11話:小話 約束は守るためにある

あれから、私は服を着替えさせられ、謙也くんのお母さんに「それ真優ちゃんにあげるわ!」なんて言われ、遠慮しようとしたのに。

「うちの子らがそれ着とったら、いろいろあかんやろ?」

なんて言われてしもたら、その通り過ぎて。
吹き出してお腹抱えて笑ったあと、ありがたくいただくことにした(あとから聞いたら、高校の合格祝いやって)。

勢いそのままに通されたリビングは、普段の様子と様変わりしとって。

「おお……」

カーペットにクッションちりばめて。
ふわふわの毛布も用意されていて。
なんなら有名なビーズソファなんかもあったりして。

唖然とする私に気が付いた謙也くんがそっと近寄る。

「……言い訳してええ?」
「なんの?」
「迎え行けんかった言い訳」

バツが悪そうな表情浮かべて告げる謙也くんに、そんなことかと肩の力が抜ける。

別に絶対に迎えに来てくれな嫌! とかないよって。

ただ、どうしても話したそうにしとったから呆れつつ「どうぞ?」と続きをうながした。

「おかんに捕まってん……」

盛大なため息とともに紡がれた言葉に、思わずふはっと息を漏らした。
まあ、そんなところやろなと思とったよ。

こんなたくさんのクッションも、ふわっふわで柔らかい毛布も。
全部、全部。
私好みの色合いで――多分、男の子二人兄弟のお家には普通やったら置かへんような代物で。

「……午前中、それ買いに行かされて」

しどろもどろ告げる謙也くんの視線が私の着とるルームウェアに向けられる。
胸の内があたたかくなった。
やけど、素直にお礼を言うんは、なんとなく気恥ずかしくて、私はからかい口調で謙也くんを覗き込んだ。

「うちのためにしてくれたんや?」

そうすれば、謙也くんはほんの少しだけ頬を赤らめて。
でも、素直に認めたくないみたいに、口をへの字に曲げる。

「ちゃう。ほぼおかんの暴走」
「ふぅん?」
「俺は……その、捕まっただけで」
「はいはい」

どうしたって嬉しくって笑いがこぼれてしまう。
私は口元を隠すと「ほなら、しゃーないね」と続けた。

「なんや一人で直接謙也くん家来るん新鮮やったわ」
「……あっそ」

照れてそっぽを向く謙也くんが可愛らしい。
さっきまで、指先が冷えとったのに、いつの間にかあたたかくなっとった。
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