月光に毒される
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弓親は芽瑠を見つめ「恋する乙女のパワーには敵わないな」と思った。
(と言うか、一角は芽瑠ちゃんの気持ちに気付いてるのかな…?)
あれだけ一角に気持ちを伝えているのだから、好意がある事は分かっているだろうに。芽瑠がやちるの写真を撮りに行き、姿が無くなったのを確認して弓親は一角に近付いた。
「芽瑠ちゃん、すごくいい子だと思わない?」
「あぁ、そうだな。気が利くし、優しいだけじゃなくて、相手が男だろうが言う時はハッキリ言うしな。」
「好きな子とかいるんじゃない?」
「あーいるかもしれねぇな…こんな出来のいい女に惚れられるなんて羨ましいぜ…。」
(えぇっ!?気付いてないの…!?)
一角の言葉を聞き、弓親は驚愕した。芽瑠の好意は一ミリも一角には届いていないのだ。
(鈍感にも程があるでしょ…ま、いいや。僕が口を出す事じゃないし。)
弓親は芽瑠の恋路を見守ることにした。
*
流魂街———...
久枝の家から人里へ降りてきた名前。山で採れた山菜を売りに商店がある地区まで瞬歩を使って走って来た。山菜を売り、再び久枝の家に帰ろうとした名前は書店の陳列棚が目に入った。そこには瀞霊廷通信が並べられてあり、表紙にはでかでかと『十三隊最強、十一番隊特集!』とタイトルが打ち出されていた。気になった名前は瀞霊廷通信を購入して帰宅した。その夜、名前は購入した雑誌を開いた。
紹介文と共に、十一番隊の日常風景が写されている。どの写真も隊員皆がとてもいい表情をしていた。八番隊との対決の様子も載っており、名前は変わらぬ十一番隊の様子に笑みを浮かべた。
(みんな相変わらずね…私も頑張らなきゃ。)
***
『貴方は他の人には作れない成分を生成する事が出来る、特異体質です』
そう診断されてから三年の時が経った。名前は自身の体と向き合い、体質を理解して薬学の知識を深めた。瀞霊廷の医学部にも協力してもらい、体内にある成分が人体に影響を及ぼす毒である事が判明した。毒の生成を抑える方法を模索していたが、排出する以外に手立てが見つからなかった。死神が霊圧を自在に操るように、全身に回っていた毒を制御出来るようになるまで、かなりの努力を要した。様々なパターンを試したが、一番簡単に毒を排出する方法は斬魄刀始解時。他にも名前の体液から毒を排出する事は出来たが、量的にも操る事が難しい。名前の斬魄刀、皎我蜘蛛は糸状の刃を自在に操る事が出来る。指先から霊圧を流す要領で糸に毒を付着させ、体内の毒を排出することが出来た。この方法を見つけてから毒成分の解析は飛躍的に進んだ。解毒薬も出来上がっている。
名前は時折瀞霊廷を行き来し、着実に復帰の道を歩んでいた。
(あともう少し…。)
名前は自室にある三本の毒が入った瓶を見つめた。神経毒と呼ばれる痺れ毒、麻痺毒。もう一つは体にダメージを与え、体力を奪う危ない毒…これは取り扱いに気を付けなければならない。今見つかっている毒成分は三種類…しかし今後も新たな毒が見つかりそうな予感がしていた。復職したら更に研究を進めなければならない。今日も名前は鍛錬に励んだ。
***
「失礼します!!!」
勢いよく十一番隊の隊舎に入ってきたのは、六番隊に異動した阿散井恋次だった。左腕には副官章が輝いている。恋次は六番隊副隊長就任挨拶の為に十一番隊を訪問したのだった。
「おう、話は聞いてるぜ!」
「副隊長就任おめでとう。」
一角と弓親は笑顔で恋次を祝福した。他の十一番隊隊員も「立派になったなぁ」と感慨深そうに恋次の姿を眺めていた。
「更木隊長、ご無沙汰しております!」
「おう…副隊長になったんだってな。見違えたじゃねぇか。」
「ありがとうございます!」
十一番隊では六席だった恋次だが、今や六番隊の二番手。同じく十一番隊の副隊長であるやちるは、勢いよく恋次の肩に飛び乗った。
「あたしといっしょー!」
「副隊長になったなんて、俺…まだ正直、実感湧かないっス。」
副隊長に任命されたのが今日の午前。恋次は左腕に装着した副官章の着け心地に慣れずにいた。
「俺も早く鉄さんみたい、隊を引っ張っていく立派な副隊長になりたいです!」
十一番隊に在籍していた射場鉄左衛門は、七番隊に異動してから程なくして副隊長に就任した。彼の器量の良さが伺える。異動に反対していた一角さえも、いざ鉄左衛門が副隊長に就任したと聞くと大いに喜んだ。
「鉄さんだったら色々教えてくれるだろうさ。チビじゃなんにも参考にならねぇからな。」
「うるさい、パチンコ玉!」
やちるは一角に唾を吐きかけ、一角はブチ切れた。
「このチビがああぁ!!!」
「いーだ!」
やちると一角の追いかけっこが始まり、ドタバタと室内が騒がしくなった。恋次はふと名前の事を思い出した。
「そう言えば、名前の奴はまだ休職してるんスか?」
「あぁ、名前ちゃんなんだけどね、もうすぐ戻って来るよ。こないだ通告があったんだ。」
「俺が副隊長になったって聞いたら、驚くだろうな。」
やちるの頬をつねる一角は恋次に声を掛けた。
「恋次!お前が副隊長に相応しい実力かどうか、俺が今から確かめてやるぜ。」
「望むところっスよ、一角さん!」
***
一角は毎日のように鍛錬に取り組んでいた。弓親や恋次…隊長にも頭を下げて手合わせをして確実に力を付けていた。身近にいる仲間達が切磋琢磨して強くなろうとしている姿を見て、自分も立ち止まっているわけにはいかない。
「……。」
地面に刺した鬼灯丸を見つめ、一角は斬魄刀との対話に臨んでいた。鬼灯丸は他の斬魄刀と違い二つの始解、形状変化が可能。それは一角が鬼灯丸と共に修行を重ね、会得した賜物である。一角は更にその上の段階に足を踏み入れようとしていた。
『よう…相棒』
「用件は分かってんだろ、さっさと始めるぞ。」
『そう慌てんな…ようやく更木剣八を倒す気になって俺は、感心してるんだぜ?』
「余計な御託を並べるんじゃねぇよ。」
鬼灯丸は誰よりも傍で一角を見ている存在。自我を持っている為、自分とは意見が異なる時もある。その時は実力を見せて分からせてやらなければならない。
『あの男に倒されてから、お前は変わっちまった…本気で戦う事を忘れたお前に、力を貸してやる気はねぇ』
