9話:The Warmth Between Us.

すっかり暗くなった街を、当たり前のように手を繋いで歩く。
ほうっと吐く息が白くなってネオンの灯りの中に、あっという間に溶けていった。

帰宅ラッシュの時間も重なって駅は人でごった返している――にしても、自棄に人が多い。

「や、なんか人多ない?」

真優が人波を避けるように俺の腕にすり寄った。

周囲からは、スーツの擦れる音や誰かのため息。
改札機の電子音がひっきりなしに重なり合う。

構内に響くアナウンスの声が何度もかぶって、言葉の輪郭は曖昧になっとった。
それでも「遅延」だの「運転見合わせ」だのという単語だけが、断片的に耳に残る。

俺は真優の手を強く握って引き寄せながら「多いな?」と同意する。
なんでやろ? と見合わせたとき、ちょうどアナウンスが入った。


『現在、○○線は信号トラブルで運転を見合わせております。お客様には大変ご迷惑を~……』


「あちゃ、止まっとるん」
「マジか。運ないな」
俺たちは電光掲示板を見上げ、仕方なさそうに笑う。
「しゃーないな」
「やね。ちょお待っとこ」

吹きっさらしのホームに北風が流れ込む。
ただでさえ寒いのに、こうも待ちぼうけを食らうとは。

そんなことを考えながら、俺は真優に「コーヒーと紅茶どっちがええ?」と問い掛けた。

真優は鼻の頭を赤くしながら、即答する。
「あったかいミルクティーがええ!」
その勢いに小さく笑いながら、俺は自販機でホット缶を購入して真優の手に押し付ける。

「ほれ」
「ありがとう」
「おん」

そう言いながら、運よく見つけたベンチにできるだけくっついて腰掛ける。
真優は少し赤くなった指先でホット缶を握りしめながら「これだけでちょお幸せ感じるな」なんて、笑顔を浮かべている。

その笑顔が真っ直ぐで、嘘偽りなんて一切なくて。
俺はなんだか嬉しくなって「せやな」と同意した。
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