7話:冬空に手を繋ぐ

光の雨をくぐって、来た道をのんびり引き返す。
少しでも長く一緒にいられるようにと、この時間を慈しみながら。

街の灯りが私たちの手の中に反射して、金色の輪のようにきらめいた。
まるで、未来の約束をそっと象ったみたいに。

遠目に駅が見えてきたとき、ふっと謙也くんが呟いた。
ただ、呟いたと言っても思いついたから、というより意を決しての方が近い。

「……なあ、受験終わったら指輪買いに行かん?」

思わず謙也くんの横顔をまじっと見上げて「え? 指輪?」と繰り返す。
そうすれば、気恥ずかしそうに謙也くんの目だけが動いて、横目に私を映し込む。

「おん、お揃いの。ほんまもんはまだ先になってまうけど」

思いがけない申し出にすぐに返事が返せなかった。
ただ、私が穴が開くほど謙也くんを見つめているものだから、居心地が悪くなってきたのか、謙也くんはふいっと視線を逸らす。
頬がわずかに赤い。

「いや、提案な。真優がいらん言うたら、それでええけど」
「ここまで格好つけといて逃げるんやめてくれん?」
「や、待って? 逃げたんとちゃうし。真優が返事よこさんから困ってるんかなって思ってやな?」
「ふぅん」

少しだけからかえば、むきになって返してくる謙也くんが愛おしい。
私はふふっと笑うと謙也くんの腕を引いて自分に引き寄せる。
少しだけ屈んだ謙也くんの耳元に背伸びしてそっと耳打ちする。

「ほしいに決まってるやん」

謙也くんは一瞬固まって、顔がみるみる真っ赤になる。
そのまま言葉もなく、謙也くんはただぎゅうっと私を抱きしめてきた。

胸の奥から伝わる鼓動が、手のひらまで響いてくる。
私はほほ笑んでそっと謙也くんの背中に手を回した。

「それ楽しみに受験頑張れそう」

私が告げると、謙也くんの口角が上がった。

「決まりやな!」

寒いクリスマス・イブの夜に交わされた約束。

これまでも、これからも。
互いの未来を、夢を、慈しみながら共に歩んでいこう。

そんな思いを胸に私は力いっぱい謙也くんを抱き締めた。
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