8話:雪の口づけ
二時間目から降り始めた雪は止むことを知らず、積もること目測二十センチ。
朝とすっかり様変わりした風景に驚きつつ、私たちは学校を後にする。
「やっぱ積もったかぁ!」
「大阪でこんなに降るん、珍しな」
謙也くんも昇降口の先の銀世界に目を丸くしている。
「ね、あんま聞かへんもん」
私は半分呆れた調子で答えた。
「なんや真優慣れてへん?」
「慣れてへんけど……。京都おったときは、毎年一回はこんな日あったから」
「あー、確かに京都そのイメージあるかも」
雪積もった金閣寺とか、と謙也くんは付け加える。
私は「まあ、そんなとこ」と言いつつ、靴を履き替えた。
それから二人揃って、銀世界に一歩足を踏み出す。
サクサクと音を立てて沈む新雪。
冷え込む日に積もった雪はさらさらで、水気も少ない。
ふと降り続くぼたん雪に目をやると、無意識に口角が上がった。
どんだけ積もるんやろ。
寒いんは苦手やけど、雪が降るとなんでかテンション上がってまうんよな。
そんなことを考えていると、少し離れた空き地から「真優! 見てみぃ!」と、謙也くんの声が聞こえてきた。
見ると彼は小さな雪だるまを作ってはしゃいでいる。
私は思わずふはっと吹き出した。
「楽しんどるなぁ」
「こんな日なかなかないやん! 楽しまな損やで!」
そう言うなり、謙也くんは私にすくった雪を勢い付けて投げかけてきた。
一瞬で視界が真っ白になって、私は全身雪まみれ。
突然の出来事過ぎて、声すら出ん。
謙也くんは目の前でお腹抱えて思い切り笑うとる。
私は彼をじぃっと見つめると、無言のまま雪玉を作り始めた。
手の温度で雪まとめ、一心不乱に握り固める。
ぎゅうぎゅう雪を握り固める私を見て、さすがにまずいと悟ったのか謙也くんは「す、すまんかったって!」謝ってきた。
やけど、口角は上がったまんま。
私は手に雪玉――もとい、氷の塊を持ったまま、謙也くんに詰め寄る。
「ちょお待て! それはさすがに痛いっ!」
後ずさりする謙也くんをずんずん空き地の奥へ追いやって、ようやく私は口を開いた。
「……覚悟しぃや」
「ごめんて!!」
両手を前に私を遠ざけようとする謙也くんの手をつかんで逃げられへんようにしてから、私は雪玉を思い切り振りかぶる。――と、そのとき。
「あっ」
謙也くんが雪でずるりとバランスを崩して、うしろに転んだ。
同時に、謙也くんの手に引っ張られるようにして、私もふかふかの雪の中に沈んでいく。
「わっ!?」
「! あっぶなっ」
瞬間、謙也くんの腕が私を守るように回された。
鈍い衝撃音が、雪に飲み込まれて消えていく。
朝とすっかり様変わりした風景に驚きつつ、私たちは学校を後にする。
「やっぱ積もったかぁ!」
「大阪でこんなに降るん、珍しな」
謙也くんも昇降口の先の銀世界に目を丸くしている。
「ね、あんま聞かへんもん」
私は半分呆れた調子で答えた。
「なんや真優慣れてへん?」
「慣れてへんけど……。京都おったときは、毎年一回はこんな日あったから」
「あー、確かに京都そのイメージあるかも」
雪積もった金閣寺とか、と謙也くんは付け加える。
私は「まあ、そんなとこ」と言いつつ、靴を履き替えた。
それから二人揃って、銀世界に一歩足を踏み出す。
サクサクと音を立てて沈む新雪。
冷え込む日に積もった雪はさらさらで、水気も少ない。
ふと降り続くぼたん雪に目をやると、無意識に口角が上がった。
どんだけ積もるんやろ。
寒いんは苦手やけど、雪が降るとなんでかテンション上がってまうんよな。
そんなことを考えていると、少し離れた空き地から「真優! 見てみぃ!」と、謙也くんの声が聞こえてきた。
見ると彼は小さな雪だるまを作ってはしゃいでいる。
私は思わずふはっと吹き出した。
「楽しんどるなぁ」
「こんな日なかなかないやん! 楽しまな損やで!」
そう言うなり、謙也くんは私にすくった雪を勢い付けて投げかけてきた。
一瞬で視界が真っ白になって、私は全身雪まみれ。
突然の出来事過ぎて、声すら出ん。
謙也くんは目の前でお腹抱えて思い切り笑うとる。
私は彼をじぃっと見つめると、無言のまま雪玉を作り始めた。
手の温度で雪まとめ、一心不乱に握り固める。
ぎゅうぎゅう雪を握り固める私を見て、さすがにまずいと悟ったのか謙也くんは「す、すまんかったって!」謝ってきた。
やけど、口角は上がったまんま。
私は手に雪玉――もとい、氷の塊を持ったまま、謙也くんに詰め寄る。
「ちょお待て! それはさすがに痛いっ!」
後ずさりする謙也くんをずんずん空き地の奥へ追いやって、ようやく私は口を開いた。
「……覚悟しぃや」
「ごめんて!!」
両手を前に私を遠ざけようとする謙也くんの手をつかんで逃げられへんようにしてから、私は雪玉を思い切り振りかぶる。――と、そのとき。
「あっ」
謙也くんが雪でずるりとバランスを崩して、うしろに転んだ。
同時に、謙也くんの手に引っ張られるようにして、私もふかふかの雪の中に沈んでいく。
「わっ!?」
「! あっぶなっ」
瞬間、謙也くんの腕が私を守るように回された。
鈍い衝撃音が、雪に飲み込まれて消えていく。