9話:The Warmth Between Us.

今日も一日の授業が終わった。
一月に入って私立の受験やらで、クラスメイト全員が出席している日も減ってきた。
来週には学校で行われる最後の模試もあるし、ほんま教室全体が勉強一色って感じ。

こないだ、塾で受けた模試はどうにかA判定に乗せられたから、このままの調子で勢いに乗っていきたい。

来月、同じ高校の音楽科を受ける真優もきっと追い込みかけとるんやろうから、邪魔はしたくないねんけど。
そんなことを考えながら、俺は鞄の中身整理しとる真優を盗み見る。

……ちょお俺が限界。

鞄を肩にかけ立ち上がった真優に俺は声を掛ける。

「真優、今日ってこのあとなんか用事ある?」

そう問えば、真優の淡い水色の瞳が俺に向けられて、不思議そうに小首を傾げる。
「ないけど……なんで?」
忙しいのは俺の方やろ? と訴えてくる瞳に俺は思わず笑ってしもた。

「参考書買いに梅田まで行くん着いて来てくれん?」
「あのおっきい本屋さん? 別に構わへんよ」
「ほんなら一緒に行こや!」

嘘は言うてない。
欲しい参考書、地元の本屋はどこも取り扱ってなくて。
取り寄せもできるって店員に言われたんやけど、そうすると俺の苦手な待ち時間が発生するやん?
受験前に待ち時間とか特に無理やし。

そんで、その店員に近隣で置いてあるって教えられたんが、梅田のでっかい本屋。
電車乗って買いに行かなあかんから、ちょい面倒やけど背に腹は代えられん。

まあ、目的はそれだけやない。
俺はいまだ不思議そうな顔しとる真優に、そっと耳打ちする。

「ちょっとだけデートしたくなってもた」

そら、真優とは毎日一緒に帰ってるけど。
十二月にイルミネーション見に行ってから、ろくにデートしてへんし。

いい加減、我慢の限界。
完全に真優不足起こしとって、俺の身が持たん。

真優は驚いたように目を見開くと、まじまじと俺の顔を真っ直ぐ覗き込んできて――納得したように笑った。

「ええね」

たった一言。
やけど、嬉しそうに頬染めて返してくるんやから、誘って正解やったっぽい。

学校を出て駅へ向かう。
オレンジ色の太陽が俺たちの影を照らす中、木枯らしが吹き荒む。
学校から駅までそないに遠いわけやないけど、身体の芯から熱を奪うには十分な距離で。

「さぶいなぁ」
「寒いなぁ」

俺たちはほぼ同時に呟いた。
それだけやのに、なんやおもろくて笑ってしまう。
真優とおったら、何しとっても楽しいんよな。

そんなことを考えとるうちに、俺たちは駅について電車に乗り込んだ。
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