1話:Captivated by Her Eyes.
不意に真優が俺の手をとった。
目は合わせんと、指を絡めて甘えてくる。
その行動が珍しくて、俺は高鳴る心臓隠しながら、真優の手を握り返した。
「どないしたん?」
「んー?」
そう少しためらってから、真優が口を開いた。
「小さい頃、この目のことで結構からかわれてな」
長いまつげの影が瞳に落ちる。
なんや見たらあかんもんを覗き込んでいる気になって。
それでも目が離せへんで……。
「外国人みたいやーとか、化け物やーとか」
しょーもないやろ? と、けろっと言うけれど、幼い真優にとってはきっと傷つく言葉やったはずで。
現に、話すかどうかためらっとったしな。
真優の視線が、昔のこと思い出すみたいに遠くに向けられて。
「は? なんやそれ。センスない奴らやな」
軽く返すけど、腹ん中は真優にその言葉投げかけた奴らに対する苛立ちでいっぱいや。
その場におったら俺が黙らせたったのに。
ただ、真優ん中では整理されとる出来事っぽくて。
「まあ、子どもってそんなもんやろ?」
なんて。あっけらかんと笑い飛ばした。
けど、反対に俺は悔しさでぐっと息を飲んで。
「自分とちゃうかったらいじりたくなる、みたいな」
「そうかもしれんけど……褒められたことちゃうで」
「まあねぇ」
「やろ?」
そう言い切れば、ふふっと真優が小さな笑い声をあげた。
「謙也くん、絶対しなさそうやもんな」
「当たり前や」
見た目とか身体的特徴とか、そういうのに偏見はない。
むしろ、それがその人を形作る個性やったりもするわけで。
自分とちゃうからって、その特徴をいじるのはナンセンスやと本気で思う。
俺の声が少し熱を帯びたのを感じたのか、真優はぎゅっぎゅっと繋いだ手を握ってくる。
少しむっとした表情のまま、真優に視線を向ければ、彼女は期待を込めた目で俺を見上げて――。
「ちっちゃいとき傍におってくれたらよかったのに!」
思わぬ言葉に目を丸くする。
照れくさいんか、ほんの少しおちゃらけた口調で言うとるけど、多分本音。
『そういうこと言う奴もおる』って頭では理解しとっても、嫌な記憶には変わりなくて。
俺は、ぽんっと真優の頭に手を乗せて笑った。
「せやな。そんときから一緒におったら守ったったで」
「頼もしな」
「いじってくる奴ら黙らせとった」
「あははっ!」
真優の笑顔守るためやったら何でもするやろな。
彼女の嬉しそうな表情に、ついそんなことを考えてしまう。
やけど、そこまで考えてふっと疑念がよぎった。
けど、ほんまにそうやったら?
もし、そんな頃からほんまに一緒におったら、俺は――。
「……なあ」
ふっと浮かんだ疑念を晴らしたくなって、俺は歩みを止める。
真優は突然立ち止まった俺に驚きつつも、同じように足を止めて首を傾げとる。
「うん?」
真っ直ぐに向けられる瞳に息を飲む。
正直、こんなん一瞬でも考えてしもた自分が情けない。
「もし、そんなガキの頃から一緒におったとしても……」
「俺のこと好きになってくれとった?」
相当ダサいとは思うけど、聞かずにはおれんかった。
なんかよう分からん影みたいなんが心に差してきて、ざわざわと落ち着かんで。
真優は呆けたあと、柔らかな笑みを向けてくる。
「そら好きになっとったんちゃう?」
当たり前にそう言って、真優は続ける。
「そんな格好いいことしてくれる男の子おったら、好きにならん方がおかしいやろ」
続けられた言葉に、心臓が強く脈打った。
同時に、強張っとった表情がじわりと緩んで。
真優はゆるやかに細めた瞳に俺を映し込む。
「実際、それでまんまと好きになってしもたしな!」
気恥ずかしそうに告げる真優に胸があたたかくなる。
さっきまで胸にかかっとった暗い影は飛んでいって、ぽかぽかの日向におるみたいや。
そんなあたたかさを噛み締めながら「なら、ええんやけど」と、息を吐く。
真優が迷うことなく『好きになった』と言うてくれたんが嬉しい。
やって、考えてみたらすごいことやねんで?
