2話:家族と彼女と俺と

街灯の明かりが淡く瞬いた。
遠くで犬の鳴き声がして、真優が小さな笑みをこぼす。

「うちの家族うるさぁてすまんな」

すっかり日の暮れた住宅街を真優と並んで歩く。
俺はようやく解放された解放感にぐっと伸びをした。
真優は一瞬きょとんとすると、ふはっと吹き出して「なんで?」と続ける。

「うちめっちゃ楽しかったよって」
「誘ってくれてありがとうな」

真優の瞳が街灯の明かりを反射して輝く。
その表情がほんまに嬉しそうで、俺はほっと息を吐いた。

「……なんや、うちとはやっぱ全然ちゃうねんな」

そんな言葉にきゅっと胸が締め付けられる。
夜になって冷たさを増した秋風が通り抜けて。

真優は自分の家族との関係がうまくいっていない。
母親は真優んこと支配しようとするし。
父親は家庭崩壊の原因は真優やと思うとるし。

俺からするとありえへん両親。
そんな両親に真優は必死で抗って、自分のことなんか二の次にして、大切な弟を守っとった。
自分がボロボロになるまで、一人で闘ってきた――強くて、優しくて、抱え込みやすい、繊細な女の子。

そんな彼女が、心から笑って俺の家族と過ごしていたのが本当に嬉しくて。
その横顔にふっと笑みを向ける。

――俺の家族と真優、ちゃんとやって行けそうや。

無意識に真優の頭に手が伸びて数回撫でていた。
真優はわけが分からなさそうに「えー? なんよ急に?」なんて笑っとるけど。
俺は心の底から、俺の家が真優の安心できる居場所になることを祈ってしまう。

真優に告白したとき『本気で一生傍におりたい』って伝えた。
その気持ちに嘘なんてなくて、想いは日に日に強くなっとって――。
そこまで考えたとき、俺はふっと口角を上げた。


俺、当たり前みたいに真優との将来、考えとるんやな。


真優の笑顔が街灯に照らされて、光の粒が髪に散った。
その光景を見た瞬間、胸が高鳴る。

気付けば、腕が伸びていた。
真優を引き寄せて、ぎゅうっと抱き締める。

「謙也くん? どないしたん?」

胸にもたれた真優が不思議そうに見上げてくる。
俺は真優の肩口に顔をうずめると「なんでもあらへん」と続けた。

「なんでもあらへんけど、これからもずっと一緒にいよな」

そう告げれば、俺を包み込むように真優の腕が背に回された。

「そんなん当たり前やん」

俺の衝動も何もかも全部、全部包み込める真優はやっぱり優しい女の子や。

その優しさに甘えそうになる。
せやけど、俺はその優しさがいつまでも失われんように傍で支え続けたい、守りたいと思った。
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