shooting star!!
Name change
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スピンはずっと後悔していた。
なぜあの日、彼処に居たのがナマエだったのだろう。
なぜあの日、スピンはナマエの近くにいてやれなかったのだろう。
例えばあの場に居たのが体格がずっしりしたストロンなら巻き込まれずに済んだかもしれないし、ドクなら巻き込まれたとしても発信機等の機械を駆使して自力で船まで帰ってこれただろう。
なにより自分であれば持ち前のスピードで逃げ切れただろう自信があった。
しかし、いくらこうやって思考を巡らせようと、あの日異世界ロードはスピンたちではなくナマエの側に現れたのである。
ナマエという人間はドロッチェ団の中でも、異質な存在であった。
団員はみな、お宝を盗む為の能力を持っている。ドロッチェ団は盗賊なのだから当然といえば当然だが、その当然を満たしていないのがナマエであった。
出身の星が特殊な環境だったのか、スピンたちが使っている文字を理解出来ないし、重い物を持ち上げるようなパワーもなく。持って生まれた手足はすらりと長いのに特段速く走ることも出来ない。
しかし、スピン含め団員たちはナマエを足手まといだなんて思ったことはなかった。彼女は与えられた仕事を必死にこなそうとしていたし、なにより真面目で勤勉だったため、むしろ団員たちからの評判は良かった。
ナマエは文字が読めなかったがイラストや写真の多い本には関心があるようでドクの研究室によく立ち入っていた。ドクもナマエを実の孫のように思っているらしく(実際本人がそう得意げに言っていたのをスピンは聞いている)文字の読めないナマエの為に時間を割いて読み聞かせてやっていた。
そのせいで彼の発明にポンコツが増えたのは、まあ、ご愛嬌だろう。
ストロンとはあまり話しているところを見たことが無かったが優しい彼はよくナマエを心配していた。ナマエは真面目が故に気を張りすぎてしまう節がある。そういうときナマエが一人で船内の掃除などの仕事をしていると言葉少なに食べ物だけ渡して去っていく。
食べ物を贈る、というのはストロンに関わりのない者には分からないだろうが、彼にとって最上級の労いなのだ。
船内にたくさんいるチューリンたちもナマエのことを慕っていたようだ。お宝の調査中でもナマエを見つけると駆け出そうとしたり、仕事が無いときはナマエの後に引っ付いてよく困らせていた。
そして、スピンはナマエの兄貴分であった。ナマエの世話を一番見ていたのは間違いなくスピンだと自負している。率先して一番最初に船内を案内したのもスピンだし、団員たちにナマエを紹介したのもスピンだ。それ故か、ナマエも何かあるとスピンを真っ先に頼った。
そんな風に団員たちと良好な関係を築いていたナマエだが、彼女は唯一団長のことが苦手なようだった。
ドロッチェは言葉より行動で示す男である。
スピンや他の団員は余計なことは言わず、スマートに目的を成してしまう団長のことをカッコイイと思っていたし、そんな団長に憧れついていくことを決めた。
しかし、対するナマエは他人の感情の機微を察するのがほんの少し下手くそだった。特に、自身に向けられる感情を良くない方に解釈する傾向がある。好意をあまり言葉にしないドロッチェと鈍感なナマエ____
そう、端的に言うと二人の相性は最悪だった。世間話すらあまりしないドロッチェにナマエはいつも緊張しっぱなしだったのである。
そこで兄貴分のスピンの出番だった。
ナマエは隙の無いドロッチェに少し緊張ぎみだったようだから、気を使って団長の良いところを話し(これは内緒だが親しみを持ってもらおうと彼のちょっと間の抜けたエピソードを話したこともある)ナマエからの印象アップを狙ってみたり、それが無理そうだと悟れば二人だけで鉢合わせることがないように立ち回った。
