13話:幸せの続き
全員が集まって、近況報告に花が咲く。
「俺、今服のデザインやっとるで」
ユウジが言った。こいつ、昔っから衣装作りとかデザインとか得意やったしな。
「うちは研究職。仕事はハードやけど、やりがいあるわぁ」
小春も昔から頭良かったし、天職やろ。
「俺は旅行代理店。休み合わへん友達の代わりに旅行してSNS更新しとるようなもんやな」
小石川が旅行代理店で働いとるのは知っとったけど、今度使わせてもらおかな。
「ワイ、今もずーっとテニスしとるで!」
金ちゃんはあれから、プロテニスプレイヤーになって世界飛び回っとる。あのゴンタクレが……と感慨深い。
「ワシは寺に入って坊さんやっとるわ」
つい「銀らしいな」言うてしもた。
「みんなよかね。俺は今も変わらず好きなときに好きなことしよるよ」
千歳も、らしいなと思った。やけど、そろそろ落ち着いてくれな、こっちが心配になる。
順繰りに回ってきた近況報告が俺の番になる。
「俺は薬剤師やっとるよ」
多分、みんなの中でも予定調和。
中学の頃からきっと俺は薬剤師にでもなるやろうと思われとったんとちゃうか。
案の定、こう言えば真優がカラカラ笑って口を開いた。
「薬に紛れて毒草とか渡してへん?」
「……それやったら捕まるんよ」
ちゅーか、普通にそんなことするわけないやろ。
ほんま、こいつ昔っから変わらんな。
俺はため息を吐き、咳払いをしてから謙也に「謙也は?」と振る。
まあ、知っとるんやけど。
謙也は小さく笑ったあと「やっと臨床研修終わって」と続けた。
「次の四月からちゃんと医者として独立するで」
テニス部として一つの目標に向かって切磋琢磨した仲間が、今それぞれ別の方向に歩いていることにある種の感動を覚える。
俺は「みんな、頑張っとるんやな」とぽつりと呟くと、気を取り直したように「ほんで?」と謙也に問い掛けた。
「えらい急に声掛けてきたけど。なんかあったん?」
謙也の目が見開かれて、照れくさそうに頭を掻いた。
それから謙也は真優を見て、俺たち全員に向き直る。
「実は、真優と結婚することなって」
小春の「やっ! めでたいやないの!」という一言を皮切りに、俺たちは一気に祝福モードに切り替わった。
「ほんまか!」
一氏が身を乗り出して、謙也の肩を抱く。
「おめでとうな。謙也、真優」
銀のあたたかな視線が謙也と真優に向けたれた。
「ありがとうな、銀さん」
真優が照れくさそうに笑っている。
「なんやワイ、めっちゃ嬉しい!」
「それで急にみんなに声掛けたんか」
「よかよか! ほんにめでたいばい!」
各々が祝福の言葉を述べる中、俺は「ついにか……」とぽつりと言った。
すぐ隣に座っていた真優が、ほんまに幸せそうな顔で「ついにやの」と笑う。
「謙也くんの臨床やっと終わって。そのタイミングで」
「ほんまにおめでとうな」
ユウジや金ちゃんにもみくちゃにされとる謙也を横目に見ながら、俺は落ち着いたトーンで真優に告げる。
返ってきた「ありがとうな」という言葉に、彼女のこれまでの人生が詰まっているように感じて、心臓を掴まれた気がした。
「で? 自分ら結婚式どないするん?」
ユウジが唐突に投げ掛ける。
真優は目を瞬かせると、一瞬ちらりと謙也を見て小さく笑った。
「派手なんは舞台だけで十分やし、式は仲ええ子らだけでする予定」
「派手好きな謙也がよう認めたな」
俺が思わず、といった調子で口にすれば憤慨した様子で謙也が「いや、俺かて盛大にしたいで!?」と続ける。
「ほら、ゴンドラで登場とかさぁ!!」
「センスとち狂いすぎやろ」
この時代にゴンドラって……お前……。
真優が冷めた目で「無理やろ?」と俺たちに同意を求める。
無理やな。
「うちはほんまに大切な人たちとたくさん話して、笑ってっていうあったかい式にしたいの」
拗ねたように告げる真優を見る謙也の目は優しい。
それから謙也はやれやれと笑った。
「こう言われたら叶えんわけにいかんやろ?」
わざとらしく肩をすくめる謙也に千歳が「そやね」と同意する。
その姿が愉快で、謙也と真優らしくて。
俺はふはっと吹き出した。
「なんにせよ、結婚する前から尻に敷かれとるなぁ!」
言った瞬間、場に笑いが巻き起こる。
言われた謙也は一瞬「なっ……!?」と言葉に詰まっとったけど、ややもすると周囲の空気に飲まれて同じように笑いだした。
