◇かぜのまち古本屋店主(夢幻の歯車)
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怪盗だと名乗る男と取引きを始めたのは、気まぐれや同情などではなく、当然マホロアに利があるからだった。
彼が思い付きで始めたらしい盗人稼業は、その盗品の行く末を決めかねていた。どうしたものか、とウロウロする男に声をかけたのが全ての始まりである。
信じられない事に、彼が持ってくる宝は全てホンモノでそこには一切、贋作が存在しなかった。(盗みは素人だというのに!)
貴族の屋敷から持ってきたのであろう、その盗品の中には古代文明のカラクリが含まれている。それはローアを直そうとしているマホロアにとっては、何よりも魅力的な品であった。
現にそれらはバラして部品ごとに保管し、使えそうな古代文明の歯車は既にローアの修理に充てられている。完全な修復にはまだ程遠いが、マホロアの見立てではあともう少しのパーツで動く事が出来るはずだ。
他にも、絵画などの芸術品はコレクターに高値で売り飛ばせるうえに、かぜのまち育ちの彼にはろくな知識がなく、安く買い叩くことが可能。
つまり、近頃ひかりのまちを騒がせるこの大泥棒は、マホロアにとって非常に都合の良い相手であった。
口の悪い男である。発言する度に、ひとつかふたつ、必ずコチラを侮辱するような言葉遣いをする。そのうえ、まともに相手の名前を呼ばないと来た。ロクに友人もいないのだろう。
それなりに付き合いのあるマホロアでさえ、アホだのクソ野郎だの、はたまた名前を文字った不名誉なあだ名でしか呼ばれた覚えがないのだから、ちゃんと名前で呼ばれたことのある者はいないのではなかろうか。
そんな男だったので子供を拾ったのだという話を聞いたときは、怯えられてすぐにでも逃げ出されるだろうと思った。あるいは子供の面倒を見切れずに全て投げ出し家を捨てるか。彼にはそうするだけの金銭もバイタリティもあるはずだった。
しかし、実際にはいつまで経ってもそうはならず、血の繋がりもないのに弟として扱い、喧嘩しつつもなんだかんだ暮らしをともにしている。頼んでもいないのに取引きの度にダラダラと近頃の暮らしについて語るので相当今が楽しいのだろう。チビという呼び名も嘲りというよりは親しみが込められている。
それがどうにもマホロアの気に障った。自分と会うときは眉をしかめてばかりのクセに“オトートくん”の話をする時だけヘラヘラと締まりのない顔をする。
……先に出会っていたマホロアが見たことのない表情をする。
マホロアが見たことのある彼の表情といえば、ちょっかいを出したときの眉を吊り上げた顔と、イタズラが成功したときの驚いた顔くらいのものだ。それはそれで面白いのだが、その他の表情を見たことがないのが問題だった。
別に彼の表情を知らないこと事態はどうということはないのだが、マホロアの知らないその表情を、ぽっと出のヤツに見られているというのはなんだか腹が立つ。口も性格も悪い男の初めてのトモダチになってやったというのに、マホロアに笑いかけないのはどういうことか。
当の本人は例のオトートくんに付きっきりで、マホロアは以前のように男をからかう事も出来ないので、最近はクサクサした毎日を過ごしている。
そんな矢先に最近の苛立ちの元凶が息せき切らせてやって来た。話を聞くと、どうやら例のオトートくんが病気で寝込んだらしい。
「お前、ツテが多いだろ。腕のいい医者を紹介してくれないか」
「それならボクにまかせてヨォ!ナンテッたって薬売りだからネ」
「売ってくれるのか!?」
「そのかわり、チョォット値が張るんダケド……普通に買ったら六桁はクダラナイ代物。もちろんポイントスターじゃなくテ現金ネ」
これはチャンスだ。困らせて鬱憤を晴らしてやろうと少々金額を盛って伝えた。男はとてもケチなのできっと悩む。
彼がどのくらいケチなのかというと、作る料理全て水増しするせいで味を台無しにするくらいである。その上、当人が味音痴なので全くその事実に気付く様子がない。彼の作る料理でまともに食べれるのは、いつだったか母の味だと語ったナポリタンだけだ。
「いくらでも払う。今の手持ちじゃ足りないなら何年かかってでも、絶対に。だから頼む、俺にその薬を売ってくれ」
久しぶりのワクワクとした、興味や関心といった感情がスーッと冷めていったのを感じる。ツマンネーノ。コイツ、ツマンネー!
