6話:雨に染まる吐息
数分もすれば、真優もだいぶ復活した。
やれやれと言った表情で「ほんま、敵わんわぁ」と髪の毛片側に寄せてぎゅっと絞っている。
ぽたぽたと水滴が落ち、まだ濡れとらんかった地面に雨の印を描く。
「……やばない?」
「やばいな」
俺はテニスバッグの中を漁る。
「ほれ」
真優の手に真新しいタオルを押し付けた。
「こっち使ってへんから使い」
そう言って、真優を真正面から見た瞬間、俺は固まった。
真優は「ありがとうな」なんて、平然と俺の手からタオルとっていくけど、俺はぶっちゃけそれどころやなくて。
雨で濡れた制服が真優の身体にぴったり張り付いとって、無意識のうちに喉を鳴らしてしまう。
はっとして、慌てて視線を逸らす。
――見たら、あかんっ!
真優は受け取ったタオルで、何てことなさそうに髪やら顔やら拭いとるけど。
可能なら髪拭くとかより先に、張り付いた制服をこう、できるだけ身体から離してもらえませんかね。
タオルで顔を拭くフリをして誤魔化しつつ、心臓の音がバレへんように息を整える。
何想像しとんねん、俺!
別にそんなん……っ。
女の子やねんから俺とちゃうくて当たり前やろ!?
動揺しまくっとる俺自身に突っ込みを入れる。
やけど、気ぃ付いたら視線は真優に向いてしまって。
にしても、ほんま真優って小さいねんな。
腕も肩幅も華奢やし。
こんなんあっちゅーまに抱き寄せられそう。
……って、あかんあかんあかん!
ぐっと眉間に皺を寄せたとき、不意に雨音に重なるように、真優が小さな声でメロディーを口ずさみ始めた。
思わず視線を上げると、真優は降りしきる雨を眺めながら歌っている。
「それ、なんちゅー曲?」
なんとなく聞きかじったことのあるメロディーに、俺は首を傾げる。
真優は一瞬あっ! みたいな顔をして、それから照れくさそうに「ショパンの雨だれって曲」と答えた。
今の、無意識やったな。
真優は時折、曲を無意識に口ずさむ。
そのときの風景とか情景とかそんなんに合わせたやつ。
そうやって、音楽が溢れ出す真優に触れる瞬間、俺はなんや嬉しなってまう。
真優のこれまで積み重ねてきたもんとか、そういうんがひょっこり顔のぞかせた感じがして。
俺の知らん頃の真優と会えた気がして胸があったかなる。
――やっぱ真優の世界って音楽で、できてんねやなぁ。
「ふぅん」
「なんや恥ずかし。また勝手に歌ってもた」
「ええやん。俺それ聴くん好きやし」
「変やの」
カラカラ笑う真優を見て、ほんの少し鼓動が速くなる。
ほんま、なんでこんな見てて飽きへんねやろ。
その直後、くしゅっと小さなくしゃみが真優の口からこぼれた。
やれやれと言った表情で「ほんま、敵わんわぁ」と髪の毛片側に寄せてぎゅっと絞っている。
ぽたぽたと水滴が落ち、まだ濡れとらんかった地面に雨の印を描く。
「……やばない?」
「やばいな」
俺はテニスバッグの中を漁る。
「ほれ」
真優の手に真新しいタオルを押し付けた。
「こっち使ってへんから使い」
そう言って、真優を真正面から見た瞬間、俺は固まった。
真優は「ありがとうな」なんて、平然と俺の手からタオルとっていくけど、俺はぶっちゃけそれどころやなくて。
雨で濡れた制服が真優の身体にぴったり張り付いとって、無意識のうちに喉を鳴らしてしまう。
はっとして、慌てて視線を逸らす。
――見たら、あかんっ!
真優は受け取ったタオルで、何てことなさそうに髪やら顔やら拭いとるけど。
可能なら髪拭くとかより先に、張り付いた制服をこう、できるだけ身体から離してもらえませんかね。
タオルで顔を拭くフリをして誤魔化しつつ、心臓の音がバレへんように息を整える。
何想像しとんねん、俺!
別にそんなん……っ。
女の子やねんから俺とちゃうくて当たり前やろ!?
動揺しまくっとる俺自身に突っ込みを入れる。
やけど、気ぃ付いたら視線は真優に向いてしまって。
にしても、ほんま真優って小さいねんな。
腕も肩幅も華奢やし。
こんなんあっちゅーまに抱き寄せられそう。
……って、あかんあかんあかん!
ぐっと眉間に皺を寄せたとき、不意に雨音に重なるように、真優が小さな声でメロディーを口ずさみ始めた。
思わず視線を上げると、真優は降りしきる雨を眺めながら歌っている。
「それ、なんちゅー曲?」
なんとなく聞きかじったことのあるメロディーに、俺は首を傾げる。
真優は一瞬あっ! みたいな顔をして、それから照れくさそうに「ショパンの雨だれって曲」と答えた。
今の、無意識やったな。
真優は時折、曲を無意識に口ずさむ。
そのときの風景とか情景とかそんなんに合わせたやつ。
そうやって、音楽が溢れ出す真優に触れる瞬間、俺はなんや嬉しなってまう。
真優のこれまで積み重ねてきたもんとか、そういうんがひょっこり顔のぞかせた感じがして。
俺の知らん頃の真優と会えた気がして胸があったかなる。
――やっぱ真優の世界って音楽で、できてんねやなぁ。
「ふぅん」
「なんや恥ずかし。また勝手に歌ってもた」
「ええやん。俺それ聴くん好きやし」
「変やの」
カラカラ笑う真優を見て、ほんの少し鼓動が速くなる。
ほんま、なんでこんな見てて飽きへんねやろ。
その直後、くしゅっと小さなくしゃみが真優の口からこぼれた。