そもそもドロッチェ団に引き入れたのは他でもない団長自身なのだから少なくとも団長からはナマエの事を悪く思っていないはず。今すぐは無理でもいつか時間が経てば解決するだろうと信じていた。
……これは決して諦めたわけではなく、時は薬なのである。
そんな風に四六時中甲斐甲斐しく面倒を見ていたのでスピンはナマエがほんのり、劣等感のような物を持っていることに気がついていた。ナマエが鈍感なのも自分に好意が向けられる訳が無いという思い込みがあったからなように思う。
しかし、団長としっかり向き合えさえすれば自分が心から大切にされていることを気付いてくれるだろうとそのフォローを後回しにしてしまった。それがきっとあの悲劇を生んだのだ。
そもそもあの日、異空間ロードの一番近くにいたのはナマエではなく一匹のチューリンであった。ナマエと二人でチューリンがじゃれ合っていた時にいきなりチューリンの背後に星型の穴が開いたのである。
ナマエがいきなり此方に向かってチューリンを投げたときは驚いたが、彼女はいち早く異空間ロードの出現に気が付き側にいたチューリンだけでも助けようとしたのだろう。
今でも忘れられない。彼女がスピンに向かってチューリンを投げ飛ばした瞬間、ナマエは安心した顔で笑った。自身が今にもどこか知らない空間に飛ばされそうになっているにも関わらずだ。
チューリンの身代わりになったのは自己肯定感の低い彼女にとって、“良い仕事”だったのだろうか。チューリンが助かったとはいえ、ナマエが犠牲になっている以上、スピンは決してそうは思えなかった。だが、結果としてそれがナマエの“ドロッチェ団”としての最後の仕事となった。
スピンはナマエの兄貴分だった。
ナマエの兄貴分だったはずなのに助けられなかった己の不甲斐なさであの日ちょっぴり泣いた。情けない話だ。
突然のナマエの消失に、当然その場は混乱した。ナマエに助けられたチューリンなんかは呆然とし、ドクやストロンも大慌てで、ドロッチェ団結成以来見たことのないパニックになった。
右も左も大わらわだったが、特に感情的だったのは団長だった。
聞いたことのない大声で名前を呼び、すぐにナマエに向かって手を伸ばすも間に合わず、顔を顰めて心底悔しそうにしていた。船に戻ってからも自身の持ちうるツテ全てに連絡をし、協力を仰いで頭を下げた。あの時の団長の心情を慮るとスピンは今でも胸が張り裂けそうになる。
「ナマエはきっと無事さ。アイツは意外と悪運が強いからな」
ナマエ探しに憔悴しきった団員たちを見かねてか、ドロッチェがそう言った。きっと一番辛い立場である彼に気を使わせているのが申し訳なく、また、こんな一大事にも長として振る舞わなければならない彼の立場が悲しくもあった。
ドロッチェ団は暫くそんな感じの重い空気だったので、生きていたナマエを見る事が出来てスピンは本当に安心したのである。
隈もなく、血色も良さそうだ。それはきっとプププランドの環境がナマエに合っていたのであろう。兄貴分としては少し悔しかったが、ナマエが健康で幸せに暮らせるのならそれで良いとも思う。ドクやストロン、チューリンたちも概ねその様な意見だ。
団長はというとあれからよく花の買い出しを頼むようになった。本人は何も言っていないが、十中八九、花占いをするためだろう。彼はクールな性格に反して案外そういった類を信じていたりする。犠牲になった花の数は100本を超えた辺りで数えるのをやめた。
ナマエが自身の意思で団を離れた事が余程ショックだったようだ。ここまでだとドロッチェは、ナマエを悪く思ってないどころか好きだったのでは、と最近考える。
二人の関係に気を揉んでいたスピンからしたらナマエが船にいた時にもう少し、好意を伝えてやっても良かったんじゃないかとちょっと不満にも思った。決して言いはしないが。
_____ポップスター、もといプププランドにはまだまだお宝が眠っているという噂を聞く。近いうちまたナマエに会うことになるだろう。その時までに団長の調子は戻っているだろうか。
スピンは新たに買い入れた大量の花を抱えながらそう遠くない未来に訪れるだろう再会にため息を吐いた。
