13話:幸せの続き
メッセージが送られてきてから、あれよあれよという間に日程が決まり、俺たちはとある居酒屋に集まっとった。
こういうときの謙也の速さだけは昔から変わらんな!
さすが、浪速のスピードスター。
「乾杯っ!」
当時のメンバーは大体集まって――主催の謙也に始まり、ユウジに小春、小石川。銀、金ちゃん。それから、放浪癖のある千歳も今日は珍しく会の最初からおる。
唯一、財前は不参加やけど、理由が『仕事忙しいし、あの騒がしい空気今しんどいんでパス』やったんが、あいつらしいて笑った。
きっと、それ以外の理由もあるんやろけど……。
俺はぼんやりそんなことを思いながら、ユウジに肩組まれて笑とる謙也に視線を送った。
謙也は楽しそうにビール飲んどる――と、思たらポケットに手突っ込んでスマホを取り出した。
それから、ちょっと操作をして口を開く。
「真優、もう着くみたいやわ」
言うなり謙也は「ちょお迎えに行ってくるなー」と席を立った。
主催者のいなくなったテーブルでぽつりとユウジが呟く。
「相変わらずやな、謙也」
思わずと言った調子で言うもんやから、笑てしもた。
「ほんまやねぇ」
小春が同意した。
「中学んときに真優ちゃんと付き合うてから、ずーっとラブラブ」
「せやなあ……高校んときもずっと一緒におったなぁ」
二人と同じ高校やった俺は当時を懐かしみながら続ける。
「なんや安定しすぎとって、担任も『今日、小鳥遊休みか?』って謙也に聞いとったん思い出したわ」
途端に笑いが広がる。
そのとき、不意に鈴を転がしたような声が俺たちの耳に入った。
「や、なんやの。楽しそうにしとるやん」
高い声に一斉に視線が集まる。
声聞いただけで空気がぱっと明るくなる声の主は「おまたせ! 遅れてごめんな」と顔の前で手を合わせている。
「真優! 久しぶりやな!」
誰からともなく声が掛かり、真優はにっこりほほ笑んだ。
その横で謙也が「スーツケースこっち置いとくで」なんて声を掛けとる。
「なんや、どっか行ってたん?」
俺の隣に座った真優に思わず問えば「んーん」と続ける。
「今日、本番やって……あの中身ドレス」
真優は店員に「みんなと同じ飲み物ください」と言いながらスーツケースを指差した。
真優は相変わらずピアニストとして活躍しとる。
大学在学中に世界的コンクールで入賞して、一躍時の人となっとったのも記憶に新しい。
今は落ち着いとるみたいやけど、それでも街中でポスターを見かけるたび、ほんますごいなと感心しとったり。
当の本人は、店員から受け取ったビールを一口飲んで美味しそうに震えとる。
あの頃と同じ笑い方やのに、まとう空気が大人びとった。
「やっぱ本番後のビール最高やな! 最後の方、このことしか考えてへんかったんよね」
「演奏のこと考えや……」
俺と真優挟んで反対側に座った謙也が呆れ口調で続ける。
「あと、弱いんやからあんま飲みな」
真優は、もう一口だけちびりとビールをすすって「ええー?」と口を尖らせる。
「ええやん。今日は謙也くんいてくれてるねんし」
「そういうこと言うてるんやないんは、分かっとるよな?」
謙也が真優の頬をつねっている。
真優はケラケラ笑うと素直に「はぁい」と肩をすくめた。
そんな二人のやり取りを見て、俺は小さく笑う。
――こいつら、ほんま昔っから変わらんな。
謙也が「ったく」と真優の頬を放せば、真優は頬をさすりながら、俺たちを順繰りに見た。
「懐かしいなぁ。こうやってみんなの顔見れて嬉しいわ」
それから、真優は「あんな」と続ける。
「うちさっきまで光と仕事しとってんよ」
「そうなん?」
思わず言葉が口を吐いて出る。
あいつ、今そんな仕事しとんの?
真優は頷くと手に持っていたビールをテーブルに置いた。
「無理矢理引っ張って来てもよかってんけど。なんや、ほんまに忙しそうやったさかいに」
光ん荷物のとこにコーヒーとチョコ置いて出てきた、と付け足した真優はあっけらかんとしとって。
聞けば、財前はコンサートホール付きのライブラリアンとして楽譜の収集や管理、整理、手配、調達などを専門的に行っているらしい。
今日真優が財前訪ねたんは、次の演奏会の譜面受け取りに行くためだとか。
「手配したピアコンのオケ譜、前の団体の管理が雑やってな。音符消えてしもてたみたい」
真優が哀れみを含んだ目をして頬杖をついた。
それから、一つ咳払いをして財前を模した声音で告げる。
「『ほんまありえへんっすわ……』って言いながら必死に譜面書いとったよ」
財前も頑張っとるんやな。
こういうときの謙也の速さだけは昔から変わらんな!