真優の周りには、誰がどう見たってイケメンの白石がおるし、ダウナー系やけど真優んこと慕いまくっとる財前やっておる。
やのに、今こうやって真優は俺の隣におって。
「……俺、こんな幸せでええんかな」
「何言うてんの? 幸せならそれでええやん」
近くの公園ではしゃぐ小さな子どもの声が響く中、真優の底抜けに明るい声が返ってくる。
淡い水色の――いろんな色を映す瞳は今、俺だけに向けられとる。
目は合わせんと、指を絡めて甘えてくる。
その行動が珍しくて、俺は高鳴る心臓隠しながら、真優の手を握り返した。
「どないしたん?」
「んー?」
そう少しためらってから、真優が口を開いた。
「小さい頃、この目のことで結構からかわれてな」
長いまつげの影が瞳に落ちる。
なんや見たらあかんもんを覗き込んでいる気になって。
それでも目が離せへんで……。
「外国人みたいやーとか、化け物やーとか」
しょーもないやろ? と、けろっと言うけれど、幼い真優にとってはきっと傷つく言葉やったはずで。
現に、話すかどうかためらっとったしな。
真優の視線が、昔のこと思い出すみたいに遠くに向けられて。
「は? なんやそれ。センスない奴らやな」
軽く返すけど、腹ん中は真優にその言葉投げかけた奴らに対する苛立ちでいっぱいや。
その場におったら俺が黙らせたったのに。
ただ、真優ん中では整理されとる出来事っぽくて。
「まあ、子どもってそんなもんやろ?」
なんて。あっけらかんと笑い飛ばした。
けど、反対に俺は悔しさでぐっと息を飲んで。
「自分とちゃうかったらいじりたくなる、みたいな」
「そうかもしれんけど……褒められたことちゃうで」
「まあねぇ」
「やろ?」
そう言い切れば、ふふっと真優が小さな笑い声をあげた。
「謙也くん、絶対しなさそうやもんな」
「当たり前や」
見た目とか身体的特徴とか、そういうのに偏見はない。
むしろ、それがその人を形作る個性やったりもするわけで。
自分とちゃうからって、その特徴をいじるのはナンセンスやと本気で思う。
俺の声が少し熱を帯びたのを感じたのか、真優はぎゅっぎゅっと繋いだ手を握ってくる。
少しむっとした表情のまま、真優に視線を向ければ、彼女は期待を込めた目で俺を見上げて――。
「ちっちゃいとき傍におってくれたらよかったのに!」
思わぬ言葉に目を丸くする。
照れくさいんか、ほんの少しおちゃらけた口調で言うとるけど、多分本音。
『そういうこと言う奴もおる』って頭では理解しとっても、嫌な記憶には変わりなくて。
俺は、ぽんっと真優の頭に手を乗せて笑った。
「せやな。そんときから一緒におったら守ったったで」
「頼もしな」
「いじってくる奴ら黙らせとった」
「あははっ!」
真優の笑顔守るためやったら何でもするやろな。
彼女の嬉しそうな表情に、ついそんなことを考えてしまう。
やけど、そこまで考えてふっと疑念がよぎった。
けど、ほんまにそうやったら?
もし、そんな頃からほんまに一緒におったら、俺は――。
「……なあ」
ふっと浮かんだ疑念を晴らしたくなって、俺は歩みを止める。
真優は突然立ち止まった俺に驚きつつも、同じように足を止めて首を傾げとる。
「うん?」
真っ直ぐに向けられる瞳に息を飲む。
正直、こんなん一瞬でも考えてしもた自分が情けない。
「もし、そんなガキの頃から一緒におったとしても……」
「俺のこと好きになってくれとった?」
相当ダサいとは思うけど、聞かずにはおれんかった。
なんかよう分からん影みたいなんが心に差してきて、ざわざわと落ち着かんで。
真優は呆けたあと、柔らかな笑みを向けてくる。
「そら好きになっとったんちゃう?」
当たり前にそう言って、真優は続ける。
「そんな格好いいことしてくれる男の子おったら、好きにならん方がおかしいやろ」
続けられた言葉に、心臓が強く脈打った。
同時に、強張っとった表情がじわりと緩んで。
真優はゆるやかに細めた瞳に俺を映し込む。
「実際、それでまんまと好きになってしもたしな!」
気恥ずかしそうに告げる真優に胸があたたかくなる。
さっきまで胸にかかっとった暗い影は飛んでいって、ぽかぽかの日向におるみたいや。
そんなあたたかさを噛み締めながら「なら、ええんやけど」と、息を吐く。
真優が迷うことなく『好きになった』と言うてくれたんが嬉しい。
やって、考えてみたらすごいことやねんで?
真優の周りには、誰がどう見たってイケメンの白石がおるし、ダウナー系やけど真優んこと慕いまくっとる財前やっておる。
やのに、今こうやって真優は俺の隣におって。
「……俺、こんな幸せでええんかな」
「何言うてんの? 幸せならそれでええやん」
近くの公園ではしゃぐ小さな子どもの声が響く中、真優の底抜けに明るい声が返ってくる。
淡い水色の――いろんな色を映す瞳は今、俺だけに向けられとる。