6話:雨に染まる吐息

ふと耳を澄ませば、軒先を叩きつけていた雨音がいつのまにか弱まっていた。
空を仰げば、厚い雲の切れ間から西日が差し込み始めていて――さっきまでの土砂降りが嘘みたいに静かになっている。

「おっ、止んだ」

俺がそう言うと、真優も顔を上げて外を見やる。
濡れた石畳が光を反射して、辺り一面きらきらと輝いとった。

「ほな、帰ろか」

差し出した俺の手に、真優は一瞬ためらってから、少し照れたように指を絡めてくる。
その仕草に思わず笑みがこぼれて、俺は軽く握り返した。

――さっきのこと思い出したら心臓まだ落ち着かんけど。

「風邪ひかんように、家着いたらあったかくするんやで」
「謙也くんもな」

いつもの軽口を交わしながら、雨上がりの道を並んで歩き出す。
湿った空気の中、遠くで鳥の声がして、ほんまに嵐のあとみたいな静けさやった。

でも俺の胸ん中は、嵐みたいにざわざわしたまま。

そんな俺の胸中に気付くことなく、真優は隣を歩いとる。その姿に、なんや安心してしもた。
俺がこんなにも真優んこと独占したいって思うとるなんて、知らんねやろな。

けど、それでもええ。
ちゃんと、守れるようになったら言うから。

西日が濡れた石畳に線を引いていた。
その光の先で、まだ言えん言葉が胸の奥で燻っとった。
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