あとがき

【あとがき:おまけ】

昨日の夜は正直あんまり寝られへんかった。
もちろん、今までやって寝られへん夜はあったけど。

――嬉しくて寝られへんかったんとか初めてや。

朝日の差し込む自室で、私は寝ぐせもそのままにぼんやりベッドの上で座っとった。
正直、昨日のことが夢なんやないかと思うてしまう自分がまだおって。

「……謙也くんが、彼氏かぁ」

無意識に紡がれた言葉に、全身が熱を持って――でも、嬉しくって。
私は緩み切った顔を隠すように頭から毛布をかぶった。

□ + ◇ + □

「おはよう」

あのあと、どうにか表情を引き締めて準備を終わらせた私は平静を装いつつ、教室の扉を開けた。
頭の中は『クラスの子らには付き合うたこと言った方がええんかな?』とか『逆にギクシャクしてしもたらどうしよう』とか。
そんなんでいっぱいで。

やけど、私の心配は一瞬で掻っ攫われた。

教室に足を踏み入れた瞬間、私はクラスメイト数名に取り囲まれる。
あっと驚く間もなく、矢継ぎ早に言葉を投げかけられて……。

「謙也と付き合うたんやろ?」
「なあ、どっちから告ったん?」
「いつから謙也のこと好きやったん?」

もう頭の中真っ白。
鞄も肩からずり落ちとる。

よう見れば、教室の端っこの方で男の子らお通夜みたいになっとるし。
普段あんまり話さん子らまで、なんや話したそうにこっち見とるし。

「……え? なんで?」

予想外の状況に素っ頓狂な声が出た。
途端に取り囲んできた子らが「なんでって……」と見合わせる。

「朝から謙也、触れ回ってんで?『真優ちゃんと付き合うたー!』って」

「は……へ?」

予想外の言葉にそんな声が音になって。
次の瞬間、私は思い切り吹き出した。

「なんやの、それ! 謙也くん可愛らしいとこあるなぁ」

あははっ! と、笑いが止まらなくなった私を見て、クラスメイトも笑い始める。

ほんま、気ぃ付いたときには心配事、全部持って行ってまう。

やっぱうち、謙也くんのこと大好きやわ!
2/3ページ
スキ