4話:手のひらの上で
食後、侑士くんに「ここのケーキ美味いねん」と勧められたケーキに舌鼓を打っていると、不意に「せや」と侑士くんが口にする。
「どないしたん?」
「ん? いや、謙也にかけたろ思て」
言うなり、侑士くんは慣れた手つきでスマホを操作して、テーブルの端に置いた。
ワンコール鳴り終わる前に画面に謙也くんが映り込む。
私がぼんやりと画面を眺めれば、謙也くんはハッとした様子で「は?」と声を荒げた。
「なんで一緒におるねん!?」
「ちょお、お前声でかいわ。こっちはまだ店おんねん」
侑士くんが呆れ口調で告げる。
私はと言うと、もう一口ケーキを口に運んでから、何てことなさそうに返した。
「侑士くんとごはん行く言うたやん」
画面の向こうで、謙也くんがうぐっと息を飲んだのが分かった。
先ほどより、少しだけ声のトーンを落として「いや、聞いた。聞いたけど……」とごねている。
「そんなおしゃんな店で食うてると思わんやん」
「まあ、デートやからな」
侑士くんは紅茶を一口飲むと、さも当然みたいに言い切った。
それと同時に、スマホのボリュームを一気に下げる。
なんでやろ? と見ていれば途端に謙也くんの「はああああ!?」という大声が飛んできて、笑ってしまった。
「お前……っ! 真優は俺の彼女や!」
「知っとるよ。それがどないしてん」
「ど な い し て ん ? は ⁇」
ほんま意味分からんみたいな顔しとって、笑てまう。
お腹抱えて震える私に、侑士くんはそっと耳打ちをしてくる。
……ただ、耳打ちと言っても、思い切り謙也くんに聞こえるように。
「ほんま、真優ちゃんこんなんのどこがええん?」
私は数回瞬くと、ふわっとほほ笑んだ。
「うちのこと大好きで、素直で、可愛くて、優しくて――」
「格好ええとこ?」
そう告げれば、謙也くんが少しだけ頬を赤くして、でもなるべく悟られないように、頑張って口をへの字に曲げて。
「なんで最後聞くねん? 言い切れや!」
「あははっ」
画面越しに笑い合う私たちを見て、侑士くんが頬杖をついた。
「ほんま、自分ら仲ええな」
「そやろ?」
にこにこ笑って肯定する私に、謙也くんのため息が届く。
「真優」
「うん?」
「もう、お前早よこっち帰ってこい」
呆れと苛立ち交じりの声音に首を傾げれば、謙也くんは一瞬侑士くんを見て、悔しそうな顔をした。
それから――。
「……侑士のそば置いときたない」
思わず侑士くんと見合わせ、一緒になって吹き出した。
――え、謙也くん可愛すぎん?
「お前、俺に嫉妬すんなや」
「あはは! ほんまうちのこと好きやな。謙也くん」
私がほんのり頬を赤らめてそう告げれば、謙也くんは「そんなん当たり前やろ!」と声を張り上げる。
途端に胸の内があたたかなもので満たされた。
嬉しくって、顔がほころんで。
私は画面越しに謙也くんを見つめ、幸せに言葉を紡いだ。
「うちも大好きやで!」
「真優!」
そう告げれば謙也くんは、さっきまでの不機嫌をどこかにやって、ぱあっと表情を輝かせて。
私はそれをにっこり受け止めると、淡々と告げる。
「やから、もうちょっと侑士くんに惚気てから帰るよって」
それだけ言って、強制的にテレビ電話切った。
そのままスマホを渡せば、侑士くんはマジか……みたいな顔で私を見ていて。
私は唖然とする侑士くんを見てにやりと笑った。
「こうでもしとかな、あとが大変やさかいな」
侑士くんはふっと笑みをこぼす。
「ほんま、謙也の奴。真優ちゃんの手のひらの上やな!」
楽しそうな侑士くんの声が紅茶の湯気にふわりと溶けた。
私はふふっと笑って告げる。
「ほな、そういうことやから。もうちょっと付き合ってな」
「うちの可愛い彼氏の話」
悪戯にほほ笑めば、侑士くんは参ったとばかりに頬杖をついた。
「こんなん、してやられるわ」
秋風に揺れるティーカップの影を見つめながら、幸せに目を細める。