今も鬼灯丸は一角の意志に反して好き勝手に喋っているが、一角はそれを無視した。
「そうかよ…だが俺は力ずくで、てめぇの力を引き出すぜ。」
『やれるもんならやってみな』
「行くぜぇ!!!」
***
復帰日当日。
名前は体調を万全に整え、十一番隊の門をくぐった。隊員達は笑顔で名前を迎え入れてくれた。
「苗字名前、戻って参りました。」
更木剣八の前で足を付く名前。剣八は「もういいのか」と尋ねた。
「はい、自身の体質を理解し、対処方法も見つけました。万全です。」
同じ室内にいた一角は鼻で笑った。
「名前、俺知ってんだぜ?お前がちょくちょくこっち(瀞霊廷)に戻ってきてんの。顔ぐらい出せば良かったじゃねぇか。」
愛想がねぇな、と言われた名前は「休職している身分で、図々しいでしょ」と答えた。
「四番隊に出入りしてたのは体調管理の為?」
「そうよ。」
今度は弓親に尋ねられ、名前はこれまでの経緯を端的に説明した。
「そういやお前、毒キノコ食ってもなんともなかったもんな!」
「毒を生成する、特異体質ねぇ…それって結構大変なんじゃないかい?」
「大変なんてものじゃない、かなり苦労した…特に戦闘中に過剰分泌されるから排出しないと全身に回って、前みたいに卒倒してしまう。」
「はっ…面白そうじゃねぇか。苗字、俺と勝負しろ!」
「更木隊長…!」
名前は隊長の提案に驚きつつも、更木隊長なら自身の新たな毒の発見が出来るやもしれないと期待した。
「隊長、名前ちゃんと手合わせしたい気持ちはやまやまですが、先ずは昇進の話が先じゃないですか?」
「あぁん!?」
弓親は名前に向き直り説明した。
「名前ちゃんが休職している間に恋次が六番隊に異動したのは知ってるね?」
「うん。副隊長に就任したのよね。」
「それでね、恋次がいた六席が空席の状態なんだ。名前ちゃんが休職してたから昇格試験が出来なくてね。悪いけど、そっちを最優先にしてもらえるかな?」
『苗字七席、お願いしまーす!』
突如部屋に響いた隊員達の声。扉の前では隊員達が名前に笑顔を向けていた。つまり、以前と同様に昇格を望む隊員達の決闘に挑まなければならないという事だ。
「挑んで来る隊員、全員に勝てば名前ちゃんは六席に昇格。」
「分かった。早速始めよう。」
*
十一番隊裏にある修練場では名前に決闘を挑んだ隊員達が横たわっていた。
「相変らずつえぇ…寧ろ、強くなっている…。」
名前は得意の歩法と白打をメインとした戦い方で、始解も殆ど使わずに隊員達を圧倒的した。観戦していた弓親と一角は名前の戦闘を見て、体調は万全だと確信した。
「これは名前ちゃんの勝利確定かな。」
「まだアイツが残ってんだろうが。」
挑戦者最後の一人が名前の前に立ちはだかった。
「第八席、譲原研冶 !苗字七席に決闘を挑む!」
「私がいない間に昇格したのね。」
以前名前と戦った時は九席だった譲原は努力を続けていたようだった
「行きます。咬み千切れ、暴荒鮫 !」
譲原は早速始解し、魚雷のような斬魄刀で名前に襲い掛かった。名前は歩法を駆使して距離を取る。
(この斬魄刀は直線移動だと速いが、急な動きには対応出来ない。)
暴荒鮫の後ろに回れば時間が稼げる。それを予測していた譲原は名前が移動した先で待ち構えていた。譲原はいつの間にか斬魄刀を元の刀身に戻しており、名前に斬りかかった。咄嗟に腕で庇った為、そこから出血した。
「……っ!」
名前の返り血を浴びた譲原は気にする事なく、次の攻撃を繰り出してくる。名前は始解し、刃の糸を譲原に向けて放った。譲原はその糸を斬り落とし、突き進んで来る。名前は瞬歩で譲原の間合いに入り、白打で応戦した。
「すげぇ…譲原のやつ、苗字七席と対等にやり合ってる…。」
激しい肉弾戦に、見ていた隊員達にも緊張が走る。
(まずいな…蓄積されてきている。)
名前は自身の体内に毒成分が蓄積されてきている感覚を覚えた。これで七戦目という事もあり、何処かで排出しなければ体が言う事を聞かなくなってくる。二人が距離を取ったタイミングで譲原が再び始解した。名前はこのチャンスを逃さなかった。暴荒鮫が再び名前に向かって突進してくる。名前は指先から毒を流し込んだ。
毒を織り込んだ糸で暴荒鮫を迎える。糸は切れるが、更に束ねた糸で暴荒鮫を包み込む。今まで激しく動き回っていた暴荒鮫だったが、何やら動きが変だ。
「暴荒鮫!」
譲原は異変を感じたようで、始解を解除した。斬魄刀が地面に落ち、瞬歩で間合いに入った名前は譲原の喉元に斬魄刀を突き付けた。
「っ!!……参りました。」
譲原は観念して、両手を挙げた。
「苗字七席の勝利!よって、苗字名前は六席に昇格!」
隊員達が拍手を送る中、名前は譲原の体に触れた。
「ちょっと見せて。」
「七席、いや六席…如何されましたか?」
譲原は躊躇なく自分の肌に触れる名前に頬を赤らめた。名前は譲原の顔から腕、胸元まで襟を捲ってくまなく状態を確認していく。名前の返り血を浴びた肌はよく見ると赤く炎症を起こしていた。
(やっぱり…。)
生成された毒成分は主に名前の血液中を流れており、休職中に行った実験では彼女の血液に触れた物は組織が破壊される。
戦闘中に名前の返り血を浴びた者は、早急に血を洗い流す必要があるのだ。
「ちょっと来て。洗い流さないと。」
「えっ!?待ってください…!」
何処に行くんだと隊員達の視線を集めながら、名前が連れてきたのは水道の蛇口の前。手拭いを水で濡らし、返り血を浴びた箇所をポンポンと優しく叩いて拭き取る。固まった血を取り除くと、彼の肌は赤くなっていた。
名前は火傷でも使われる塗り薬を患部に塗り付けた。
「あの…六席、これは一体どういう事ですか?」
「はーん、それが"毒"なんだな。」
譲原の問いに被せるように一角が答えた。
「少量だからこれで済んでるけど、もっと名前ちゃんの血を浴びたらタダじゃ済まないって事だね…。」
「えっ…!?」
弓親の推察に譲原は顔を青ざめた。もし目に入れば失明してしまうやもしれない。恐ろしい能力だ。
「最後、彼の暴荒鮫を糸で絡めた時も毒を使ったの?」
弓親の問いに、名前は答えた。
「うん…痺れ毒を使わせて貰った。心配しないで、その毒は私の血より安全だから。斬魄刀の痺れもその内消える。」
「そうですか…。」
譲原は名前の得体の知れない能力に恐怖を感じた。何故そんな能力がこの小柄の女性に与えられているのか?
