質、襲ったのは私。ふふふ。驚いた?」
それを聞いた一角は急に恥ずかしくなった。名前はまだ笑い続けている。彼女にうまくハメられ、悔しさがこみ上げてきた。一角は彼女を組み敷く。
「てめぇっ!!人がどんな思いしたと思ってやがる!!本当に犯すぞっ!!ごらぁ!!」
脅かして彼女の反応を楽しむつもりだったが、名前は真剣な表情で一角を見つめた。
「寂しかった……一角がここに来たとき、すごく嬉しかった。でも私の事、弓親と間違えてた。だから、どうしても気付いてほしかった……。」
声が小さくなっていく名前を見て、今度は本気で彼女に悪いことをしてしまったと一角は思った。自分よりも一回り、二回りも身体が小さい彼女を強く抱きしめる。
「でも、ごめんね。謝らなきゃいけないのは私。一角の誕生日だってのに、お祝いに行くこともできなくて。本当にごめん。」
「謝んな、お前は忙しいんだ。仕方ねぇさ。こうして会えたんだ。俺の悪酔いもいい方向に向いたな。」
「ふふふっ。」
愛おしくて堪らない彼女と目を合わせ、そして口付ける。やがて物足りなくなり、彼女の口内に舌をしのばせる。彼女は拒むことなく受け入れてくれた。舌を絡め、思う存分に堪能する。一角が離れると、名前はうるんだ瞳で一角を見上げていた。
「……お酒も、ほどほどにしてよね?」
一角は笑いながら言った。
「そうだな。ここまで飲むのはお前がいるときだけにしとくわ。介抱よろしくな!」
「……しょうがない人ね。」
呆れ口な名前だったが、すぐに笑顔になった。
「遅くなったけど、誕生日おめでとう。一角。」
「おう。」
昨晩、さまざまな者たちから祝福の言葉をもらったが、恋人である名前の言葉が一番響いた。
「私、勤務お昼からなの。」
物言いたげな名前に、一角は喉を鳴らした。
「まだ、お祝いしてなかったよね。」
「……っは。なんかしてくれんのか?」
「言わなくても分かるでしょ?どうせ二日酔いで、鍛錬なんか参加できないくせに。」
「ゆっくり眠らせてもらえるもんだと思ってたがな。いいぜ、俺も溜まってたところだし。楽しませてくれんだろ?」
「ええ。私からの誕生日プレゼント。」
新しい一日が始まる瀞霊廷。
二人の起床は、もう少し先になりそうだ。
【酒飲みの誕生日】2013一角誕...end.
ドンッ...ドンッ...!!
就寝の準備をしていた名前は玄関の扉を叩く音に気付いた。こんな夜更けに誰だろうか、と思いを巡らせなくとも見当はついていた。それに今日は、彼にとってめでたい日だ。
ガララ...
扉を開けた途端、強い酒の匂いが名前の鼻をつんざく。やはり名前が思っていた相手だった。
「……うげぇ……吐きそう……。」
来客はまともに立ってはいられず、背を丸めてうずくまっていた。名前の彼氏である斑目一角は泥酔状態だった。彼が酒に吞まれる事はほぼないが、今日は誕生日と言う事もあり、沢山呑まされたに違いない。
「こんなところで吐いてもらっちゃ困るわ。早く厠へ行ってきなさい。」
飽きれた様子で名前は言ったが、一角は一向に動こうとはしなかった。
「すまねぇ……弓親。」
名前は一角が発した言葉にむっとした。一角は、自分を弓親と勘違いしているようだ。いくら酔っ払っていても、恋人の事くらい判別してほしいものだ。
