月光に毒される(短編集)
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【安心できる関係】
「なぁ、これ下手くそじゃね?」
一角が指差すのは瀞霊廷通信に掲載された、優秀賞の書道作品。
『斬拳走鬼』の文字は整っているが、なんとなく勢いのない文字だ。
「…私は綺麗だと思うけど。」
一角の問いに答えるのは十一番隊に顔を出している名前。
文字を書くことが苦手な名前は、自身が書く文字に比べれば比較にならない程良いと思った。
習字が得意な一角からしたら下手に見えるのだろうが、名前はその違いがよく分からない。
「俺が書いた方が絶対上手いな。」
「応募してないくせによく言うね。」
前々回の瀞霊廷通信に作品募集していたらしいが、一角は目を通していなかった。
しかし、もしその応募を見て知っていたとしても一角は応募していなかっただろう。
「まぁ、そうだけどよ…そうだ!お前なんか文字書いてくれよ。」
「は?何で??」
唐突な一角の頼みに名前は眉を吊り上げた。
一角の字と名前の字は天と地ほどの差。
認めたくなかったが、名前は一角の書く字を尊敬していた。
「なんか急にお前の字が見たくなってきた。」
「それって、ただ単に私を馬鹿にしたいだけでしょ?」
「半分合ってるな。」
「それ、どういう事?」
名前は一角に殴りかかるが、細い彼女の腕を簡単に取り、ニマリと笑う。
「名前より俺の方が字もうめぇし、力も強ぇし、太刀打ちできねぇな?」
「ぐっ…最後のは聞き捨てならない!」
名前は更に力を込めた。一角に一発拳を叩き込みたいと思うが、両腕を捕まえられては彼に敵うはずがない。
「速いお前でもこうして捕まえちまえば俺のもんだ。」
名前は込める力を抜いた。一角は唐突な彼女の脱力に驚いた。
その時生まれた一瞬の隙を名前は逃さなかった。
「っぐああ!!!馬鹿野郎っ…局部蹴る奴があるか!!!」
股間を名前に蹴られた一角はそこを押さえ、床に転がり込んだ。
「ふんっ!!」
名前は痛みに悶える一角を一瞥する。
「名前、おめー俺が不能になったら責任とれよな!!!」
「別にいいんじゃない?勃たなくても戦いには支障ないわ。」
「ったく…言うようになったな名前…。」
涙目になりながら名前を見上げる。
しかし、一角はこの時間が楽しいと思っていた。
しばらくして、名前はうわ言のように呟いた。
「下手だから、今も時折練習している。でも、字だけはどうしても上手く書けない…。」
名前が十一番隊に所属していた頃、一角が書き初めの練習に付き合ってくれた事があった。
一角の指導の効果もあり、字の形は多少綺麗になったが文字の大きさがどうしても統一されない。
そのせいで歪んで見えるのだ。
『字は己の心の表れだ』と何度も一角に言われた。彼の書く字は真っ直ぐで力強い字だ。
「私が一番分かってる…。」
「どうした、らしくないな。」
しょんぼりとする名前の表情を見つめる一角。
そう言えば、休日にわざわざこうして会いに来るという事は何かあったからではないのか?
一角が名前の表情を更に覗き込んでも彼女は怒らない。
心あらずという感じで遠くを見つめている。
一角は上体を起こし、そんな彼女の肩を抱いた。
「焦ってもしょうがねーだろ。練習を欠かしてないなら、それでいい。
実力が伴わなくたって、心身から向き合っていれば、いつか大成するさ。」
「そんなの分からない…。」
「いつでも俺が相手になるぜ。」
(書く練習、鍛錬だって俺がいつでも相手してやる。だからいつでも来いよ…。)
しかし彼女の返事はツレないものだった。
「……それだけは絶対にやだ。」
「あぁ!?どう言う事だよそれは?」
「何にも分かってない!」
「こんな可愛げのない女は、俺ぐらいしか相手になるやついねーわ!」
「調子に乗らないで!」
再び始まったと取っ組み合い。
その様子を近くで聞いていた弓親は微笑んだ。
(いつも仲良しだなぁ…。)
【安心できる関係】…end.