「ハァ……モウイイヨ。タダでアゲル」
「え、本当にタダでいいのか?俺の聞き間違いじゃなくて?」
「アー、モウ!イイからサッサと行けッテバ!」
「助かる……ありがとうな!」
ひどく嬉しそうな返事を聞いてマホロアは不機嫌に鼻を鳴らした。本当に感謝してるなら名前くらい呼べよ、バカ。
彼が思い付きで始めたらしい盗人稼業は、その盗品の行く末を決めかねていた。どうしたものか、とウロウロする男に声をかけたのが全ての始まりである。
信じられない事に、彼が持ってくる宝は全てホンモノでそこには一切、贋作が存在しなかった。(盗みは素人だというのに!)
貴族の屋敷から持ってきたのであろう、その盗品の中には古代文明のカラクリが含まれている。それはローアを直そうとしているマホロアにとっては、何よりも魅力的な品であった。
現にそれらはバラして部品ごとに保管し、使えそうな古代文明の歯車は既にローアの修理に充てられている。完全な修復にはまだ程遠いが、マホロアの見立てではあともう少しのパーツで動く事が出来るはずだ。
他にも、絵画などの芸術品はコレクターに高値で売り飛ばせるうえに、かぜのまち育ちの彼にはろくな知識がなく、安く買い叩くことが可能。
つまり、近頃ひかりのまちを騒がせるこの大泥棒は、マホロアにとって非常に都合の良い相手であった。
口の悪い男である。発言する度に、ひとつかふたつ、必ずコチラを侮辱するような言葉遣いをする。そのうえ、まともに相手の名前を呼ばないと来た。ロクに友人もいないのだろう。
それなりに付き合いのあるマホロアでさえ、アホだのクソ野郎だの、はたまた名前を文字った不名誉なあだ名でしか呼ばれた覚えがないのだから、ちゃんと名前で呼ばれたことのある者はいないのではなかろうか。
そんな男だったので子供を拾ったのだという話を聞いたときは、怯えられてすぐにでも逃げ出されるだろうと思った。あるいは子供の面倒を見切れずに全て投げ出し家を捨てるか。彼にはそうするだけの金銭もバイタリティもあるはずだった。
しかし、実際にはいつまで経ってもそうはならず、血の繋がりもないのに弟として扱い、喧嘩しつつもなんだかんだ暮らしをともにしている。頼んでもいないのに取引きの度にダラダラと近頃の暮らしについて語るので相当今が楽しいのだろう。チビという呼び名も嘲りというよりは親しみが込められている。
それがどうにもマホロアの気に障った。自分と会うときは眉をしかめてばかりのクセに“オトートくん”の話をする時だけヘラヘラと締まりのない顔をする。
……先に出会っていたマホロアが見たことのない表情をする。
マホロアが見たことのある彼の表情といえば、ちょっかいを出したときの眉を吊り上げた顔と、イタズラが成功したときの驚いた顔くらいのものだ。それはそれで面白いのだが、その他の表情を見たことがないのが問題だった。
別に彼の表情を知らないこと事態はどうということはないのだが、マホロアの知らないその表情を、ぽっと出のヤツに見られているというのはなんだか腹が立つ。口も性格も悪い男の初めてのトモダチになってやったというのに、マホロアに笑いかけないのはどういうことか。
当の本人は例のオトートくんに付きっきりで、マホロアは以前のように男をからかう事も出来ないので、最近はクサクサした毎日を過ごしている。
そんな矢先に最近の苛立ちの元凶が息せき切らせてやって来た。話を聞くと、どうやら例のオトートくんが病気で寝込んだらしい。
「お前、ツテが多いだろ。腕のいい医者を紹介してくれないか」
「それならボクにまかせてヨォ!ナンテッたって薬売りだからネ」
「売ってくれるのか!?」
「そのかわり、チョォット値が張るんダケド……普通に買ったら六桁はクダラナイ代物。もちろんポイントスターじゃなくテ現金ネ」
これはチャンスだ。困らせて鬱憤を晴らしてやろうと少々金額を盛って伝えた。男はとてもケチなのできっと悩む。
彼がどのくらいケチなのかというと、作る料理全て水増しするせいで味を台無しにするくらいである。その上、当人が味音痴なので全くその事実に気付く様子がない。彼の作る料理でまともに食べれるのは、いつだったか母の味だと語ったナポリタンだけだ。
「いくらでも払う。今の手持ちじゃ足りないなら何年かかってでも、絶対に。だから頼む、俺にその薬を売ってくれ」
久しぶりのワクワクとした、興味や関心といった感情がスーッと冷めていったのを感じる。ツマンネーノ。コイツ、ツマンネー!
「ハァ……モウイイヨ。タダでアゲル」
「え、本当にタダでいいのか?俺の聞き間違いじゃなくて?」
「アー、モウ!イイからサッサと行けッテバ!」
「助かる……ありがとうな!」
ひどく嬉しそうな返事を聞いてマホロアは不機嫌に鼻を鳴らした。本当に感謝してるなら名前くらい呼べよ、バカ。
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