「顔色悪いけど大丈夫?」
「あ…はい…大丈夫っス。」
「譲原と言ったな。貴方も必然的に七席に昇格する。私が六席に昇格すれば持ち上がりだろう?」
名前の提案にすかさず弓親が口を挟んだ。
「ほんとは改めて七席昇格の決闘をするのがしきたりなんだけどね。」
「さっき皆と戦って分かった。この中だったら、彼が一番強い。やっても同じだと思うけど。」
「俺、しきたりを守って、正々堂々勝負します!」
「偉いぞ、七席を決める決闘は明日だな!」
「はいっ!」
翌日、七席を決める決闘では名前の宣言通り、譲原研冶が七席に就任した。暫く空席の多かった十一番隊だったが、これで四席を除く全ての階級に人員が揃った。
*
「俺と戦えよ!」
名前は一角に詰め寄られていた。決闘の様子を見ていた一角は自身も彼女と戦いたくなったのだ。先に戦いたいと言っていた更木隊長は生憎出かけている。
「いいけど…どうなっても知らないよ?見てたから分かると思うけど、返り血を被ればタダじゃ済まない。」
「戦いで怪我を恐れる奴が、更木隊を名乗れるかよ。」
「それもそうね。」
自分より格上とは言え、まだ毒の制御が万全ではない為、名前は万一の場合に備えて処置が直ぐ出来るよう準備した。ござの上には水を入れたバケツ、救急箱に名前が肌身離さず持っている小物入れ。名前は長椅子に座った弓親に小物入れを手渡した。
「勝手に開けないでね。」
「見られちゃいけないものが入っているのかい?」
「人に見られちゃいけないものは入っていない。ただ、味方であろうと自分の懐を見せる戦士はいないでしょ。」
一角との戦いで小物入れを持ったまま戦闘するのは、危険だと判断した。
何かの拍子に破壊してしまうと、ややこしい事になる。
「分かったよ。」
弓親はニコリと笑い、名前の背中を見送った。
「こうしてお前と刃を交えるのは何度目だろうな?」
「さぁ…数えてもいないわ。」
「ははっ、俺もだ!」
それ程までに刃を交えてきた二人だ。鍛錬を積んだ二人の戦いに、隊員達は興味津々だった。
「最早十一番隊の名物と言っても過言ではない、斑目三席と苗字六席の戦い!久方ぶりに拝見できて嬉しいですぞ。」
盛り上がる隊員達をよそに名前は戦法を巡らせていた。名前が休職していた間にも、一角は鍛錬を積んで強くなっている筈だ。
(一角相手だと、本気になってしまう。毒を制御しきれないかもしれない…。)
排出する事で毒の暴走を抑えることは出来るが、毒の種類や濃度によっては一角の命が危ない。
(って、私は一角の心配してるワケじゃ…。)
決闘とは言え、相手が戦闘不能になれば勝敗が付く。しかし毒は一度曝露すると、抗体や解毒剤が効くまで抑える事は出来ない。
(痺れ毒で一角の動きを鈍らせるか…。)
名前は自分の意志で毒の種類と量を調節する事が出来た。しかし戦闘中は余裕がないので、毒の調整を誤る可能性がある。これは休職中に試す事が出来なかった為、今見定めるしかない。
「作戦を練ってんのか?今までの俺とは違うからよぉ、考えたって無駄だぜ。」
「それはこっちも同じ。覚悟して。」
「勝負、始め!」
開始の合図と共に二人は勢いよく飛び出した。先に攻撃を仕掛けたのは一角だった。自慢の力を全力で名前にぶつける。名前はそれを避け、受け流しながら一角の動きを観察する。無駄な動きが少なくなり、的確に名前に標準を定めて攻撃してきている。以前より速さも増しており、名前は瞬きする事無く目で追った。一度距離を取り、一角が肩を慣らした。
「ここまで一発も食らわない所を見ると、鍛錬をサボってた訳ではなさそうだな。」
「当たり前でしょ。」
ここまで主に一角が攻撃を仕掛け、名前は一角の動きに合わせて様子を見ていた。
「ビビッて攻撃出来ねぇのか?来いよ、俺が受けて立とうじゃねぇか。」
「後悔しないでよね…捕食せよ、皎我蜘蛛。」
名前は始解した。刀身が消え、指先から無数の糸を垂れ流した。
以前は鍔の先から糸を出していたが、修行中に直接指先から糸を生成する事に成功した。一角は気を引き締め、名前に向かって突進した。
「延びろ、鬼灯丸ぅ!」
一角は槍に変化させた斬魄刀で名前に斬りかかる。名前は左手の指先の糸をグッと握り込み、糸を束にして一角の斬撃を受け止めた。そして右指の糸で一角に斬りかかる。一角は即座に体を翻し、迫りくる糸から逃れた。続けざまに三節根にした鬼灯丸で名前に斬りかかった。名前はそれを糸で絡め取り、防いだ。
「まだだぜ。」
一角は斬魄刀を放し、名前に直接蹴りを入れた。彼女は両腕でそれを受け止める。その間に糸に絡まった鬼灯丸を槍の姿に変形させ、握り込んだ。馬鹿力で糸から鬼灯丸を引き抜き、名前に斬りかかる。パパッと血しぶきが飛ぶ。それは一角と名前、双方のものだった。名前は鬼灯丸で斬り裂かれた左肩。一角は糸を引っ張った際に出来た左手の傷口からだった。
「この糸は厄介だな。」
名前は糸を切り落とし、再び新しい糸を生成した。古い糸を払いのけた一角は、飛んできた針に槍を回転させて弾き落とした。
「はっ…毒針ってか?」
「ご名答。」
「食らうかよ。」
毒針は今までなかった技だ。新しい技にも一角は冷静に対処した。針は一本も命中しなかったが、当てる事よりも毒抜きとしての意味合いが強かった。名前は攻撃の合間に毒抜きをしなければならなかったが、それも一つの戦法として利用すればいいのだと思った。様子見していたが、更に強くなった一角に正面から勝つ事は難しい。
(使うか…。)
名前はついに毒を使用する事を決めた。生身の体に毒を使うのは初めてだ。手に汗が滲む。名前は先程とは違う強度の糸を放った。本能的にヤバいと一角は感じ取り、避けた。しかし名前はしつこく一角を追いかけまわし、糸で一角の足を斬りつけた。休む暇も与えず、名前は白打で攻撃する。名前の攻撃に追いついていた一角だったが、暫くして頭で考えている動きに対して足がついていかない事に気が付いた。
「隙あり!」
名前は蹴りを入れ、一角はズザザザァと地面を滑った。砂埃が舞い上がり、一角は「いってぇ」と呟いて上体を起こした。名前は一角の様子を伺う為に攻撃の手を止めた。
(足が痺れる…これがアイツの毒かよ…。)
一角は斬りつけられた傷口から痺れが広がっている事に気が付き、舌打ちした。名前はゆっくり一角が立ち上がる姿を眺めていた。足が痺れている筈だ。一角は先ほどより動きが鈍くなっている。しかし、一角はそれを気にすることなく名前に突っ込んだ。名前は一角の槍を避けながら糸で一角を斬っていく。全身くまなく細かい傷が入り、痺れている筈だが、一角の動きは止まることはない。寧ろ込められる力が強くなっていく。驚く名前の一瞬の隙を付き、一角は彼女の左腕を取った。
「しまった…!」
一角はニヤリと口元を引き上げた。名前の腕から全身を引っ張り上げ、地面に叩き付けた。
「がはっ…!!」
名前は背中を強打し、血を吐いた。痛みでうずくまる名前の姿を見て、一角は「勝負あったな」と笑った。
