6話:雨に染まる吐息

最悪や!
引き返されへんとこまで来てから降ることないやろ!

「マジか!?」
「めっちゃ降るやん!」

学校の帰り道。
真優と帰っとったら、突然の大雨に降られてしもた。
確かに、学校出るときも暗い雲立ち込めとったけど。
でも、今日の降水確率二十パーセントとかやったやん!?
そんな低確率で傘とか持たへんわ!

俺は真優の手を引きながら、雨宿りできそうなところを探して走る。
俺一人やったら、家まで突っ切って走ってまうんやけど(浪速のスピードスターは伊達やないっちゅー話や!)、真優が一緒となるとそうも言ってられんわけで。

――確か、この近くに神社あったよな?

そんなことを考えながら、ちらっと真優に視線を向ける。
真優は肩で息して、足元が覚束なくなってきとる。

あ、ぼちぼち限界そう。
そらそうやんな。真優そんな走れるタイプやないもんな。

俺は走りながら「真優!」と呼び掛けた。

「あと五十メートルくらい頑張って! そこら辺に神社あるから」
「わ、かったぁ……」

息絶え絶えの真優の手を握り直して、なるだけ速く引く。
俺が強く手を握れば、こんな状況やのに真優は手を握り返してきて。
そんな彼女が健気で、俺はそっと笑みをこぼした。

大慌てで鳥居をくぐって、拝殿の軒先に滑り込む。
背後では滝みたいな雨音が響いとって、逃げ込んだ場所に閉じ込められとるみたいやった。

ざっと二〇〇メートルほぼ全力疾走。
俺は何てことないけど、隣の真優は両膝に手ぇついて、苦しそうにしとる。

「……いけそう?」

あまりにもつらそうにしとるから思わずそう声を掛けたら、真優は返事もできんみたいに首を横に振った。
その姿が舞台上の真優とはあまりにもかけ離れとって、俺はつい小さく笑てしもた。

いや、笑てる場合ちゃうか。
でも、こんな真優を見られるんは俺だけや、って思うたら余計可愛く見えてまうんよな。
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