一角短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【納豆ネバネバ】
「隊長、おかえりなさいっス!」
招集に出ていた剣八と名前が十一番隊隊舎に戻ると隊員が出迎えた。
会議が長引き、昼食を食べ逃した二人は真っ先に食堂へ向かった。
「隊長の分です!」
隊員は予め剣八の食事を除けておいたようで、すぐに食べられるようになっていた。
「あ…すんません、苗字さんの分、用意するの忘れてしまって…。」
「私はあるものでいい。」
隊員は剣八の配慮は出来ていたが、名前の分までは気が回らなかったようだ。
しかし名前は別段気にしていなかった。調理場で食べられるものがないか探した。
幸い、おひつに白米、大鍋には味噌汁があったのでそれだけで空腹はしのげるだろう。
剣八にお茶を入れ、自身の食事を用意した名前は席に着いた。
「いただきます。」
「苗字、これやる。」
肉じゃがが入った小鉢をご飯と味噌汁しかない名前に渡した。
優しい隊長の気遣いに名前は嬉しくなった。
名前は口元を緩め「お心遣い、感謝致します」と頭を下げた。
「苗字さん、納豆が出てきました!」
名前が食事を始めた後も調理場で他に食べられるものが無いかと探していた隊員は、朝食で残っていた納豆を持ってきた。
「ありがとう。」
名前は快く隊員から納豆を受け取り、卓上の醤油を掛けた。
怪訝な顔をする剣八に気が付いた名前。
(そう言えば、隊長は納豆が嫌いだったな。いつも食べていなかったし…。)
「においが気になるなら、移動しますよ。」
「いや、においは気にならねぇ。動かなくていい。」
「そうですか。」
納豆嫌いの人はあの独特の発酵臭を嫌う。
しかし剣八はそれは気にならないと言った。
名前はいつものように、納豆を混ぜずそのまま白米の上に乗せた。
そして箸で納豆の乗ったご飯を口に入れた。
遅めの昼食でお腹が減り、ご飯が美味しい。
そして箸を味噌汁に付けて肉じゃがのじゃがいもを箸で割り、口に入れる。
「賢いな。」
呟いた言葉に驚いて名前は剣八を見る。
「何がですか?」
「納豆の糸引きがうっとおしいのに、苗字は上手く食べるな。」
「あぁ…隊長はこの糸が苦手なんですね。」
「今度俺もやってみる。」
納豆は混ぜた方がうま味が増すと言われているが、名前は納豆には変わりないので、いつもそのまま食べる。
剣八の納豆嫌いな理由を知った名前はクスリと笑った。
*
(隊長と名前が楽しそうに笑っている!?)
廊下で食堂を見ていたのは斑目一角。
隊長と名前が帰ってきたのは声が聞こえてたので知っていた。
厠へ行く途中、食堂の前をたまたま通りかかった時に笑い声がするので覗いたのだ。
隊長と名前は二人とも口数が少ない方なので、会話が盛り上がる事は予想していなかった。
「あ?なんだそりゃ、面白そうじゃねぇか。」
「ふふ、後日ご案内致します。」
「楽しみだぜ。」
剣八と名前が何処かへ行く約束を交わした所で、一角は心拍が速まった。
(っ!!???名前と隊長が出かける約束?いつの間にそんな関係に発展したんだ???)
自分には見せない笑う名前を見て一角は胸が痛んだ。
(名前…隊長の前だとあんなに笑うんだな…そりゃ、俺が尊敬する隊長だ。
アイツが隊長に惚れるのは理解できる…しかし、まさか隊長と名前が……。)
一度考えだしたら止まらない。
色恋事などこれっぽっちも興味がないだろうと高を括っていたのがまずかった。
(いくら隊長でも、名前とデキてたら口出し出来ねぇ…いや、しかし俺もここで引くような漢じゃ…。)
「おい一角!コソコソと何してんだ?」
剣八の呼びかけに驚いた一角は全身から汗が噴き出ていた。
「隊長、お疲れ様です…。」
「おう。お前、腹でも下してんのか?」
尋常じゃない汗をかき、顔色が悪い一角を見て剣八は腐ったものを食べて当たったのかと思った。
しかし一角は首を振った。
「いや…違います。その、隊長…。」
「何が言いてぇ、はっきり言いやがれ。」
一角は剣八の問いかけに上手く言葉を発することが出来なかった。
(隊長に「名前と付き合ってるんスか?」なんて言えるか…!!)