さすが、浪速のスピードスター。
「乾杯っ!」
当時のメンバーは大体集まって――主催の謙也に始まり、ユウジに小春、小石川。銀、金ちゃん。それから、放浪癖のある千歳も今日は珍しく会の最初からおる。
唯一、財前は不参加やけど、理由が『仕事忙しいし、あの騒がしい空気今しんどいんでパス』やったんが、あいつらしいて笑った。
きっと、それ以外の理由もあるんやろけど……。
俺はぼんやりそんなことを思いながら、ユウジに肩組まれて笑とる謙也に視線を送った。
謙也は楽しそうにビール飲んどる――と、思たらポケットに手突っ込んでスマホを取り出した。
それから、ちょっと操作をして口を開く。
「真優、もう着くみたいやわ」
言うなり謙也は「ちょお迎えに行ってくるなー」と席を立った。
主催者のいなくなったテーブルでぽつりとユウジが呟く。
「相変わらずやな、謙也」
思わずと言った調子で言うもんやから、笑てしもた。
「ほんまやねぇ」
小春が同意した。
「中学んときに真優ちゃんと付き合うてから、ずーっとラブラブ」
「せやなあ……高校んときもずっと一緒におったなぁ」
二人と同じ高校やった俺は当時を懐かしみながら続ける。
「なんや安定しすぎとって、担任も『今日、小鳥遊休みか?』って謙也に聞いとったん思い出したわ」
途端に笑いが広がる。
そのとき、不意に鈴を転がしたような声が俺たちの耳に入った。
「や、なんやの。楽しそうにしとるやん」
高い声に一斉に視線が集まる。
声聞いただけで空気がぱっと明るくなる声の主は「おまたせ! 遅れてごめんな」と顔の前で手を合わせている。
「真優! 久しぶりやな!」
誰からともなく声が掛かり、真優はにっこりほほ笑んだ。
その横で謙也が「スーツケースこっち置いとくで」なんて声を掛けとる。
「なんや、どっか行ってたん?」
俺の隣に座った真優に思わず問えば「んーん」と続ける。
「今日、本番やって……あの中身ドレス」
真優は店員に「みんなと同じ飲み物ください」と言いながらスーツケースを指差した。
真優は相変わらずピアニストとして活躍しとる。
大学在学中に世界的コンクールで入賞して、一躍時の人となっとったのも記憶に新しい。
今は落ち着いとるみたいやけど、それでも街中でポスターを見かけるたび、ほんますごいなと感心しとったり。
当の本人は、店員から受け取ったビールを一口飲んで美味しそうに震えとる。
あの頃と同じ笑い方やのに、まとう空気が大人びとった。
「やっぱ本番後のビール最高やな! 最後の方、このことしか考えてへんかったんよね」
「演奏のこと考えや……」
俺と真優挟んで反対側に座った謙也が呆れ口調で続ける。
「あと、弱いんやからあんま飲みな」
真優は、もう一口だけちびりとビールをすすって「ええー?」と口を尖らせる。
「ええやん。今日は謙也くんいてくれてるねんし」
「そういうこと言うてるんやないんは、分かっとるよな?」
謙也が真優の頬をつねっている。
真優はケラケラ笑うと素直に「はぁい」と肩をすくめた。
そんな二人のやり取りを見て、俺は小さく笑う。
――こいつら、ほんま昔っから変わらんな。
謙也が「ったく」と真優の頬を放せば、真優は頬をさすりながら、俺たちを順繰りに見た。
「懐かしいなぁ。こうやってみんなの顔見れて嬉しいわ」
それから、真優は「あんな」と続ける。
「うちさっきまで光と仕事しとってんよ」
「そうなん?」
思わず言葉が口を吐いて出る。
あいつ、今そんな仕事しとんの?
真優は頷くと手に持っていたビールをテーブルに置いた。
「無理矢理引っ張って来てもよかってんけど。なんや、ほんまに忙しそうやったさかいに」
光ん荷物のとこにコーヒーとチョコ置いて出てきた、と付け足した真優はあっけらかんとしとって。
聞けば、財前はコンサートホール付きのライブラリアンとして楽譜の収集や管理、整理、手配、調達などを専門的に行っているらしい。
今日真優が財前訪ねたんは、次の演奏会の譜面受け取りに行くためだとか。
「手配したピアコンのオケ譜、前の団体の管理が雑やってな。音符消えてしもてたみたい」
真優が哀れみを含んだ目をして頬杖をついた。
それから、一つ咳払いをして財前を模した声音で告げる。
「『ほんまありえへんっすわ……』って言いながら必死に譜面書いとったよ」
財前も頑張っとるんやな。