「まだまだ…。」
「止めとけ。肩か背骨、骨折してるだろ?」
それは名前自身直ぐに分かった。背骨がかなり痛む。相変わらずの馬鹿力で反吐が出る。
「毒、効いてないの?」
「効いてるに決まってんだろうが!ビリビリしていってぇよ!」
確かに痺れ毒を使った筈なのに、まるで効いていない一角を見て名前は驚いた。痺れぐらいでは一角を足止め出来ないのだと思い、彼の強さを知った。勝負は一角に軍配が上がった。一角は満足げな顔で笑い、名前は唇を噛んだ。
「名前、立てるか?結構出血してるな。」
「触らないで。傷口に入ったら、大変な事に…。」
言った傍から一角は名前の左肩の傷口に触れてしまった。右手は無傷だったので大丈夫だと思った一角だったが、本人すら気付かないような小さな傷があったようだ。
「あっち!!!」
「馬鹿!」
とても少量だったがそれは傷口から入り込み、硝酸の如く熱さを放った。
指先から肌が赤黒く染まってくる。
「弓親!預けた物、持ってきて!」
弓親は瞬歩で二人の元に駆け寄った。名前は背中の痛みを堪えながら、小物入れを開いた。中には注射器が何本も入っている。
「消毒してくれる?」
弓親に指示し、アルコールを染み込ませた脱脂綿で肘の内側、肘窩 を拭く。
「お前の毒…想像よりやべぇじゃねぇか。」
「だから言ったでしょ。」
名前は手際よく一角の脈を探し当て、血管に注射した。
「弓親、暫く此処を抑えておいて。あと、この薬を一角の足に塗っといて。」
注射を打った箇所から赤黒くなった皮膚は色を取り戻していった。名前の毒の効果と、処置の手際の良さに驚きを隠せない一角と弓親。名前は器具を片付け、救護詰所に行く準備を始めた。
「姐さん!」
担架を持って近付いてきたのは譲原だった。
「どうやって処置すればいいですか?歩けますか?」
「手袋嵌めてから触ってくれる?歩けるから、取りあえず担架は大丈夫。」
「了解です。」
*
四番隊救護詰所に来た一角と名前は処置を受けた。一角は名前の応急処置が早かった為、大事には至らなかった。名前も背中の打撲、背骨にひび、左肩の裂傷で怪我は大きかったが、回道により傷は大幅に回復した。
「名前、手当は終わったか?」
「うん。一角も状態が良さそうで、安心した。」
名前は勝負の結果より、毒の影響が出ていないか気にしているようだった。勝負では勝ったものの、一角は素直に喜べない複雑な心境だった。
「十一番隊に戻ろうぜ。」
「私は卯ノ花隊長に用事があるから、一角は先に戻ってて。」
「…おう。」
帰路の途中、一人で歩く一角は深く考え込んでいた。名前がとんでもなく強い存在になったと感じていた。少量でも彼女の血が体内に入ると、そこから爆発的に浸食してくる。もし名前が本気になったら、簡単に命を奪う事が出来るという事実。それは実力云々の話ではない。昔「お前を絶対殺してやる!」と言い放った名前の言葉が思い起こされた。今復讐されたら、確実に殺られるだろう…しかし、アイツは真っ当な性格をしている故に卑怯な手は使わない筈だ。しかし、それが逆に一角の気持ちを燻らせた。
(アイツは、俺を殺さないように手加減して戦ったんだ…。)
剣八の顔を思い浮かべ、一角は唇を噛みしめた。一角は時折、剣八に手合わせをお願いする事があった。剣八は毎回一角の実力に合わせて戦っていた。
「手加減せずに戦ってくれ」と一角が頼むと、剣八は「俺は手加減なんてしねぇ」と言った。
しかし、隊長クラスと戦う時の戦闘力と、自身が相手になる時とでは明らかに剣八の霊圧は違っていた。一角は無意識に隊長に気を遣わせてしまっている、己の未熟さに苛立ちを覚えた。そして、更に格下である名前にさえ手加減して相手された事に一角は強い苛立ちを感じていた。
(俺が弱ぇから…アイツは手加減したんだ。)
力や経験では一角が勝っていたが、名前は斬拳走鬼全て扱える上に、毒まで使える特異体質。分かる奴からすれば、名前の方が有能だという事は一目瞭然だ。
(もっと、もっと強くならねぇと…隊長や名前に劣らないように、もっと強く…!)
一角は右手の拳を強く握った。
*
名前は卯ノ花烈に指示され、採血を行った。戦闘直後で未発見の成分が見つかるかもしれない。
「そうですか…。貴方の毒は想像以上に強力ですね。」
先程の戦闘で初めて人体に毒を使用した事と経緯、結果を卯ノ花に伝えた。
「平常時に採血した血液では有毒成分は検出されないのですが、戦闘時になると様々な毒成分が生成されるんです。」
今見つかっている毒は三種類だが、名前の血液からはまだ検出されていない毒成分が出て来るだろう。
「戦闘時にだけ…と言うのが不可解ですね。運動した時などには見られないと言うのが矛盾していますね。」
休職中に激しい運動をした場合や食後、様々なタイミングで採血をして成分を分析した。しかし、毒が如実に検出されるのは戦闘時だけなのだ。
「更木隊長が…私と戦いたいと仰っています。ですが、隊長と戦えば毒を制御出来なくなると思います。そんな状態でもし、隊長を曝露させてしまったら…。」
剣八と戦うとなると、今日以上に戦闘は激しくなる。そうなると必然的に毒の生成も多くなる事は分かり切っていた。まだ見つかっていない毒をもし剣八に曝露させてしまった場合、解毒剤が無い為に最悪命の危機に瀕する。
「大丈夫です、更木隊長は絶対に死なせはしません!」
卯ノ花隊長は極めて凛とした声で言い放った。
「彼がどんな状態になっても、この私が必ず救い出します。なので、貴方は更木隊長を信じて本気を出して戦いなさい。彼なら、貴方の力を存分に引き出してくれるでしょう。」
名前は卯ノ花隊長の力強い言葉に後押しされた気分だった。たった少量の毒で一角が危うい状態になり、名前は内心とても焦った。今後毒を使った事によって死者が出てしまう可能性があれば、自分は死神ではいられなくなる。
「自分の力を扱えるようにする…これも修行の一つです。幸い、瀞霊廷にはあなたの毒を解析・解毒する設備もありますし、不測の事態にも対応できるように私が手配しておきます。」
「私のせいで…多くの方にご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございません。」
「あら、そんな事を思える程に貴方は優しいのですね。心配には及びません。これまで、護廷十三隊には様々な人達がいましたから。」
名前は自身の体を解析していく中で、何の為に毒を生成する能力が備わっているのか自問自答していた。卯ノ花に相談すると「人はそれぞれ役割を持って生まれてきます」と諭した。答えを見つけるために私たちは様々な事に取り組み、生きているのだと教えられた。卯ノ花は名前を気にかけてくれる、数少ない内の一人だった。名前は卯ノ花隊長に感謝していた。
いつか、この能力を持った理由が明らかになる日が来るだろう。その日を信じて、今は自己解析の為に精進しようと名前は思った。
.