隊長の横に座っている名前は興味なさそうに黙々とご飯を食べている。
「今チラッと、面白そうな場所に行くと聞こえてきたもんですから、何処に行くのかと必死に考えていたんスよ。」
剣八は顔色を悪くするようなことか?と首を傾げた。名前が先ほどの会話を説明した。
「七番隊の狛村隊長が、競技大会を催すんだって。力比べや宝探しをして、入賞すると何か貰えるみたい。」
「力比べってのが気になるな。何をするのか知らねえが、参加しないわけにはいかねぇ。」
グッと拳を握る剣八は目がらんらんと輝いていた。既に競技に出そうな勢いだ。
「隊長なら絶対入賞しますよ。」
これは十一番隊総出で参加だ、と考えた剣八は一角に目を向けた。
「お前も出るだろ?…おい、聞いてんのか?」
一角は気が抜けたようにその場にうずくまった。
「何だ…そんな事だったのか…。」
「は?」
剣八と名前は顔を見合わせて頭の上に?マークを浮かべた。
何が何だかよく分からない。
隊長と名前がデートに行く訳ではないと知り、一角はホッと胸を撫でおろした。
(でももし、隊長と名前が付き合ったら俺は二人を応援できるだろうか?)
あり得ないだろうとは思うが…もしも、もしもの話だ。
しばらく考えて、一角はフッと息を吐いた。
(そん時は、力ずくでも…。)
【納豆ネバネバ】...end.
「隊長、おかえりなさいっス!」
招集に出ていた剣八と名前が十一番隊隊舎に戻ると隊員が出迎えた。
会議が長引き、昼食を食べ逃した二人は真っ先に食堂へ向かった。
「隊長の分です!」
隊員は予め剣八の食事を除けておいたようで、すぐに食べられるようになっていた。
「あ…すんません、苗字さんの分、用意するの忘れてしまって…。」
「私はあるものでいい。」
隊員は剣八の配慮は出来ていたが、名前の分までは気が回らなかったようだ。
しかし名前は別段気にしていなかった。調理場で食べられるものがないか探した。
幸い、おひつに白米、大鍋には味噌汁があったのでそれだけで空腹はしのげるだろう。
剣八にお茶を入れ、自身の食事を用意した名前は席に着いた。
「いただきます。」
「苗字、これやる。」
肉じゃがが入った小鉢をご飯と味噌汁しかない名前に渡した。
優しい隊長の気遣いに名前は嬉しくなった。
名前は口元を緩め「お心遣い、感謝致します」と頭を下げた。
「苗字さん、納豆が出てきました!」
名前が食事を始めた後も調理場で他に食べられるものが無いかと探していた隊員は、朝食で残っていた納豆を持ってきた。
「ありがとう。」
名前は快く隊員から納豆を受け取り、卓上の醤油を掛けた。
怪訝な顔をする剣八に気が付いた名前。
(そう言えば、隊長は納豆が嫌いだったな。いつも食べていなかったし…。)
「においが気になるなら、移動しますよ。」
「いや、においは気にならねぇ。動かなくていい。」
「そうですか。」
納豆嫌いの人はあの独特の発酵臭を嫌う。
しかし剣八はそれは気にならないと言った。
名前はいつものように、納豆を混ぜずそのまま白米の上に乗せた。
そして箸で納豆の乗ったご飯を口に入れた。
遅めの昼食でお腹が減り、ご飯が美味しい。
そして箸を味噌汁に付けて肉じゃがのじゃがいもを箸で割り、口に入れる。
「賢いな。」
呟いた言葉に驚いて名前は剣八を見る。
「何がですか?」
「納豆の糸引きがうっとおしいのに、苗字は上手く食べるな。」
「あぁ…隊長はこの糸が苦手なんですね。」
「今度俺もやってみる。」
納豆は混ぜた方がうま味が増すと言われているが、名前は納豆には変わりないので、いつもそのまま食べる。
剣八の納豆嫌いな理由を知った名前はクスリと笑った。
*
(隊長と名前が楽しそうに笑っている!?)
