2話:いざ、決戦の地へ

テニスコート付近に並べられた備品の数々。
テニスボールから、ドリンクボトルまで本当にたくさん。
そんな備品の間を、私は駆けまわっていた。

「こっちに予備のボール忘れてるよって!」

夏休みに入ってから、四天宝寺中学校テニス部は順調に勝ちを進め、快勝のまま昨年に引き続き関西大会を制した。
これで、関西大会は二連覇。
おかげさまで『シードやから全国出場できた』とか、変なうしろ指さされんと、胸張って全国に臨める。

まあ、圧倒的過ぎて話にならんかったけど……。
関西大会でみんなの試合を間近で見たけど、強すぎるんよ。他の学校が霞むくらい、誇張なしに強かった。

ほんま、ええチームやな。

そんなことを考えて、ふっと小さな笑みを落としたとき、金ちゃんが「真優ー!」と走り寄ってきた。

「金ちゃん! どないしたん?」
飛びついてくる、金ちゃんを抱き止めてそう言えば、金ちゃんはニっと笑って――でも、すぐに口を尖らせ「なあ」と続ける。

「ほんまに全国来おへんの?」

金ちゃんの真っ直ぐな瞳に胸が痛む。

――できることなら、行きたいよって。

喉まで出かかった思いを無理やり飲み込んで、私は「行けへんのです」と、困ったように続けた。

「前にお話したやろ? 今回ばっかりは難しいねん」
「えー! でも、ワイ真優にも来てほしいわぁ」
「そう言うてくれるんは嬉しいねんけどな」

駄々をこねる金ちゃんに手を焼いていると、途端に金ちゃんの頭に拳骨が降ってきた。

「いてっ!」
叫ぶ金ちゃんに、ため息交じりのお説教が届く。
「真優困らせたらあかんで、金ちゃん」

白石くんは私から金ちゃんを引き剥がしながら「堪忍な」と続けた。

「関西終わってからずっとこの調子やねん」
「ええんよ。うちかてほんまはみんなと行きたいしな」

そう返せば、白石くんは少しだけ複雑そうな表情を浮かべる。
別にそんな顔させたいわけとちゃうのに。
私は笑顔を張り付けると「みんなの活躍期待してるよって」なんて、白石くんと金ちゃんの背中を押した。

「絶対優勝するから、期待して待っときや!」
そう言って、走り去っていく金ちゃんに笑みがこぼれた。

「頼もしいルーキーやな?」
「ほんまやで」

白石くんがため息を吐いて、金ちゃんのあとを追うように走って行く。
そんな彼らの背中に小さく手を振りつつ、はて、と首を傾げた。

――どこ行ってしもたんやろ?

にぎやかに準備を進めるテニスコートに、謙也くんの姿が見えない。
いつもやったら誰よりも騒がしく準備しとるはずやのに。
私はそっとテニスコートを後にした。
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