一角短編集
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【想い】
「なぁ、現世ってのは窮屈な場所なんだぜ。」
破面の先遣隊として派遣された一角は坂道の途中のガードレールにもたれ、夕日を見ていた。彼らが派遣されて三日目が終わろうとしている。
瀞霊廷とは生活も文化も大きく違い、その雰囲気になじむには苦労した。
必要最低限のことは大体覚えた。どこにでも飲食店があり、何時でも新鮮な食べ物が手に入る。更に、速く走る事のできない人間は進化した乗り物を使う。人間の生活は尸魂界と比べてもかなり発達している。
暮らすには申し分ない。
しかし、一角にとって十分に体を動かす事が出来ないのが不服だった。
現世に着いた時に斬魄刀は取り上げられ、人に手を上げることを禁じられた。確かに虚が見えない人間にとっては武器は必要ない代物なのだろうが…。
「腑抜けたツラしやがって…。」
一角にとって現世の住人がひどく脆く見えた。命の瀬戸際を知らない者の行く道が目の前に広がっているのなら、平和は己にとって不要だと思った。
散歩する人や自転車をこぐ帰宅者が一角の前を通り過ぎていく。時折、風が木の葉を揺らした。
今日という日が終わる。夕日は傾き、地に消えていく。茜色の空がだんだん陰を濃くして夜になる。
これは現世も尸魂界も同じだ。
(お前も、同じ夕日を見ているのか?)
違う世界なのだから、それはないはずだ。
だが、この景色を彼は知っていた。
全く知らない世界なのに、懐かしくなる。
一角は彼女のことを想った。
今は夕飯を食べているのだろうか?それともまだ鍛錬の途中だろうか?
この戦いが収まるまで、彼女とゆっくり会うことはできないだろう。だが、一角は彼女に教えたかった。
(現世にはお前を喜ばせてやれそうなものがたくさんあるんだぜ!)
一角には不要なものばかりだが、街を歩く女性は誰もが輝いて見えた。
*
弓親の買い物に付き合っていた時、歩き疲れた一角はベンチで休んでいた。その時ショーウィンドウに飾られていたレディースのワンピースを見つけた。花柄の白いワンピースで、真っ先にそれを着た彼女の姿が脳裏に浮かんだ。
現世に着いてすぐに見た女子生徒は、ミニスカートを履き、脚を晒して歩いていた。一角はとてもはしたないと思ったが、乱菊に「あれは現世のお洒落なの!」とたしなめられた。
よく見れば老若男女、さまざまな格好をしていた。多くの人間がこうも形の違う洋服を身に付け、街を歩いている。
一角はそのことにかなり驚愕した。
たくさんの紙袋を手に提げ、上機嫌な弓親に一角は尋ねた。
「弓親、ここは楽しいか?」
弓親は間髪入れずに笑顔で答えた。
「ん?そりゃぁ、楽しいに決まってるじゃないか!こんなに僕を魅了するものが溢れているのだから。」
「…そうか。」
*
(もし、お前と現世に来た時は…。)
一角はガードレールを跨ぎ、歩き出した。
辺りはすっかりは暗くなり、街に灯りがともり出す。
「喜んでくれるかわかんねぇけどな。」
一角は呟き、口元に笑みを浮かべた。
二人で一緒に現世の店を回り、着飾って街を歩く姿を思い描きながら。
【想い】...end.
「なぁ、現世ってのは窮屈な場所なんだぜ。」
破面の先遣隊として派遣された一角は坂道の途中のガードレールにもたれ、夕日を見ていた。彼らが派遣されて三日目が終わろうとしている。
瀞霊廷とは生活も文化も大きく違い、その雰囲気になじむには苦労した。
必要最低限のことは大体覚えた。どこにでも飲食店があり、何時でも新鮮な食べ物が手に入る。更に、速く走る事のできない人間は進化した乗り物を使う。人間の生活は尸魂界と比べてもかなり発達している。
暮らすには申し分ない。
しかし、一角にとって十分に体を動かす事が出来ないのが不服だった。
現世に着いた時に斬魄刀は取り上げられ、人に手を上げることを禁じられた。確かに虚が見えない人間にとっては武器は必要ない代物なのだろうが…。
「腑抜けたツラしやがって…。」
一角にとって現世の住人がひどく脆く見えた。命の瀬戸際を知らない者の行く道が目の前に広がっているのなら、平和は己にとって不要だと思った。
散歩する人や自転車をこぐ帰宅者が一角の前を通り過ぎていく。時折、風が木の葉を揺らした。
今日という日が終わる。夕日は傾き、地に消えていく。茜色の空がだんだん陰を濃くして夜になる。
これは現世も尸魂界も同じだ。
(お前も、同じ夕日を見ているのか?)
違う世界なのだから、それはないはずだ。
だが、この景色を彼は知っていた。
全く知らない世界なのに、懐かしくなる。
一角は彼女のことを想った。
今は夕飯を食べているのだろうか?それともまだ鍛錬の途中だろうか?
この戦いが収まるまで、彼女とゆっくり会うことはできないだろう。だが、一角は彼女に教えたかった。
(現世にはお前を喜ばせてやれそうなものがたくさんあるんだぜ!)
一角には不要なものばかりだが、街を歩く女性は誰もが輝いて見えた。
*
弓親の買い物に付き合っていた時、歩き疲れた一角はベンチで休んでいた。その時ショーウィンドウに飾られていたレディースのワンピースを見つけた。花柄の白いワンピースで、真っ先にそれを着た彼女の姿が脳裏に浮かんだ。
現世に着いてすぐに見た女子生徒は、ミニスカートを履き、脚を晒して歩いていた。一角はとてもはしたないと思ったが、乱菊に「あれは現世のお洒落なの!」とたしなめられた。
よく見れば老若男女、さまざまな格好をしていた。多くの人間がこうも形の違う洋服を身に付け、街を歩いている。
一角はそのことにかなり驚愕した。
たくさんの紙袋を手に提げ、上機嫌な弓親に一角は尋ねた。
「弓親、ここは楽しいか?」
弓親は間髪入れずに笑顔で答えた。
「ん?そりゃぁ、楽しいに決まってるじゃないか!こんなに僕を魅了するものが溢れているのだから。」
「…そうか。」
*
(もし、お前と現世に来た時は…。)
一角はガードレールを跨ぎ、歩き出した。
辺りはすっかりは暗くなり、街に灯りがともり出す。
「喜んでくれるかわかんねぇけどな。」
一角は呟き、口元に笑みを浮かべた。
二人で一緒に現世の店を回り、着飾って街を歩く姿を思い描きながら。
【想い】...end.