Kirby
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世界を征服出来るチカラを一瞬で得ることが出来ると言ったらどうする?
そう言うと彼は酷くイヤそうな顔をした。続けて、一緒に世界征服しない?と誘うと更に顔を歪めた。何だその顔は、初めて見るぞ。私が冬の湖に泳ぎに行ったのを知ったときだってそんな顔はしなかっただろ。
いや……してたっけ?してたかも。そんな事を話したのも、随分前だから、忘れてしまったが。
時折、水中を泳ぐ魚になりたいと思う。悠々と青に溶ける姿が他の何にも縛られていない、本当の自由の形に見えるから。今日もそうだった。もっとちゃんと素直に思ったことを自由に言えばいいのに。答えを聞くのが怖くって言えなかった。聞きたかったのはこれから先私と一緒にいてくれる時間がどれ程あるのかという単純で面倒なこと。
聞こうと思ったキッカケは私と話す時間が減ったとか、たくさんのワドルディたちやカービィたちと過ごしているときが一番自然体に見えるとか色々あるが、最終的な決定打となったのはバディファイターズタワーでの一幕だろう。
ついさっきのイヤそうな顔を思い出してしまって、思わずへこむ。そりゃ、デデデが世界征服だの支配だのに興味がないのはわかる。(自称ではあるが)既にプププランドの大王だし。でも、あんな顔しなくたっていいじゃん。
メタナイトのときは一緒に堕ちていったのに私とは嫌なんだ。ひどい人。足元の小石を蹴っ飛ばすと、背の高い草むらに隠れて消えた。
分かっている。アレは仮面を割られたメタナイトに対する彼の思いやりなのだ。まさか、好きで暴走した訳ではあるまい。メタナイトだって私がデデデとの関係に嫉妬していると知ったらイヤな顔をするだろう。その顔のまま、“私とデデデ大王は変に詮索される間柄では断じてない。断じて、だ。”とでも言いそうだ。でもズルいものはズルい。二人とも、とっても仲良しさんじゃん。どんどん高く、多く茂ってきた草木を掻き分け歩みを進める。
悲しいことに私、ナマエはデデデ城に住んでいることもなく、また彼の好敵手でもない。特別な繋がりというものを全く持っていないただの友人である。もしかしたら友人ですら無いのかもしれない。ここまで長々と語ったが、つまるところ私は寂しいのだ。
ひたすら動かしていた足を止めたのはくらやみ森の奥深く。くらやみ森といえばその広さと魔境とも呼ばれる危険性によって全貌はそこまで解明されていない、プププランドにある古い森だ。巷じゃスターダストの実ばかり注目されがちだが、他にも不思議なチカラを秘めた杖の伝説がある。図書館の奥で見つけた古代文字で書かれた古書によるとこの辺りのはずだ。
これから引き起こす自体は私の個人的な嫉妬による癇癪であり、ヒステリックである。身勝手で結構。全部デデデが悪い。胸を巡る少しの罪悪感に目を瞑って私は杖に手を出した。
……手にする直前まで、子供の頃の様な、なんでもできる万能感を手に入れる期待していたのだが、真っ先に脳を支配したのはとんでもない恐怖であった。先ほどまで何とも思っていなかった揺れる草木や頬を撫でる風、それを映す影でさえも、己に害をなそうとしているように思える。気が付けば周りは皆敵ばかり。私はどうしようもなく怖くなって手に持ったその杖を振り回した。
やめて、やめて!私に近づかないで!私を、傷付けないで!ただただ、恐怖だけが私を支配していた。何が起こっているのか分からず、また、自分が見ているものが現実の物なのかも判別つかなくなってきた。飛び出してくる影を手当たり次第に殴りつける。とにかく自分が傷つけられる前に倒さなきゃ、と思ったのだ。そういうことを繰り返した後、もはや自身の意思でそうしているのかも何もかも分からず、気付けばいつの間にか意識も手放した。
