13話:幸せの続き
やんやと盛り上がった飲み会もお開きとなった。
ユウジと小春はこのあと飲み直すみたいやけど、ひとまずは解散する流れで、それぞれ冬用コートを着込む。
肩をすぼめて店を後にすれば、空気が冷たくて思わず顔をマフラーの中に埋め込んだ。
視線の先で、真優と謙也が何やら楽しそうに話していて『ああ、ほんまに結婚するんや』と感慨深くなる。
ガキの頃から思とったけど、似合いの二人やな。
全員が外に出たことを確認すると、真優が俺らの方を向いて声を張った。
「ほんなら、近いうちに招待状送らせてもらうよって」
謙也も続ける。
「そんときは、よろしゅうな!」
俺は感無量になって涙ぐみながら、真優の肩をぽんっと叩いた。
「ほんま、幸せになりや」
中学んとき、クラスでも部活でも部長やった俺のこと、支えてくれとった真優。
謙也と仲良うなって、流れで俺とも仲良うなって、一緒に散々あほなことした真優。
家でも学校でも大変なことたくさんあったのに、いっつも明るい笑顔で俺ら鼓舞してくれとった真優。
いろんな思いが俺の胸の奥から込み上げてきて、言葉にならん感情が溢れた。
急に感極まって俺は目元を覆った。
突然、泣き出した俺に肩を叩かれた真優は、驚きと焦りで、若干身を引いている。
「え……なに? 酔うてんの?」
「酔うてへん」
「……怖いんやけど」
「いや、ほんまに真優、今まで苦労してきたさかいに」
ぐずぐずの俺は続けて「なんや、娘を嫁にやる気分や」と呟いた。
真優は淡い水色の大きな瞳をさらに大きく見開いたかと思えば「あっは!」と吹き出した。
目じりに涙が滲んでいる。
「同い年なんよな」
完全に笑い泣きしとる。
真優はあははっ! と、笑い声をあげながら、こぼれ出る涙を指先で拭って。
ぐずぐずの俺に、泣き笑う真優。
謙也は俺らの様子に呆気に取られていたかと思うと、ふっと柔らかな表情を浮かべ、真優の涙を指で拭う。
「おい、真優泣かすなや。お義父さん」
真優の肩に手を添えながら、謙也は俺に視線を向ける。場が一瞬どよめいて笑いに包まれた。
俺は「お義父さんやあらへん」と鼻をスンっとすする。
そんな俺らを見る、みんなの空気はあたたかい。
全員が全員、謙也と真優の門出を喜んどるし、きっと、俺がぐずぐずになっとる理由も分かってくれとる。
謙也はふっと肩の力を抜くと「安心しいや」と続けた。
「真優の笑顔守るんが俺の役目やから」
俺は謙也をまじまじと見た。
こいつ、こんな男前やったか?
もっと、こうヘタレで、打たれ弱くて――。
そこまで考えて、俺は首を横に振った。
真優から見た謙也はずっとこんなんやったんやろうな。
どんなときやって、一番近くで真優を支え続けた謙也。
いざというとき頼りになって、絶対守ってくれる謙也に真優は惹かれたんやろうと思う。
「……なんやそれ。めちゃええ話やん」
すっかり泣いて鼻の赤くなった俺の肩を真優がぽんっと叩く。
「そ、いい話やの。やから、当日はみんなでたくさん笑って過ごすんが一番ええな!」
水色の瞳と目が合って、ハッとさせられた。
ここにはもう、なんでも一人で抱え込む女の子はおらん。
俺は「せやな!」と謙也と真優を、思いきり抱き締めた。
謙也と真優が互いに見合わせ――満面の笑みを浮かべる。
それから、真優が手近にいた千歳の手を、謙也が小春の腕を引いた。
「! なん? 真優? どないしたと!?」
「やーん! 全員でハグ?」
千歳が笑いながら加わって、小春も目を丸くして笑っている。
やけど、次の瞬間ユウジが思い切り声を張った。
「もうええわ! こうなったら全員集合や!」
途端にわっと輪が広がる。
俺らはわちゃわちゃと肩を寄せ合い、大きなひとつの塊になった。
まるで、中学んとき全国行く前に学校のテニスコートで円陣組んだときみたいに。
「ええか、みんな!」
肩を組んだ腕に力が入る。
「式当日も笑かしたもん勝ちや!」
俺は人目もはばからず、大きな声を上げる。
その言葉をきっかけに、全員の声が重なった。
「笑かしたもん勝ちやっ!!」
真優の満面の笑みに。
謙也の決心に。
そして俺ら全員の「幸せになってほしい」という願いに。