この手のひらの上のぬくもりが、続きますように。
「どないしたん?」
「ん? いや、謙也にかけたろ思て」
言うなり、侑士くんは慣れた手つきでスマホを操作して、テーブルの端に置いた。
ワンコール鳴り終わる前に画面に謙也くんが映り込む。
私がぼんやりと画面を眺めれば、謙也くんはハッとした様子で「は?」と声を荒げた。
「なんで一緒におるねん!?」
「ちょお、お前声でかいわ。こっちはまだ店おんねん」
侑士くんが呆れ口調で告げる。
私はと言うと、もう一口ケーキを口に運んでから、何てことなさそうに返した。
「侑士くんとごはん行く言うたやん」
画面の向こうで、謙也くんがうぐっと息を飲んだのが分かった。
先ほどより、少しだけ声のトーンを落として「いや、聞いた。聞いたけど……」とごねている。
「そんなおしゃんな店で食うてると思わんやん」
「まあ、デートやからな」
侑士くんは紅茶を一口飲むと、さも当然みたいに言い切った。
それと同時に、スマホのボリュームを一気に下げる。
なんでやろ? と見ていれば途端に謙也くんの「はああああ!?」という大声が飛んできて、笑ってしまった。
「お前……っ! 真優は俺の彼女や!」
「知っとるよ。それがどないしてん」
「ど な い し て ん ? は ⁇」
ほんま意味分からんみたいな顔しとって、笑てまう。
お腹抱えて震える私に、侑士くんはそっと耳打ちをしてくる。
……ただ、耳打ちと言っても、思い切り謙也くんに聞こえるように。
「ほんま、真優ちゃんこんなんのどこがええん?」
私は数回瞬くと、ふわっとほほ笑んだ。
「うちのこと大好きで、素直で、可愛くて、優しくて――」
「格好ええとこ?」
そう告げれば、謙也くんが少しだけ頬を赤くして、でもなるべく悟られないように、頑張って口をへの字に曲げて。
「なんで最後聞くねん? 言い切れや!」
「あははっ」
画面越しに笑い合う私たちを見て、侑士くんが頬杖をついた。
「ほんま、自分ら仲ええな」
「そやろ?」
にこにこ笑って肯定する私に、謙也くんのため息が届く。
「真優」
「うん?」
「もう、お前早よこっち帰ってこい」
呆れと苛立ち交じりの声音に首を傾げれば、謙也くんは一瞬侑士くんを見て、悔しそうな顔をした。
それから――。
「……侑士のそば置いときたない」
思わず侑士くんと見合わせ、一緒になって吹き出した。
――え、謙也くん可愛すぎん?
「お前、俺に嫉妬すんなや」
「あはは! ほんまうちのこと好きやな。謙也くん」
私がほんのり頬を赤らめてそう告げれば、謙也くんは「そんなん当たり前やろ!」と声を張り上げる。
途端に胸の内があたたかなもので満たされた。
嬉しくって、顔がほころんで。
私は画面越しに謙也くんを見つめ、幸せに言葉を紡いだ。
「うちも大好きやで!」
「真優!」
そう告げれば謙也くんは、さっきまでの不機嫌をどこかにやって、ぱあっと表情を輝かせて。
私はそれをにっこり受け止めると、淡々と告げる。
「やから、もうちょっと侑士くんに惚気てから帰るよって」
それだけ言って、強制的にテレビ電話切った。
そのままスマホを渡せば、侑士くんはマジか……みたいな顔で私を見ていて。
私は唖然とする侑士くんを見てにやりと笑った。
「こうでもしとかな、あとが大変やさかいな」
侑士くんはふっと笑みをこぼす。
「ほんま、謙也の奴。真優ちゃんの手のひらの上やな!」
楽しそうな侑士くんの声が紅茶の湯気にふわりと溶けた。
私はふふっと笑って告げる。
「ほな、そういうことやから。もうちょっと付き合ってな」
「うちの可愛い彼氏の話」
悪戯にほほ笑めば、侑士くんは参ったとばかりに頬杖をついた。
「こんなん、してやられるわ」
秋風に揺れるティーカップの影を見つめながら、幸せに目を細める。
この手のひらの上のぬくもりが、続きますように。