手放したはずなのだが。夢か現か、真っ暗な闇の中で、やたら聞き覚えのあるどら声が聞こえた気がした。
「ばかもの!まさかとは思ったが本当にやるとは……お前、何を考えとる!」
「デデデ……?」
意識を取り戻したときには何故だがずぶ濡れであった。ボヤけた視界がクリアになって、私を助けたのだろうデデデの姿が見えたときに感じたのは安心ではなく、ああ、ダメだったんだという落胆だった。トクベツになれないのなら、せめて全部壊して彼の心の傷になれたならと思ったんだけど。それもどうやら失敗に終わったらしい。
未だ怒り心頭の彼の話によると伝説の杖とは単にチカラを与える物ではなく、使用者の恐怖を引き出し攻撃的にする道具だったらしい。
今朝の私の変な質問を受けたデデデは不審に思って、城に来る前に私が寄っていた図書館に向かい、司書から私が使っていたテーブルを教えてもらう。開きっぱなしにされた本を部下のワドルディに翻訳させるとくらやみ森へ私を探しに出掛けた。見つけたときには既に会話が通じる様子ではなく、攻撃するしかなかった。それにより追い詰められた私はなんと、湖に飛び込んだらしい。魚になりたい、と思ったのかもしれなかった。
そうして飛び込んだ私を彼は湖に潜って引っ張り上げたのだろう。お気に入りのガウンはびしょ濡れで、更にどこかに引っ掛けでもしたのか、ところどころ破けてしまっている。恐らく、いや確実に私のせいなのだが、酷いものだなぁと他人事のように思った。
「で?一体何のためにこんな物騒なものを使ったんだ、お前は」
何のため。冷えていた体に追撃で冷水を浴びせられたようだ。世界を征服してみたかったから?本に載っていた伝説が本当か確かめたくて?何と答えよう。どう答えるのが正解なのだろう。どうしたら彼は私を見放さずにいてくれるだろう。思考がぐるぐる巡った。すぐ側の湖が目に入る。魚に、なりたい。
「寂しいなぁ、と思ったから。……多分、構って欲しくて」
言ってしまった。ホントのこと。面倒くさいと思われるかな。そんな事くらいで、と呆れられるかな。デデデは面倒くさがりだからもしかしたら嫌われちゃうかもな。悲しくなって座り込んだまま地面を見つめた。立ち上がる元気は、ない。
「フン、馬鹿のくせに余計な事を考えるんじゃないわい」
ぐるぐる巡る思考を見透かしたように、そうたった一言だけ言うと、私に背を向けてしゃがみ込んだ。思っていたより柔らかい言葉と伴われたその行動の意味が分からず思わず呆然としてしまう。そんな私をデデデはしゃがみ込んだ姿勢のまま胡乱な目で見た。
「……なんだナマエ、まさかまだオレ様が怖いのか」
「そんなことは……ないけれど」
「じゃあ、さっさとしろ。お前、歩けないのだろう」
まさかとは思ったがやはり、乗れということらしい。急かされてしまったのでおずおずと彼の背におぶさる。それを横目で確認した後、デデデはゆっくりと歩きだした。
視線がいつも見ない高さで、静かな夜の空気も相まって落ち着かない。ガウンの白いファーに目が留まる。普段はフワフワのファーが水分を含んでへちょへちょになっていた。それがなんというか、新鮮だったので思わず指でいじってみる。それと同時に彼がため息を吐いて肩を落としたので、もしかして怒られるかと体を強張らせるとデデデは半ば投げやりに言った。
「お前は黙ってオレ様に付いてきさえすればいい。責任は全部このデデデ大王様が取ってやる」
まぁ。まるでプロポーズみたいね。茶化してやろうと思ったのに、声の代わりに出たのは涙だったので、私は黙って彼の背に顔をうずめた。
完敗である。私がどんなに理不尽なことを仕出かして迷惑を掛けても、どんなに面倒で取り返しのつかないようなことになっても、きっと彼は何でもないことのようにその腕で力強く引っ張って、容易く拾い上げてしまうのだ。