「俺、今服のデザインやっとるで」
ユウジが言った。こいつ、昔っから衣装作りとかデザインとか得意やったしな。
「うちは研究職。仕事はハードやけど、やりがいあるわぁ」
小春も昔から頭良かったし、天職やろ。
「俺は旅行代理店。休み合わへん友達の代わりに旅行してSNS更新しとるようなもんやな」
小石川が旅行代理店で働いとるのは知っとったけど、今度使わせてもらおかな。
「ワイ、今もずーっとテニスしとるで!」
金ちゃんはあれから、プロテニスプレイヤーになって世界飛び回っとる。あのゴンタクレが……と感慨深い。
「ワシは寺に入って坊さんやっとるわ」
つい「銀らしいな」言うてしもた。
「みんなよかね。俺は今も変わらず好きなときに好きなことしよるよ」
千歳も、らしいなと思った。やけど、そろそろ落ち着いてくれな、こっちが心配になる。
順繰りに回ってきた近況報告が俺の番になる。
「俺は薬剤師やっとるよ」
多分、みんなの中でも予定調和。
中学の頃からきっと俺は薬剤師にでもなるやろうと思われとったんとちゃうか。
案の定、こう言えば真優がカラカラ笑って口を開いた。
「薬に紛れて毒草とか渡してへん?」
「……それやったら捕まるんよ」
ちゅーか、普通にそんなことするわけないやろ。
ほんま、こいつ昔っから変わらんな。
俺はため息を吐き、咳払いをしてから謙也に「謙也は?」と振る。
まあ、知っとるんやけど。
謙也は小さく笑ったあと「やっと臨床研修終わって」と続けた。
「次の四月からちゃんと医者として独立するで」
テニス部として一つの目標に向かって切磋琢磨した仲間が、今それぞれ別の方向に歩いていることにある種の感動を覚える。
俺は「みんな、頑張っとるんやな」とぽつりと呟くと、気を取り直したように「ほんで?」と謙也に問い掛けた。
「えらい急に声掛けてきたけど。なんかあったん?」
謙也の目が見開かれて、照れくさそうに頭を掻いた。
それから謙也は真優を見て、俺たち全員に向き直る。
「実は、真優と結婚することなって」
小春の「やっ! めでたいやないの!」という一言を皮切りに、俺たちは一気に祝福モードに切り替わった。
「ほんまか!」
一氏が身を乗り出して、謙也の肩を抱く。
「おめでとうな。謙也、真優」
銀のあたたかな視線が謙也と真優に向けたれた。
「ありがとうな、銀さん」
真優が照れくさそうに笑っている。
「なんやワイ、めっちゃ嬉しい!」
「それで急にみんなに声掛けたんか」
「よかよか! ほんにめでたいばい!」
各々が祝福の言葉を述べる中、俺は「ついにか……」とぽつりと言った。
すぐ隣に座っていた真優が、ほんまに幸せそうな顔で「ついにやの」と笑う。
「謙也くんの臨床やっと終わって。そのタイミングで」
「ほんまにおめでとうな」
ユウジや金ちゃんにもみくちゃにされとる謙也を横目に見ながら、俺は落ち着いたトーンで真優に告げる。
返ってきた「ありがとうな」という言葉に、彼女のこれまでの人生が詰まっているように感じて、心臓を掴まれた気がした。
「で? 自分ら結婚式どないするん?」
ユウジが唐突に投げ掛ける。
真優は目を瞬かせると、一瞬ちらりと謙也を見て小さく笑った。
「派手なんは舞台だけで十分やし、式は仲ええ子らだけでする予定」
「派手好きな謙也がよう認めたな」
俺が思わず、といった調子で口にすれば憤慨した様子で謙也が「いや、俺かて盛大にしたいで!?」と続ける。
「ほら、ゴンドラで登場とかさぁ!!」
「センスとち狂いすぎやろ」
この時代にゴンドラって……お前……。
真優が冷めた目で「無理やろ?」と俺たちに同意を求める。
無理やな。
「うちはほんまに大切な人たちとたくさん話して、笑ってっていうあったかい式にしたいの」
拗ねたように告げる真優を見る謙也の目は優しい。
それから謙也はやれやれと笑った。
「こう言われたら叶えんわけにいかんやろ?」
わざとらしく肩をすくめる謙也に千歳が「そやね」と同意する。
その姿が愉快で、謙也と真優らしくて。
俺はふはっと吹き出した。
「なんにせよ、結婚する前から尻に敷かれとるなぁ!」
言った瞬間、場に笑いが巻き起こる。
言われた謙也は一瞬「なっ……!?」と言葉に詰まっとったけど、ややもすると周囲の空気に飲まれて同じように笑いだした。