(と言うか、一角は芽瑠ちゃんの気持ちに気付いてるのかな…?)
あれだけ一角に気持ちを伝えているのだから、好意がある事は分かっているだろうに。芽瑠がやちるの写真を撮りに行き、姿が無くなったのを確認して弓親は一角に近付いた。
「芽瑠ちゃん、すごくいい子だと思わない?」
「あぁ、そうだな。気が利くし、優しいだけじゃなくて、相手が男だろうが言う時はハッキリ言うしな。」
「好きな子とかいるんじゃない?」
「あーいるかもしれねぇな…こんな出来のいい女に惚れられるなんて羨ましいぜ…。」
(えぇっ!?気付いてないの…!?)
一角の言葉を聞き、弓親は驚愕した。芽瑠の好意は一ミリも一角には届いていないのだ。
(鈍感にも程があるでしょ…ま、いいや。僕が口を出す事じゃないし。)
弓親は芽瑠の恋路を見守ることにした。
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流魂街———...
久枝の家から人里へ降りてきた名前。山で採れた山菜を売りに商店がある地区まで瞬歩を使って走って来た。山菜を売り、再び久枝の家に帰ろうとした名前は書店の陳列棚が目に入った。そこには瀞霊廷通信が並べられてあり、表紙にはでかでかと『十三隊最強、十一番隊特集!』とタイトルが打ち出されていた。気になった名前は瀞霊廷通信を購入して帰宅した。その夜、名前は購入した雑誌を開いた。
紹介文と共に、十一番隊の日常風景が写されている。どの写真も隊員皆がとてもいい表情をしていた。八番隊との対決の様子も載っており、名前は変わらぬ十一番隊の様子に笑みを浮かべた。
(みんな相変わらずね…私も頑張らなきゃ。)
***
『貴方は他の人には作れない成分を生成する事が出来る、特異体質です』
そう診断されてから三年の時が経った。名前は自身の体と向き合い、体質を理解して薬学の知識を深めた。瀞霊廷の医学部にも協力してもらい、体内にある成分が人体に影響を及ぼす毒である事が判明した。毒の生成を抑える方法を模索していたが、排出する以外に手立てが見つからなかった。死神が霊圧を自在に操るように、全身に回っていた毒を制御出来るようになるまで、かなりの努力を要した。様々なパターンを試したが、一番簡単に毒を排出する方法は斬魄刀始解時。他にも名前の体液から毒を排出する事は出来たが、量的にも操る事が難しい。名前の斬魄刀、皎我蜘蛛は糸状の刃を自在に操る事が出来る。指先から霊圧を流す要領で糸に毒を付着させ、体内の毒を排出することが出来た。この方法を見つけてから毒成分の解析は飛躍的に進んだ。解毒薬も出来上がっている。
名前は時折瀞霊廷を行き来し、着実に復帰の道を歩んでいた。
(あともう少し…。)
名前は自室にある三本の毒が入った瓶を見つめた。神経毒と呼ばれる痺れ毒、麻痺毒。もう一つは体にダメージを与え、体力を奪う危ない毒…これは取り扱いに気を付けなければならない。今見つかっている毒成分は三種類…しかし今後も新たな毒が見つかりそうな予感がしていた。復職したら更に研究を進めなければならない。今日も名前は鍛錬に励んだ。
***
「失礼します!!!」
勢いよく十一番隊の隊舎に入ってきたのは、六番隊に異動した阿散井恋次だった。左腕には副官章が輝いている。恋次は六番隊副隊長就任挨拶の為に十一番隊を訪問したのだった。
「おう、話は聞いてるぜ!」
「副隊長就任おめでとう。」
一角と弓親は笑顔で恋次を祝福した。他の十一番隊隊員も「立派になったなぁ」と感慨深そうに恋次の姿を眺めていた。
「更木隊長、ご無沙汰しております!」
「おう…副隊長になったんだってな。見違えたじゃねぇか。」
「ありがとうございます!」
十一番隊では六席だった恋次だが、今や六番隊の二番手。同じく十一番隊の副隊長であるやちるは、勢いよく恋次の肩に飛び乗った。
「あたしといっしょー!」
「副隊長になったなんて、俺…まだ正直、実感湧かないっス。」
副隊長に任命されたのが今日の午前。恋次は左腕に装着した副官章の着け心地に慣れずにいた。
「俺も早く鉄さんみたい、隊を引っ張っていく立派な副隊長になりたいです!」
十一番隊に在籍していた射場鉄左衛門は、七番隊に異動してから程なくして副隊長に就任した。彼の器量の良さが伺える。異動に反対していた一角さえも、いざ鉄左衛門が副隊長に就任したと聞くと大いに喜んだ。
「鉄さんだったら色々教えてくれるだろうさ。チビじゃなんにも参考にならねぇからな。」
「うるさい、パチンコ玉!」
やちるは一角に唾を吐きかけ、一角はブチ切れた。
「このチビがああぁ!!!」
「いーだ!」
やちると一角の追いかけっこが始まり、ドタバタと室内が騒がしくなった。恋次はふと名前の事を思い出した。
「そう言えば、名前の奴はまだ休職してるんスか?」
「あぁ、名前ちゃんなんだけどね、もうすぐ戻って来るよ。こないだ通告があったんだ。」
「俺が副隊長になったって聞いたら、驚くだろうな。」
やちるの頬をつねる一角は恋次に声を掛けた。
「恋次!お前が副隊長に相応しい実力かどうか、俺が今から確かめてやるぜ。」
「望むところっスよ、一角さん!」
***
一角は毎日のように鍛錬に取り組んでいた。弓親や恋次…隊長にも頭を下げて手合わせをして確実に力を付けていた。身近にいる仲間達が切磋琢磨して強くなろうとしている姿を見て、自分も立ち止まっているわけにはいかない。
「……。」
地面に刺した鬼灯丸を見つめ、一角は斬魄刀との対話に臨んでいた。鬼灯丸は他の斬魄刀と違い二つの始解、形状変化が可能。それは一角が鬼灯丸と共に修行を重ね、会得した賜物である。一角は更にその上の段階に足を踏み入れようとしていた。
『よう…相棒』
「用件は分かってんだろ、さっさと始めるぞ。」
『そう慌てんな…ようやく更木剣八を倒す気になって俺は、感心してるんだぜ?』
「余計な御託を並べるんじゃねぇよ。」
鬼灯丸は誰よりも傍で一角を見ている存在。自我を持っている為、自分とは意見が異なる時もある。その時は実力を見せて分からせてやらなければならない。
『あの男に倒されてから、お前は変わっちまった…本気で戦う事を忘れたお前に、力を貸してやる気はねぇ』
今も鬼灯丸は一角の意志に反して好き勝手に喋っているが、一角はそれを無視した。