「分かったわよ。そんなことはいいから、早く中に入って。」
今の一角に何を言おうと理解しないと判断した名前は、とりあえず彼の体を起こした。
(全く、この落とし前はキチンとつけるもらうんだから。)
すると一角の様子が急変した。今にも吐きそうだ。
「……厠まで連れてってくれ……うえぇおっ!!」
「馬鹿っ、こんなところで!!あーもうっ!!」
名前は急いで一角を厠へ運んだ。
*
「……全く、世話かけないでよね。」
名前は、隣で眠る男の寝顔を見ながら小さく呟いた。約半年ぶりの再会が、このような形で果たすことになるとは思ってもみなかった。
「楽しそうにやってんじゃない……。私は、いつも任務と鍛錬に追われてんのに。」
今まで会えなかったのは、名前に時間が無かったからだ。席官とはいえ、刑軍にも所属している名前は他の死神とは比べ物にならないほど働いている。今日も夜になるまで働き詰めだった。
「でも、明日の勤務は昼からなの。」
名前は一角の頬を突いた。相変わらず酒臭さは残っていたが、安らかな顔をして眠る一角の表情を見た名前は幸福だと思った。
この家に布団は一つしかない。その布団を大きく陣取っている一角に、寄り添いながら名前は横になった。
「私もね、さっきお酒飲んでたんだよ。一人で。」
夕食を終えた名前は風呂に上がった後、瀞霊廷内でも有数の上等酒を飲んでいた。疲労を癒す為でもあったが、名前は別の目的で飲んでいた。
「最近、よく眠れなくて…。」
酒を睡眠導入剤に使うのはよくないことだったが、これが一番手っ取り早かった。名前は一角の唇にそっと口付けを落とした。こんな形ではあったが、一角が自分に会いにきてくれたことが嬉しかった。名前は彼の胸に腕を回し、抱きついた。
「今夜は、私の好きなようにしてもいいよね?」
名前は寝巻きの帯を解いた。
***
「うぅ"……。」
薄暗い部屋。
重い瞼を開けると視界映ったのは板目材の天井。重い頭を抱え、ここはどこだ、俺は何をしていたんだ?と記憶を思い起こす。やわらかく体を包む感触とぬくもりを感じ、一角は現実に引き戻された。誰かが腕にまとわりついている感触を覚え、一角は顔を下に向けた。
「名前……?」
自分の横で寝ていたのは、一角が会いたくて仕方がなかった彼女だった。
てっきり自分を介抱したのは弓親だと思っていた一角は、驚きはあったものの、恋人と一緒に居れて嬉しかった。彼女はすやすやと幸せそうな表情を浮かべて寝ていた。急に彼女が愛おしくなり、一角は名前を抱きしめた。
「飲み会から記憶がねぇってことは、俺……酔い潰れちまったんだな。」
昨晩は自分の誕生日会ということもあり、いつもより盛大に酒を呑んだ。
十一番隊の飲み会の後、恋次や檜佐木たちとも居酒屋で呑んだ。自分でも呑みすぎたと思ってはいた。だが気分が高揚していて、出された酒は全部呑んだ。
「大変だっただろ?俺の介抱はよ。」
一角は彼女のそっと頭を撫でた。酔い潰れた自分を介抱する彼女を想像し、申し訳ない気持ちになった。
「ん?ちょっと待てよ……。」
一角は自分を抱きしめる名前が、寝巻きを纏っていないことに気がついた。慌てて自分の体を確認したが、やはり寝巻きを着ていなかった。一角は顔から血が引くのを感じた。
(……やっちまったーっ!!!!)