「なぁ、これ下手くそじゃね?」
一角が指差すのは瀞霊廷通信に掲載された、優秀賞の書道作品。
『斬拳走鬼』の文字は整っているが、なんとなく勢いのない文字だ。
「…私は綺麗だと思うけど。」
一角の問いに答えるのは十一番隊に顔を出している名前。
文字を書くことが苦手な名前は、自身が書く文字に比べれば比較にならない程良いと思った。
習字が得意な一角からしたら下手に見えるのだろうが、名前はその違いがよく分からない。
「俺が書いた方が絶対上手いな。」
「応募してないくせによく言うね。」
前々回の瀞霊廷通信に作品募集していたらしいが、一角は目を通していなかった。
しかし、もしその応募を見て知っていたとしても一角は応募していなかっただろう。
「まぁ、そうだけどよ…そうだ!お前なんか文字書いてくれよ。」
「は?何で??」
唐突な一角の頼みに名前は眉を吊り上げた。
一角の字と名前の字は天と地ほどの差。
認めたくなかったが、名前は一角の書く字を尊敬していた。
「なんか急にお前の字が見たくなってきた。」
「それって、ただ単に私を馬鹿にしたいだけでしょ?」
「半分合ってるな。」
「それ、どういう事?」
名前は一角に殴りかかるが、細い彼女の腕を簡単に取り、ニマリと笑う。
「名前より俺の方が字もうめぇし、力も強ぇし、太刀打ちできねぇな?」
「ぐっ…最後のは聞き捨てならない!」
名前は更に力を込めた。一角に一発拳を叩き込みたいと思うが、両腕を捕まえられては彼に敵うはずがない。
「速いお前でもこうして捕まえちまえば俺のもんだ。」
名前は込める力を抜いた。一角は唐突な彼女の脱力に驚いた。
その時生まれた一瞬の隙を名前は逃さなかった。
「っぐああ!!!馬鹿野郎っ…局部蹴る奴があるか!!!」
股間を名前に蹴られた一角はそこを押さえ、床に転がり込んだ。
「ふんっ!!」
名前は痛みに悶える一角を一瞥する。
「名前、おめー俺が不能になったら責任とれよな!!!」
「別にいいんじゃない?勃たなくても戦いには支障ないわ。」
「ったく…言うようになったな名前…。」
涙目になりながら名前を見上げる。
しかし、一角はこの時間が楽しいと思っていた。
しばらくして、名前はうわ言のように呟いた。
「下手だから、今も時折練習している。でも、字だけはどうしても上手く書けない…。」
名前が十一番隊に所属していた頃、一角が書き初めの練習に付き合ってくれた事があった。
一角の指導の効果もあり、字の形は多少綺麗になったが文字の大きさがどうしても統一されない。
そのせいで歪んで見えるのだ。
『字は己の心の表れだ』と何度も一角に言われた。彼の書く字は真っ直ぐで力強い字だ。
「私が一番分かってる…。」
「どうした、らしくないな。」
しょんぼりとする名前の表情を見つめる一角。
そう言えば、休日にわざわざこうして会いに来るという事は何かあったからではないのか?
一角が名前の表情を更に覗き込んでも彼女は怒らない。
心あらずという感じで遠くを見つめている。
一角は上体を起こし、そんな彼女の肩を抱いた。
「焦ってもしょうがねーだろ。練習を欠かしてないなら、それでいい。
実力が伴わなくたって、心身から向き合っていれば、いつか大成するさ。」
「そんなの分からない…。」
「いつでも俺が相手になるぜ。」
(書く練習、鍛錬だって俺がいつでも相手してやる。だからいつでも来いよ…。)
しかし彼女の返事はツレないものだった。
「……それだけは絶対にやだ。」
「あぁ!?どう言う事だよそれは?」
「何にも分かってない!」
「こんな可愛げのない女は、俺ぐらいしか相手になるやついねーわ!」
「調子に乗らないで!」
再び始まったと取っ組み合い。
その様子を近くで聞いていた弓親は微笑んだ。
(いつも仲良しだなぁ…。)
【安心できる関係】…end.