廊下で食堂を見ていたのは斑目一角。
隊長と名前が帰ってきたのは声が聞こえてたので知っていた。
厠へ行く途中、食堂の前をたまたま通りかかった時に笑い声がするので覗いたのだ。
隊長と名前は二人とも口数が少ない方なので、会話が盛り上がる事は予想していなかった。
「あ?なんだそりゃ、面白そうじゃねぇか。」
「ふふ、後日ご案内致します。」
「楽しみだぜ。」
剣八と名前が何処かへ行く約束を交わした所で、一角は心拍が速まった。
(っ!!???名前と隊長が出かける約束?いつの間にそんな関係に発展したんだ???)
自分には見せない笑う名前を見て一角は胸が痛んだ。
(名前…隊長の前だとあんなに笑うんだな…そりゃ、俺が尊敬する隊長だ。
アイツが隊長に惚れるのは理解できる…しかし、まさか隊長と名前が……。)
一度考えだしたら止まらない。
色恋事などこれっぽっちも興味がないだろうと高を括っていたのがまずかった。
(いくら隊長でも、名前とデキてたら口出し出来ねぇ…いや、しかし俺もここで引くような漢じゃ…。)
「おい一角!コソコソと何してんだ?」
剣八の呼びかけに驚いた一角は全身から汗が噴き出ていた。
「隊長、お疲れ様です…。」
「おう。お前、腹でも下してんのか?」
尋常じゃない汗をかき、顔色が悪い一角を見て剣八は腐ったものを食べて当たったのかと思った。
しかし一角は首を振った。
「いや…違います。その、隊長…。」
「何が言いてぇ、はっきり言いやがれ。」
一角は剣八の問いかけに上手く言葉を発することが出来なかった。
(隊長に「名前と付き合ってるんスか?」なんて言えるか…!!)
隊長の横に座っている名前は興味なさそうに黙々とご飯を食べている。
「今チラッと、面白そうな場所に行くと聞こえてきたもんですから、何処に行くのかと必死に考えていたんスよ。」
剣八は顔色を悪くするようなことか?と首を傾げた。名前が先ほどの会話を説明した。
「七番隊の狛村隊長が、競技大会を催すんだって。力比べや宝探しをして、入賞すると何か貰えるみたい。」
「力比べってのが気になるな。何をするのか知らねえが、参加しないわけにはいかねぇ。」
グッと拳を握る剣八は目がらんらんと輝いていた。既に競技に出そうな勢いだ。
「隊長なら絶対入賞しますよ。」
これは十一番隊総出で参加だ、と考えた剣八は一角に目を向けた。
「お前も出るだろ?…おい、聞いてんのか?」
一角は気が抜けたようにその場にうずくまった。
「何だ…そんな事だったのか…。」
「は?」
剣八と名前は顔を見合わせて頭の上に?マークを浮かべた。
何が何だかよく分からない。
隊長と名前がデートに行く訳ではないと知り、一角はホッと胸を撫でおろした。
(でももし、隊長と名前が付き合ったら俺は二人を応援できるだろうか?)
あり得ないだろうとは思うが…もしも、もしもの話だ。
しばらく考えて、一角はフッと息を吐いた。
(そん時は、力ずくでも…。)
【納豆ネバネバ】...end.