「そうかよ…だが俺は力ずくで、てめぇの力を引き出すぜ。」
『やれるもんならやってみな』
「行くぜぇ!!!」
***
復帰日当日。
名前は体調を万全に整え、十一番隊の門をくぐった。隊員達は笑顔で名前を迎え入れてくれた。
「苗字名前、戻って参りました。」
更木剣八の前で足を付く名前。剣八は「もういいのか」と尋ねた。
「はい、自身の体質を理解し、対処方法も見つけました。万全です。」
同じ室内にいた一角は鼻で笑った。
「名前、俺知ってんだぜ?お前がちょくちょくこっち(瀞霊廷)に戻ってきてんの。顔ぐらい出せば良かったじゃねぇか。」
愛想がねぇな、と言われた名前は「休職している身分で、図々しいでしょ」と答えた。
「四番隊に出入りしてたのは体調管理の為?」
「そうよ。」
今度は弓親に尋ねられ、名前はこれまでの経緯を端的に説明した。
「そういやお前、毒キノコ食ってもなんともなかったもんな!」
「毒を生成する、特異体質ねぇ…それって結構大変なんじゃないかい?」
「大変なんてものじゃない、かなり苦労した…特に戦闘中に過剰分泌されるから排出しないと全身に回って、前みたいに卒倒してしまう。」
「はっ…面白そうじゃねぇか。苗字、俺と勝負しろ!」
「更木隊長…!」
名前は隊長の提案に驚きつつも、更木隊長なら自身の新たな毒の発見が出来るやもしれないと期待した。
「隊長、名前ちゃんと手合わせしたい気持ちはやまやまですが、先ずは昇進の話が先じゃないですか?」
「あぁん!?」
弓親は名前に向き直り説明した。
「名前ちゃんが休職している間に恋次が六番隊に異動したのは知ってるね?」
「うん。副隊長に就任したのよね。」
「それでね、恋次がいた六席が空席の状態なんだ。名前ちゃんが休職してたから昇格試験が出来なくてね。悪いけど、そっちを最優先にしてもらえるかな?」
『苗字七席、お願いしまーす!』
突如部屋に響いた隊員達の声。扉の前では隊員達が名前に笑顔を向けていた。つまり、以前と同様に昇格を望む隊員達の決闘に挑まなければならないという事だ。
「挑んで来る隊員、全員に勝てば名前ちゃんは六席に昇格。」
「分かった。早速始めよう。」
*
十一番隊裏にある修練場では名前に決闘を挑んだ隊員達が横たわっていた。
「相変らずつえぇ…寧ろ、強くなっている…。」
名前は得意の歩法と白打をメインとした戦い方で、始解も殆ど使わずに隊員達を圧倒的した。観戦していた弓親と一角は名前の戦闘を見て、体調は万全だと確信した。
「これは名前ちゃんの勝利確定かな。」
「まだアイツが残ってんだろうが。」
挑戦者最後の一人が名前の前に立ちはだかった。
「第八席、
「私がいない間に昇格したのね。」
以前名前と戦った時は九席だった譲原は努力を続けていたようだった
「行きます。咬み千切れ、
譲原は早速始解し、魚雷のような斬魄刀で名前に襲い掛かった。名前は歩法を駆使して距離を取る。
(この斬魄刀は直線移動だと速いが、急な動きには対応出来ない。)
暴荒鮫の後ろに回れば時間が稼げる。それを予測していた譲原は名前が移動した先で待ち構えていた。譲原はいつの間にか斬魄刀を元の刀身に戻しており、名前に斬りかかった。咄嗟に腕で庇った為、そこから出血した。
「……っ!」
名前の返り血を浴びた譲原は気にする事なく、次の攻撃を繰り出してくる。名前は始解し、刃の糸を譲原に向けて放った。譲原はその糸を斬り落とし、突き進んで来る。名前は瞬歩で譲原の間合いに入り、白打で応戦した。
「すげぇ…譲原のやつ、苗字七席と対等にやり合ってる…。」
激しい肉弾戦に、見ていた隊員達にも緊張が走る。
(まずいな…蓄積されてきている。)
名前は自身の体内に毒成分が蓄積されてきている感覚を覚えた。これで七戦目という事もあり、何処かで排出しなければ体が言う事を聞かなくなってくる。二人が距離を取ったタイミングで譲原が再び始解した。名前はこのチャンスを逃さなかった。暴荒鮫が再び名前に向かって突進してくる。名前は指先から毒を流し込んだ。
毒を織り込んだ糸で暴荒鮫を迎える。糸は切れるが、更に束ねた糸で暴荒鮫を包み込む。今まで激しく動き回っていた暴荒鮫だったが、何やら動きが変だ。
「暴荒鮫!」
譲原は異変を感じたようで、始解を解除した。斬魄刀が地面に落ち、瞬歩で間合いに入った名前は譲原の喉元に斬魄刀を突き付けた。
「っ!!……参りました。」
譲原は観念して、両手を挙げた。
「苗字七席の勝利!よって、苗字名前は六席に昇格!」
隊員達が拍手を送る中、名前は譲原の体に触れた。
「ちょっと見せて。」
「七席、いや六席…如何されましたか?」
譲原は躊躇なく自分の肌に触れる名前に頬を赤らめた。名前は譲原の顔から腕、胸元まで襟を捲ってくまなく状態を確認していく。名前の返り血を浴びた肌はよく見ると赤く炎症を起こしていた。
(やっぱり…。)
生成された毒成分は主に名前の血液中を流れており、休職中に行った実験では彼女の血液に触れた物は組織が破壊される。
戦闘中に名前の返り血を浴びた者は、早急に血を洗い流す必要があるのだ。
「ちょっと来て。洗い流さないと。」
「えっ!?待ってください…!」
何処に行くんだと隊員達の視線を集めながら、名前が連れてきたのは水道の蛇口の前。手拭いを水で濡らし、返り血を浴びた箇所をポンポンと優しく叩いて拭き取る。固まった血を取り除くと、彼の肌は赤くなっていた。
名前は火傷でも使われる塗り薬を患部に塗り付けた。
「あの…六席、これは一体どういう事ですか?」
「はーん、それが"毒"なんだな。」
譲原の問いに被せるように一角が答えた。
「少量だからこれで済んでるけど、もっと名前ちゃんの血を浴びたらタダじゃ済まないって事だね…。」
「えっ…!?」
弓親の推察に譲原は顔を青ざめた。もし目に入れば失明してしまうやもしれない。恐ろしい能力だ。
「最後、彼の暴荒鮫を糸で絡めた時も毒を使ったの?」
弓親の問いに、名前は答えた。
「うん…痺れ毒を使わせて貰った。心配しないで、その毒は私の血より安全だから。斬魄刀の痺れもその内消える。」
「そうですか…。」
譲原は名前の得体の知れない能力に恐怖を感じた。何故そんな能力がこの小柄の女性に与えられているのか?
