11話:小話 約束は守るためにある

受験を終えたその週末。
私はお昼過ぎになって、謙也くんのお家に遊びに来た。

受験前、睡眠時間のことで詰められるんが嫌で、言うた
『一日中寝て過ごすデートしよ!』という言葉。
ただの口から出まかせやったのに、謙也くんちゃんと覚えとるんやもん。

合格発表日の夜に「ほんなら今週末~」って、速攻で約束取り付けてきよった。
ほんま敵わん。

□ + ◇ + □

相変わらず大きなお家やなぁ、なんてぼんやり考えながらインターホンを押す。
よくある呼び鈴が鳴って少しだけそわそわしてしまう。

やって、いつもなら謙也くんがどこかしらまで迎えに来てくれて、一緒にお家に入るから。
こんな感じで鳴らすことないし。

やのに、今日に限っては『すまん! 直接家来てもろてええ!?』なんて、メッセージが来て。
珍しなぁ、って。

しばらくすると「真優ちゃんいらっしゃい! 鍵開いとるから入っといで!」って、謙也くんのお母さんの声。

「わ、分かりました」

そう答えて門扉を押し開けるけど、なんとなく落ち着かなくて(いや、なんや緊張するやん? 勝手に入るのって)。
おずおずと玄関ドアを開けた。
外より少しあたたかくて、ほうっと息が漏れた。

「お邪魔しまーす……」

そしたら、リビングの方からバタバタにぎやかな足音が聞こえてきて。

真っ先に玄関に顔を出したんは謙也くんのお母さん。
なんやものっそい楽しそうにしとる。
そのお母さんに続いて、頭が痛そうに額を押さえた謙也くんが顔を覗かせた。

「迎え行けんでごめんな」
「や、そんなん全然ええけども……」

よう分からん空気感に数回瞬いて「えっと?」と、口にした瞬間、謙也くんのお母さんに何かを渡された。
淡いカラーリングでふわふわの肌触りの――ルームウェア。

「一日中ぐーたらするんやろ!?」
「え?」

半笑いの声が出る。
やって、謙也くんのお母さんうっきうきのお目々で私のこと見とるんやもん。
助けを求めるみたいに、謙也くんに視線向けたら「すまん」と謝られた。

「今日、家でのんびりする言うたら――」
「せやったら、こういうんあった方がええやん!」
「――って、張り切ってもうて」

おかんが、と付け足す謙也くんは既に疲れ切っているようで……。
正直、笑いを禁じえへんけど私はどうにかこうにか「そうなん」と返した。

「ええから、早よ上がり!」

言うなり、謙也くんのお母さんが私の手を引いた。
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