杖は静かで暗い湖の底で、きっともう二度と戻ってこないだろう。
そう言うと彼は酷くイヤそうな顔をした。続けて、一緒に世界征服しない?と誘うと更に顔を歪めた。何だその顔は、初めて見るぞ。私が冬の湖に泳ぎに行ったのを知ったときだってそんな顔はしなかっただろ。
いや……してたっけ?してたかも。そんな事を話したのも、随分前だから、忘れてしまったが。
時折、水中を泳ぐ魚になりたいと思う。悠々と青に溶ける姿が他の何にも縛られていない、本当の自由の形に見えるから。今日もそうだった。もっとちゃんと素直に思ったことを自由に言えばいいのに。答えを聞くのが怖くって言えなかった。聞きたかったのはこれから先私と一緒にいてくれる時間がどれ程あるのかという単純で面倒なこと。
聞こうと思ったキッカケは私と話す時間が減ったとか、たくさんのワドルディたちやカービィたちと過ごしているときが一番自然体に見えるとか色々あるが、最終的な決定打となったのはバディファイターズタワーでの一幕だろう。
ついさっきのイヤそうな顔を思い出してしまって、思わずへこむ。そりゃ、デデデが世界征服だの支配だのに興味がないのはわかる。(自称ではあるが)既にプププランドの大王だし。でも、あんな顔しなくたっていいじゃん。
メタナイトのときは一緒に堕ちていったのに私とは嫌なんだ。ひどい人。足元の小石を蹴っ飛ばすと、背の高い草むらに隠れて消えた。
分かっている。アレは仮面を割られたメタナイトに対する彼の思いやりなのだ。まさか、好きで暴走した訳ではあるまい。メタナイトだって私がデデデとの関係に嫉妬していると知ったらイヤな顔をするだろう。その顔のまま、“私とデデデ大王は変に詮索される間柄では断じてない。断じて、だ。”とでも言いそうだ。でもズルいものはズルい。二人とも、とっても仲良しさんじゃん。どんどん高く、多く茂ってきた草木を掻き分け歩みを進める。
悲しいことに私、ナマエはデデデ城に住んでいることもなく、また彼の好敵手でもない。特別な繋がりというものを全く持っていないただの友人である。もしかしたら友人ですら無いのかもしれない。ここまで長々と語ったが、つまるところ私は寂しいのだ。
ひたすら動かしていた足を止めたのはくらやみ森の奥深く。くらやみ森といえばその広さと魔境とも呼ばれる危険性によって全貌はそこまで解明されていない、プププランドにある古い森だ。巷じゃスターダストの実ばかり注目されがちだが、他にも不思議なチカラを秘めた杖の伝説がある。図書館の奥で見つけた古代文字で書かれた古書によるとこの辺りのはずだ。
これから引き起こす自体は私の個人的な嫉妬による癇癪であり、ヒステリックである。身勝手で結構。全部デデデが悪い。胸を巡る少しの罪悪感に目を瞑って私は杖に手を出した。
……手にする直前まで、子供の頃の様な、なんでもできる万能感を手に入れる期待していたのだが、真っ先に脳を支配したのはとんでもない恐怖であった。先ほどまで何とも思っていなかった揺れる草木や頬を撫でる風、それを映す影でさえも、己に害をなそうとしているように思える。気が付けば周りは皆敵ばかり。私はどうしようもなく怖くなって手に持ったその杖を振り回した。
やめて、やめて!私に近づかないで!私を、傷付けないで!ただただ、恐怖だけが私を支配していた。何が起こっているのか分からず、また、自分が見ているものが現実の物なのかも判別つかなくなってきた。飛び出してくる影を手当たり次第に殴りつける。とにかく自分が傷つけられる前に倒さなきゃ、と思ったのだ。そういうことを繰り返した後、もはや自身の意思でそうしているのかも何もかも分からず、気付けばいつの間にか意識も手放した。
手放したはずなのだが。夢か現か、真っ暗な闇の中で、やたら聞き覚えのあるどら声が聞こえた気がした。
「ばかもの!まさかとは思ったが本当にやるとは……お前、何を考えとる!」