「顔色悪いけど大丈夫?」
「あ…はい…大丈夫っス。」
「譲原と言ったな。貴方も必然的に七席に昇格する。私が六席に昇格すれば持ち上がりだろう?」
名前の提案にすかさず弓親が口を挟んだ。
「ほんとは改めて七席昇格の決闘をするのがしきたりなんだけどね。」
「さっき皆と戦って分かった。この中だったら、彼が一番強い。やっても同じだと思うけど。」
「俺、しきたりを守って、正々堂々勝負します!」
「偉いぞ、七席を決める決闘は明日だな!」
「はいっ!」
翌日、七席を決める決闘では名前の宣言通り、譲原研冶が七席に就任した。暫く空席の多かった十一番隊だったが、これで四席を除く全ての階級に人員が揃った。
*
「俺と戦えよ!」
名前は一角に詰め寄られていた。決闘の様子を見ていた一角は自身も彼女と戦いたくなったのだ。先に戦いたいと言っていた更木隊長は生憎出かけている。
「いいけど…どうなっても知らないよ?見てたから分かると思うけど、返り血を被ればタダじゃ済まない。」
「戦いで怪我を恐れる奴が、更木隊を名乗れるかよ。」
「それもそうね。」
自分より格上とは言え、まだ毒の制御が万全ではない為、名前は万一の場合に備えて処置が直ぐ出来るよう準備した。ござの上には水を入れたバケツ、救急箱に名前が肌身離さず持っている小物入れ。名前は長椅子に座った弓親に小物入れを手渡した。
「勝手に開けないでね。」
「見られちゃいけないものが入っているのかい?」
「人に見られちゃいけないものは入っていない。ただ、味方であろうと自分の懐を見せる戦士はいないでしょ。」
一角との戦いで小物入れを持ったまま戦闘するのは、危険だと判断した。
何かの拍子に破壊してしまうと、ややこしい事になる。
「分かったよ。」
弓親はニコリと笑い、名前の背中を見送った。
「こうしてお前と刃を交えるのは何度目だろうな?」
「さぁ…数えてもいないわ。」
「ははっ、俺もだ!」
それ程までに刃を交えてきた二人だ。鍛錬を積んだ二人の戦いに、隊員達は興味津々だった。
「最早十一番隊の名物と言っても過言ではない、斑目三席と苗字六席の戦い!久方ぶりに拝見できて嬉しいですぞ。」
盛り上がる隊員達をよそに名前は戦法を巡らせていた。名前が休職していた間にも、一角は鍛錬を積んで強くなっている筈だ。
(一角相手だと、本気になってしまう。毒を制御しきれないかもしれない…。)
排出する事で毒の暴走を抑えることは出来るが、毒の種類や濃度によっては一角の命が危ない。
(って、私は一角の心配してるワケじゃ…。)
決闘とは言え、相手が戦闘不能になれば勝敗が付く。しかし毒は一度曝露すると、抗体や解毒剤が効くまで抑える事は出来ない。
(痺れ毒で一角の動きを鈍らせるか…。)
名前は自分の意志で毒の種類と量を調節する事が出来た。しかし戦闘中は余裕がないので、毒の調整を誤る可能性がある。これは休職中に試す事が出来なかった為、今見定めるしかない。
「作戦を練ってんのか?今までの俺とは違うからよぉ、考えたって無駄だぜ。」
「それはこっちも同じ。覚悟して。」
「勝負、始め!」
開始の合図と共に二人は勢いよく飛び出した。先に攻撃を仕掛けたのは一角だった。自慢の力を全力で名前にぶつける。名前はそれを避け、受け流しながら一角の動きを観察する。無駄な動きが少なくなり、的確に名前に標準を定めて攻撃してきている。以前より速さも増しており、名前は瞬きする事無く目で追った。一度距離を取り、一角が肩を慣らした。
「ここまで一発も食らわない所を見ると、鍛錬をサボってた訳ではなさそうだな。」
「当たり前でしょ。」
ここまで主に一角が攻撃を仕掛け、名前は一角の動きに合わせて様子を見ていた。
「ビビッて攻撃出来ねぇのか?来いよ、俺が受けて立とうじゃねぇか。」
「後悔しないでよね…捕食せよ、皎我蜘蛛。」
名前は始解した。刀身が消え、指先から無数の糸を垂れ流した。
以前は鍔の先から糸を出していたが、修行中に直接指先から糸を生成する事に成功した。一角は気を引き締め、名前に向かって突進した。
「延びろ、鬼灯丸ぅ!」
一角は槍に変化させた斬魄刀で名前に斬りかかる。名前は左手の指先の糸をグッと握り込み、糸を束にして一角の斬撃を受け止めた。そして右指の糸で一角に斬りかかる。一角は即座に体を翻し、迫りくる糸から逃れた。続けざまに三節根にした鬼灯丸で名前に斬りかかった。名前はそれを糸で絡め取り、防いだ。
「まだだぜ。」
一角は斬魄刀を放し、名前に直接蹴りを入れた。彼女は両腕でそれを受け止める。その間に糸に絡まった鬼灯丸を槍の姿に変形させ、握り込んだ。馬鹿力で糸から鬼灯丸を引き抜き、名前に斬りかかる。パパッと血しぶきが飛ぶ。それは一角と名前、双方のものだった。名前は鬼灯丸で斬り裂かれた左肩。一角は糸を引っ張った際に出来た左手の傷口からだった。
「この糸は厄介だな。」
名前は糸を切り落とし、再び新しい糸を生成した。古い糸を払いのけた一角は、飛んできた針に槍を回転させて弾き落とした。
「はっ…毒針ってか?」
「ご名答。」
「食らうかよ。」
毒針は今までなかった技だ。新しい技にも一角は冷静に対処した。針は一本も命中しなかったが、当てる事よりも毒抜きとしての意味合いが強かった。名前は攻撃の合間に毒抜きをしなければならなかったが、それも一つの戦法として利用すればいいのだと思った。様子見していたが、更に強くなった一角に正面から勝つ事は難しい。
(使うか…。)
名前はついに毒を使用する事を決めた。生身の体に毒を使うのは初めてだ。手に汗が滲む。名前は先程とは違う強度の糸を放った。本能的にヤバいと一角は感じ取り、避けた。しかし名前はしつこく一角を追いかけまわし、糸で一角の足を斬りつけた。休む暇も与えず、名前は白打で攻撃する。名前の攻撃に追いついていた一角だったが、暫くして頭で考えている動きに対して足がついていかない事に気が付いた。
「隙あり!」
名前は蹴りを入れ、一角はズザザザァと地面を滑った。砂埃が舞い上がり、一角は「いってぇ」と呟いて上体を起こした。名前は一角の様子を伺う為に攻撃の手を止めた。
(足が痺れる…これがアイツの毒かよ…。)
一角は斬りつけられた傷口から痺れが広がっている事に気が付き、舌打ちした。名前はゆっくり一角が立ち上がる姿を眺めていた。足が痺れている筈だ。一角は先ほどより動きが鈍くなっている。しかし、一角はそれを気にすることなく名前に突っ込んだ。名前は一角の槍を避けながら糸で一角を斬っていく。全身くまなく細かい傷が入り、痺れている筈だが、一角の動きは止まることはない。寧ろ込められる力が強くなっていく。驚く名前の一瞬の隙を付き、一角は彼女の左腕を取った。
「しまった…!」
一角はニヤリと口元を引き上げた。名前の腕から全身を引っ張り上げ、地面に叩き付けた。
「がはっ…!!」
名前は背中を強打し、血を吐いた。痛みでうずくまる名前の姿を見て、一角は「勝負あったな」と笑った。
「まだまだ…。」