なぜあの日、彼処に居たのがナマエだったのだろう。
なぜあの日、スピンはナマエの近くにいてやれなかったのだろう。
例えばあの場に居たのが体格がずっしりしたストロンなら巻き込まれずに済んだかもしれないし、ドクなら巻き込まれたとしても発信機等の機械を駆使して自力で船まで帰ってこれただろう。
なにより自分であれば持ち前のスピードで逃げ切れただろう自信があった。
しかし、いくらこうやって思考を巡らせようと、あの日異世界ロードはスピンたちではなくナマエの側に現れたのである。
ナマエという人間はドロッチェ団の中でも、異質な存在であった。
団員はみな、お宝を盗む為の能力を持っている。ドロッチェ団は盗賊なのだから当然といえば当然だが、その当然を満たしていないのがナマエであった。
出身の星が特殊な環境だったのか、スピンたちが使っている文字を理解出来ないし、重い物を持ち上げるようなパワーもなく。持って生まれた手足はすらりと長いのに特段速く走ることも出来ない。
しかし、スピン含め団員たちはナマエを足手まといだなんて思ったことはなかった。彼女は与えられた仕事を必死にこなそうとしていたし、なにより真面目で勤勉だったため、むしろ団員たちからの評判は良かった。
ナマエは文字が読めなかったがイラストや写真の多い本には関心があるようでドクの研究室によく立ち入っていた。ドクもナマエを実の孫のように思っているらしく(実際本人がそう得意げに言っていたのをスピンは聞いている)文字の読めないナマエの為に時間を割いて読み聞かせてやっていた。
そのせいで彼の発明にポンコツが増えたのは、まあ、ご愛嬌だろう。
ストロンとはあまり話しているところを見たことが無かったが優しい彼はよくナマエを心配していた。ナマエは真面目が故に気を張りすぎてしまう節がある。そういうときナマエが一人で船内の掃除などの仕事をしていると言葉少なに食べ物だけ渡して去っていく。
食べ物を贈る、というのはストロンに関わりのない者には分からないだろうが、彼にとって最上級の労いなのだ。
船内にたくさんいるチューリンたちもナマエのことを慕っていたようだ。お宝の調査中でもナマエを見つけると駆け出そうとしたり、仕事が無いときはナマエの後に引っ付いてよく困らせていた。
そして、スピンはナマエの兄貴分であった。ナマエの世話を一番見ていたのは間違いなくスピンだと自負している。率先して一番最初に船内を案内したのもスピンだし、団員たちにナマエを紹介したのもスピンだ。それ故か、ナマエも何かあるとスピンを真っ先に頼った。
そんな風に団員たちと良好な関係を築いていたナマエだが、彼女は唯一団長のことが苦手なようだった。
ドロッチェは言葉より行動で示す男である。
スピンや他の団員は余計なことは言わず、スマートに目的を成してしまう団長のことをカッコイイと思っていたし、そんな団長に憧れついていくことを決めた。
しかし、対するナマエは他人の感情の機微を察するのがほんの少し下手くそだった。特に、自身に向けられる感情を良くない方に解釈する傾向がある。好意をあまり言葉にしないドロッチェと鈍感なナマエ____
そう、端的に言うと二人の相性は最悪だった。世間話すらあまりしないドロッチェにナマエはいつも緊張しっぱなしだったのである。
そこで兄貴分のスピンの出番だった。
ナマエは隙の無いドロッチェに少し緊張ぎみだったようだから、気を使って団長の良いところを話し(これは内緒だが親しみを持ってもらおうと彼のちょっと間の抜けたエピソードを話したこともある)ナマエからの印象アップを狙ってみたり、それが無理そうだと悟れば二人だけで鉢合わせることがないように立ち回った。
そもそもドロッチェ団に引き入れたのは他でもない団長自身なのだから少なくとも団長からはナマエの事を悪く思っていないはず。今すぐは無理でもいつか時間が経てば解決するだろうと信じていた。
……これは決して諦めたわけではなく、時は薬なのである。