介抱してもらっただけでは飽き足らず、酔っ払った勢いで情交まで結んでしまった。しかも悪酔いで、全くその記憶がない。相手が恋人だったから良かったと思ったが、彼女には最悪なことをしてしまった。一角自身、こういうことはきちんとした気持ちで望むべきだと思っている。己にいつも言い聞かせていることだったが、今回はどう彼女に弁解すればいいか分からなかった。もういっそのこと、断酒でもしようかと一角が自己嫌悪に陥っていると、隣で眠っていた彼女が声を漏らし、目を覚ました。
「……んぅ……おはよ、一角。」
「おう、おはよう。」
天使や女神のようなという表現方法が一番しっくりくるように、名前は優しく微笑んでいた。その笑みがいつも以上に綺麗で、一角は男の欲が溢れてくるのを感じた。
「一角……気分はどう?」
彼女は昨晩のことを言っている。今ここで「覚えていない」と言ったら、彼女は斬りかかって来るだろう。
「あぁ、最高だぜ?」
名前はいつになく笑顔で一角を見つめる。一角は冷や汗が止まらなかった。
「ふ~ん……。一角、昨日の夜のこと覚えてる?」
素直に「覚えてません」と言えばいいのか?それとも、「何言ってんだ、覚えてねーわけねぇだろ」と言えばいいのか。どうすれば、彼女を傷つけずに済むのだろうか?一角は頭の中はごっちゃになっていた。しかし、彼女の返答は一角が思っていたものと違っていた。名前は一角の心を見透かすように言った。
「ふふふ……覚えてないんでしょ?分かってるって。どうせ、隊長や恋次に呑まされたんでしょ?」
「ああ……。よく分かったな。」
「十一番隊に一度でも所属していたら分かるでしょ。」
気分よく話す名前とは裏腹に、一角の気分はどんどん沈んでいった。
「すまねぇ……俺、犯っちまったんだろ?」
名前は一角の胸板に頬を寄せ、頷いた。
「あんなに激しかったのにね、覚えていないなんて。」
「本当にすまねぇっ!!今度なんか奢ってやるから、許してくれ!!」
彼女の言葉を聞き、とんでもないことをしてしまったと改めて一角は己の行動に悔いた。今の一角には、謝ること以外に何もできなかった。
「……ぷっ……はははははっ!!」
一角の様子を見ていた名前だったが、やがて糸が切れたように突然笑い出した。
「……は?」
怒るでもなく、すねてしまうでもなく、彼女はただひっきりなしに笑っている。一角は、また訳が分からなくなった。すると名前は話し出した。
「ふふふ……ごめん、一角。嘘だよ。一角は私を無理やり犯したりなんてしてない。本当だよ。ただ、どんな反応するか、試しただけなの。……ふふふ。顔真っ青にして謝るんだもん、おかしくて、おかしくて……!!」
「待て、何で俺ら全裸なんだよ。」
「私が脱がせたの。実質、襲ったのは私。ふふふ。驚いた?」
それを聞いた一角は急に恥ずかしくなった。名前はまだ笑い続けている。彼女にうまくハメられ、悔しさがこみ上げてきた。一角は彼女を組み敷く。
「てめぇっ!!人がどんな思いしたと思ってやがる!!本当に犯すぞっ!!ごらぁ!!」
脅かして彼女の反応を楽しむつもりだったが、名前は真剣な表情で一角を見つめた。
「寂しかった……一角がここに来たとき、すごく嬉しかった。でも私の事、弓親と間違えてた。だから、どうしても気付いてほしかった……。」
声が小さくなっていく名前を見て、今度は本気で彼女に悪いことをしてしまったと一角は思った。自分よりも一回り、二回りも身体が小さい彼女を強く抱きしめる。
「でも、ごめんね。謝らなきゃいけないのは私。一角の誕生日だってのに、お祝いに行くこともできなくて。本当にごめん。」
「謝んな、お前は忙しいんだ。仕方ねぇさ。こうして会えたんだ。俺の悪酔いもいい方向に向いたな。」
「ふふふっ。」
愛おしくて堪らない彼女と目を合わせ、そして口付ける。やがて物足りなくなり、彼女の口内に舌をしのばせる。彼女は拒むことなく受け入れてくれた。舌を絡め、思う存分に堪能する。一角が離れると、名前はうるんだ瞳で一角を見上げていた。
「……お酒も、ほどほどにしてよね?」
一角は笑いながら言った。
「そうだな。ここまで飲むのはお前がいるときだけにしとくわ。介抱よろしくな!」
「……しょうがない人ね。」
呆れ口な名前だったが、すぐに笑顔になった。
「遅くなったけど、誕生日おめでとう。一角。」
「おう。」
昨晩、さまざまな者たちから祝福の言葉をもらったが、恋人である名前の言葉が一番響いた。
「私、勤務お昼からなの。」
物言いたげな名前に、一角は喉を鳴らした。
「まだ、お祝いしてなかったよね。」
「……っは。なんかしてくれんのか?」
「言わなくても分かるでしょ?どうせ二日酔いで、鍛錬なんか参加できないくせに。」
「ゆっくり眠らせてもらえるもんだと思ってたがな。いいぜ、俺も溜まってたところだし。楽しませてくれんだろ?」
「ええ。私からの誕生日プレゼント。」
新しい一日が始まる瀞霊廷。
二人の起床は、もう少し先になりそうだ。
【酒飲みの誕生日】2013一角誕...end.