「止めとけ。肩か背骨、骨折してるだろ?」
それは名前自身直ぐに分かった。背骨がかなり痛む。相変わらずの馬鹿力で反吐が出る。
「毒、効いてないの?」
「効いてるに決まってんだろうが!ビリビリしていってぇよ!」
確かに痺れ毒を使った筈なのに、まるで効いていない一角を見て名前は驚いた。痺れぐらいでは一角を足止め出来ないのだと思い、彼の強さを知った。勝負は一角に軍配が上がった。一角は満足げな顔で笑い、名前は唇を噛んだ。
「名前、立てるか?結構出血してるな。」
「触らないで。傷口に入ったら、大変な事に…。」
言った傍から一角は名前の左肩の傷口に触れてしまった。右手は無傷だったので大丈夫だと思った一角だったが、本人すら気付かないような小さな傷があったようだ。
「あっち!!!」
「馬鹿!」
とても少量だったがそれは傷口から入り込み、硝酸の如く熱さを放った。
指先から肌が赤黒く染まってくる。
「弓親!預けた物、持ってきて!」
弓親は瞬歩で二人の元に駆け寄った。名前は背中の痛みを堪えながら、小物入れを開いた。中には注射器が何本も入っている。
「消毒してくれる?」
弓親に指示し、アルコールを染み込ませた脱脂綿で肘の内側、
「お前の毒…想像よりやべぇじゃねぇか。」
「だから言ったでしょ。」
名前は手際よく一角の脈を探し当て、血管に注射した。
「弓親、暫く此処を抑えておいて。あと、この薬を一角の足に塗っといて。」
注射を打った箇所から赤黒くなった皮膚は色を取り戻していった。名前の毒の効果と、処置の手際の良さに驚きを隠せない一角と弓親。名前は器具を片付け、救護詰所に行く準備を始めた。
「姐さん!」
担架を持って近付いてきたのは譲原だった。
「どうやって処置すればいいですか?歩けますか?」
「手袋嵌めてから触ってくれる?歩けるから、取りあえず担架は大丈夫。」
「了解です。」
*
四番隊救護詰所に来た一角と名前は処置を受けた。一角は名前の応急処置が早かった為、大事には至らなかった。名前も背中の打撲、背骨にひび、左肩の裂傷で怪我は大きかったが、回道により傷は大幅に回復した。
「名前、手当は終わったか?」
「うん。一角も状態が良さそうで、安心した。」
名前は勝負の結果より、毒の影響が出ていないか気にしているようだった。勝負では勝ったものの、一角は素直に喜べない複雑な心境だった。
「十一番隊に戻ろうぜ。」
「私は卯ノ花隊長に用事があるから、一角は先に戻ってて。」
「…おう。」
帰路の途中、一人で歩く一角は深く考え込んでいた。名前がとんでもなく強い存在になったと感じていた。少量でも彼女の血が体内に入ると、そこから爆発的に浸食してくる。もし名前が本気になったら、簡単に命を奪う事が出来るという事実。それは実力云々の話ではない。昔「お前を絶対殺してやる!」と言い放った名前の言葉が思い起こされた。今復讐されたら、確実に殺られるだろう…しかし、アイツは真っ当な性格をしている故に卑怯な手は使わない筈だ。しかし、それが逆に一角の気持ちを燻らせた。
(アイツは、俺を殺さないように手加減して戦ったんだ…。)
剣八の顔を思い浮かべ、一角は唇を噛みしめた。一角は時折、剣八に手合わせをお願いする事があった。剣八は毎回一角の実力に合わせて戦っていた。
「手加減せずに戦ってくれ」と一角が頼むと、剣八は「俺は手加減なんてしねぇ」と言った。
しかし、隊長クラスと戦う時の戦闘力と、自身が相手になる時とでは明らかに剣八の霊圧は違っていた。一角は無意識に隊長に気を遣わせてしまっている、己の未熟さに苛立ちを覚えた。そして、更に格下である名前にさえ手加減して相手された事に一角は強い苛立ちを感じていた。
(俺が弱ぇから…アイツは手加減したんだ。)
力や経験では一角が勝っていたが、名前は斬拳走鬼全て扱える上に、毒まで使える特異体質。分かる奴からすれば、名前の方が有能だという事は一目瞭然だ。
(もっと、もっと強くならねぇと…隊長や名前に劣らないように、もっと強く…!)
一角は右手の拳を強く握った。
*
名前は卯ノ花烈に指示され、採血を行った。戦闘直後で未発見の成分が見つかるかもしれない。
「そうですか…。貴方の毒は想像以上に強力ですね。」
先程の戦闘で初めて人体に毒を使用した事と経緯、結果を卯ノ花に伝えた。
「平常時に採血した血液では有毒成分は検出されないのですが、戦闘時になると様々な毒成分が生成されるんです。」
今見つかっている毒は三種類だが、名前の血液からはまだ検出されていない毒成分が出て来るだろう。
「戦闘時にだけ…と言うのが不可解ですね。運動した時などには見られないと言うのが矛盾していますね。」
休職中に激しい運動をした場合や食後、様々なタイミングで採血をして成分を分析した。しかし、毒が如実に検出されるのは戦闘時だけなのだ。
「更木隊長が…私と戦いたいと仰っています。ですが、隊長と戦えば毒を制御出来なくなると思います。そんな状態でもし、隊長を曝露させてしまったら…。」
剣八と戦うとなると、今日以上に戦闘は激しくなる。そうなると必然的に毒の生成も多くなる事は分かり切っていた。まだ見つかっていない毒をもし剣八に曝露させてしまった場合、解毒剤が無い為に最悪命の危機に瀕する。
「大丈夫です、更木隊長は絶対に死なせはしません!」
卯ノ花隊長は極めて凛とした声で言い放った。
「彼がどんな状態になっても、この私が必ず救い出します。なので、貴方は更木隊長を信じて本気を出して戦いなさい。彼なら、貴方の力を存分に引き出してくれるでしょう。」
名前は卯ノ花隊長の力強い言葉に後押しされた気分だった。たった少量の毒で一角が危うい状態になり、名前は内心とても焦った。今後毒を使った事によって死者が出てしまう可能性があれば、自分は死神ではいられなくなる。
「自分の力を扱えるようにする…これも修行の一つです。幸い、瀞霊廷にはあなたの毒を解析・解毒する設備もありますし、不測の事態にも対応できるように私が手配しておきます。」
「私のせいで…多くの方にご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございません。」
「あら、そんな事を思える程に貴方は優しいのですね。心配には及びません。これまで、護廷十三隊には様々な人達がいましたから。」
名前は自身の体を解析していく中で、何の為に毒を生成する能力が備わっているのか自問自答していた。卯ノ花に相談すると「人はそれぞれ役割を持って生まれてきます」と諭した。答えを見つけるために私たちは様々な事に取り組み、生きているのだと教えられた。卯ノ花は名前を気にかけてくれる、数少ない内の一人だった。名前は卯ノ花隊長に感謝していた。
いつか、この能力を持った理由が明らかになる日が来るだろう。その日を信じて、今は自己解析の為に精進しようと名前は思った。
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