笑い声が夜空に弾けた。
ユウジと小春はこのあと飲み直すみたいやけど、ひとまずは解散する流れで、それぞれ冬用コートを着込む。
肩をすぼめて店を後にすれば、空気が冷たくて思わず顔をマフラーの中に埋め込んだ。
視線の先で、真優と謙也が何やら楽しそうに話していて『ああ、ほんまに結婚するんや』と感慨深くなる。
ガキの頃から思とったけど、似合いの二人やな。
全員が外に出たことを確認すると、真優が俺らの方を向いて声を張った。
「ほんなら、近いうちに招待状送らせてもらうよって」
謙也も続ける。
「そんときは、よろしゅうな!」
俺は感無量になって涙ぐみながら、真優の肩をぽんっと叩いた。
「ほんま、幸せになりや」
中学んとき、クラスでも部活でも部長やった俺のこと、支えてくれとった真優。
謙也と仲良うなって、流れで俺とも仲良うなって、一緒に散々あほなことした真優。
家でも学校でも大変なことたくさんあったのに、いっつも明るい笑顔で俺ら鼓舞してくれとった真優。
いろんな思いが俺の胸の奥から込み上げてきて、言葉にならん感情が溢れた。
急に感極まって俺は目元を覆った。
突然、泣き出した俺に肩を叩かれた真優は、驚きと焦りで、若干身を引いている。
「え……なに? 酔うてんの?」
「酔うてへん」
「……怖いんやけど」
「いや、ほんまに真優、今まで苦労してきたさかいに」
ぐずぐずの俺は続けて「なんや、娘を嫁にやる気分や」と呟いた。
真優は淡い水色の大きな瞳をさらに大きく見開いたかと思えば「あっは!」と吹き出した。
目じりに涙が滲んでいる。
「同い年なんよな」
完全に笑い泣きしとる。
真優はあははっ! と、笑い声をあげながら、こぼれ出る涙を指先で拭って。
ぐずぐずの俺に、泣き笑う真優。
謙也は俺らの様子に呆気に取られていたかと思うと、ふっと柔らかな表情を浮かべ、真優の涙を指で拭う。
「おい、真優泣かすなや。お義父さん」
真優の肩に手を添えながら、謙也は俺に視線を向ける。場が一瞬どよめいて笑いに包まれた。
俺は「お義父さんやあらへん」と鼻をスンっとすする。
そんな俺らを見る、みんなの空気はあたたかい。
全員が全員、謙也と真優の門出を喜んどるし、きっと、俺がぐずぐずになっとる理由も分かってくれとる。
謙也はふっと肩の力を抜くと「安心しいや」と続けた。
「真優の笑顔守るんが俺の役目やから」
俺は謙也をまじまじと見た。
こいつ、こんな男前やったか?
もっと、こうヘタレで、打たれ弱くて――。
そこまで考えて、俺は首を横に振った。
真優から見た謙也はずっとこんなんやったんやろうな。
どんなときやって、一番近くで真優を支え続けた謙也。
いざというとき頼りになって、絶対守ってくれる謙也に真優は惹かれたんやろうと思う。
「……なんやそれ。めちゃええ話やん」
すっかり泣いて鼻の赤くなった俺の肩を真優がぽんっと叩く。
「そ、いい話やの。やから、当日はみんなでたくさん笑って過ごすんが一番ええな!」
水色の瞳と目が合って、ハッとさせられた。
ここにはもう、なんでも一人で抱え込む女の子はおらん。
俺は「せやな!」と謙也と真優を、思いきり抱き締めた。
謙也と真優が互いに見合わせ――満面の笑みを浮かべる。
それから、真優が手近にいた千歳の手を、謙也が小春の腕を引いた。
「! なん? 真優? どないしたと!?」
「やーん! 全員でハグ?」
千歳が笑いながら加わって、小春も目を丸くして笑っている。
やけど、次の瞬間ユウジが思い切り声を張った。
「もうええわ! こうなったら全員集合や!」
途端にわっと輪が広がる。
俺らはわちゃわちゃと肩を寄せ合い、大きなひとつの塊になった。
まるで、中学んとき全国行く前に学校のテニスコートで円陣組んだときみたいに。
「ええか、みんな!」
肩を組んだ腕に力が入る。
「式当日も笑かしたもん勝ちや!」
俺は人目もはばからず、大きな声を上げる。
その言葉をきっかけに、全員の声が重なった。
「笑かしたもん勝ちやっ!!」
真優の満面の笑みに。
謙也の決心に。
そして俺ら全員の「幸せになってほしい」という願いに。
笑い声が夜空に弾けた。