「デデデ……?」
意識を取り戻したときには何故だがずぶ濡れであった。ボヤけた視界がクリアになって、私を助けたのだろうデデデの姿が見えたときに感じたのは安心ではなく、ああ、ダメだったんだという落胆だった。トクベツになれないのなら、せめて全部壊して彼の心の傷になれたならと思ったんだけど。それもどうやら失敗に終わったらしい。
未だ怒り心頭の彼の話によると伝説の杖とは単にチカラを与える物ではなく、使用者の恐怖を引き出し攻撃的にする道具だったらしい。
今朝の私の変な質問を受けたデデデは不審に思って、城に来る前に私が寄っていた図書館に向かい、司書から私が使っていたテーブルを教えてもらう。開きっぱなしにされた本を部下のワドルディに翻訳させるとくらやみ森へ私を探しに出掛けた。見つけたときには既に会話が通じる様子ではなく、攻撃するしかなかった。それにより追い詰められた私はなんと、湖に飛び込んだらしい。魚になりたい、と思ったのかもしれなかった。
そうして飛び込んだ私を彼は湖に潜って引っ張り上げたのだろう。お気に入りのガウンはびしょ濡れで、更にどこかに引っ掛けでもしたのか、ところどころ破けてしまっている。恐らく、いや確実に私のせいなのだが、酷いものだなぁと他人事のように思った。
「で?一体何のためにこんな物騒なものを使ったんだ、お前は」
何のため。冷えていた体に追撃で冷水を浴びせられたようだ。世界を征服してみたかったから?本に載っていた伝説が本当か確かめたくて?何と答えよう。どう答えるのが正解なのだろう。どうしたら彼は私を見放さずにいてくれるだろう。思考がぐるぐる巡った。すぐ側の湖が目に入る。魚に、なりたい。
「寂しいなぁ、と思ったから。……多分、構って欲しくて」
言ってしまった。ホントのこと。面倒くさいと思われるかな。そんな事くらいで、と呆れられるかな。デデデは面倒くさがりだからもしかしたら嫌われちゃうかもな。悲しくなって座り込んだまま地面を見つめた。立ち上がる元気は、ない。
「フン、馬鹿のくせに余計な事を考えるんじゃないわい」
ぐるぐる巡る思考を見透かしたように、そうたった一言だけ言うと、私に背を向けてしゃがみ込んだ。思っていたより柔らかい言葉と伴われたその行動の意味が分からず思わず呆然としてしまう。そんな私をデデデはしゃがみ込んだ姿勢のまま胡乱な目で見た。
「……なんだナマエ、まさかまだオレ様が怖いのか」
「そんなことは……ないけれど」
「じゃあ、さっさとしろ。お前、歩けないのだろう」
まさかとは思ったがやはり、乗れということらしい。急かされてしまったのでおずおずと彼の背におぶさる。それを横目で確認した後、デデデはゆっくりと歩きだした。
視線がいつも見ない高さで、静かな夜の空気も相まって落ち着かない。ガウンの白いファーに目が留まる。普段はフワフワのファーが水分を含んでへちょへちょになっていた。それがなんというか、新鮮だったので思わず指でいじってみる。それと同時に彼がため息を吐いて肩を落としたので、もしかして怒られるかと体を強張らせるとデデデは半ば投げやりに言った。
「お前は黙ってオレ様に付いてきさえすればいい。責任は全部このデデデ大王様が取ってやる」
まぁ。まるでプロポーズみたいね。茶化してやろうと思ったのに、声の代わりに出たのは涙だったので、私は黙って彼の背に顔をうずめた。
完敗である。私がどんなに理不尽なことを仕出かして迷惑を掛けても、どんなに面倒で取り返しのつかないようなことになっても、きっと彼は何でもないことのようにその腕で力強く引っ張って、容易く拾い上げてしまうのだ。
杖は静かで暗い湖の底で、きっともう二度と戻ってこないだろう。
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