そんな風に四六時中甲斐甲斐しく面倒を見ていたのでスピンはナマエがほんのり、劣等感のような物を持っていることに気がついていた。ナマエが鈍感なのも自分に好意が向けられる訳が無いという思い込みがあったからなように思う。
しかし、団長としっかり向き合えさえすれば自分が心から大切にされていることを気付いてくれるだろうとそのフォローを後回しにしてしまった。それがきっとあの悲劇を生んだのだ。
そもそもあの日、異空間ロードの一番近くにいたのはナマエではなく一匹のチューリンであった。ナマエと二人でチューリンがじゃれ合っていた時にいきなりチューリンの背後に星型の穴が開いたのである。
ナマエがいきなり此方に向かってチューリンを投げたときは驚いたが、彼女はいち早く異空間ロードの出現に気が付き側にいたチューリンだけでも助けようとしたのだろう。
今でも忘れられない。彼女がスピンに向かってチューリンを投げ飛ばした瞬間、ナマエは安心した顔で笑った。自身が今にもどこか知らない空間に飛ばされそうになっているにも関わらずだ。
チューリンの身代わりになったのは自己肯定感の低い彼女にとって、“良い仕事”だったのだろうか。チューリンが助かったとはいえ、ナマエが犠牲になっている以上、スピンは決してそうは思えなかった。だが、結果としてそれがナマエの“ドロッチェ団”としての最後の仕事となった。
スピンはナマエの兄貴分だった。
ナマエの兄貴分だったはずなのに助けられなかった己の不甲斐なさであの日ちょっぴり泣いた。情けない話だ。
突然のナマエの消失に、当然その場は混乱した。ナマエに助けられたチューリンなんかは呆然とし、ドクやストロンも大慌てで、ドロッチェ団結成以来見たことのないパニックになった。
右も左も大わらわだったが、特に感情的だったのは団長だった。
聞いたことのない大声で名前を呼び、すぐにナマエに向かって手を伸ばすも間に合わず、顔を顰めて心底悔しそうにしていた。船に戻ってからも自身の持ちうるツテ全てに連絡をし、協力を仰いで頭を下げた。あの時の団長の心情を慮るとスピンは今でも胸が張り裂けそうになる。
「ナマエはきっと無事さ。アイツは意外と悪運が強いからな」
ナマエ探しに憔悴しきった団員たちを見かねてか、ドロッチェがそう言った。きっと一番辛い立場である彼に気を使わせているのが申し訳なく、また、こんな一大事にも長として振る舞わなければならない彼の立場が悲しくもあった。
ドロッチェ団は暫くそんな感じの重い空気だったので、生きていたナマエを見る事が出来てスピンは本当に安心したのである。
隈もなく、血色も良さそうだ。それはきっとプププランドの環境がナマエに合っていたのであろう。兄貴分としては少し悔しかったが、ナマエが健康で幸せに暮らせるのならそれで良いとも思う。ドクやストロン、チューリンたちも概ねその様な意見だ。
団長はというとあれからよく花の買い出しを頼むようになった。本人は何も言っていないが、十中八九、花占いをするためだろう。彼はクールな性格に反して案外そういった類を信じていたりする。犠牲になった花の数は100本を超えた辺りで数えるのをやめた。
ナマエが自身の意思で団を離れた事が余程ショックだったようだ。ここまでだとドロッチェは、ナマエを悪く思ってないどころか好きだったのでは、と最近考える。
二人の関係に気を揉んでいたスピンからしたらナマエが船にいた時にもう少し、好意を伝えてやっても良かったんじゃないかとちょっと不満にも思った。決して言いはしないが。
_____ポップスター、もといプププランドにはまだまだお宝が眠っているという噂を聞く。近いうちまたナマエに会うことになるだろう。その時までに団長の調子は戻っているだろうか。
スピンは新たに買い入れた大量の花を抱えながらそう遠くない未来に訪れるだろう再会にため息を吐いた。
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