8話:夏夜の距離と線香花火

「わー! めっちゃきれいやん!」

花火に火をつけた瞬間、金ちゃんが声を上げた。
俺たちは夜六時頃に再集合して、河川敷に集まっとった。

日中より幾分か涼しくなった風に、時折秋の虫の音が混じる。
八月の終わり――季節は着実に秋へ進んどる。

金ちゃんの花火を皮切りに、ユウジや小春たちも花火に火をつける。
赤や黄色、緑――さまざまな色の光が俺たちの顔を照らし出していた。

――あ、なんか夏っぽい。

そんなことを考えていると「や、みんな分かりやすうて助かるわ」と、真優が手を振りながらやってきた。

「遅れてもてごめんな、準備してくれたんやろ?」

それから、肩にかけとった大きな鞄から大容量の手持ち花火を二袋取り出した。

「花火買うてきてん。みんなおるからすぐなくなるんちゃうかと思って」

真優はそう言うと、せっせと袋を開け始める。

「もう一つの方貸し」
俺はそう言うと、真優の傍に寄った。
真優は「ん、ありがとうな。謙也くん」と、もう一袋を渡してくる。

袋を開けて、分別しながら、花火を取りやすいように並べていく。
みんな花火するのに夢中やから、必然的に真優と二人で作業ができて、少しだけ心が浮ついた。

途中、真優に「謙也くんはせぇへんの?」って聞かれたけど、花火よりも真優と作業しとる方が大事やっちゅー話。

「俺はええの。真優来る前にさせてもろたし」
「ふぅん? せやったらええんやけど」

真優は全ての花火を取り出したあと、ごみを一まとめにして河川敷に腰を下ろした。
「? 真優こそせぇへんの?」
不思議に思ってそう聞けば、真優は「んー?」と続ける。

「なんや見てるだけで胸いっぱいになってしもて」

膝を抱えて、頬杖をつく真優の隣に腰を下ろして、同じように眺める。
色とりどりの光に照らされたみんなの顔が、ほんま楽しそうに笑っとって、確かに胸の内があたたかくなる。

「ええな、夏っぽくて」
不意に真優が呟いた。
「せやろ、夏っぽい」

俺は真優の横顔をそっと覗き見た。

長いまつ毛が影を作って、淡い水色の瞳が花火の赤や橙を吸い込んで、ゆっくり色を変えていく。
白い肌が光の色に染まり、色を変え発光する。

――ほんま、綺麗やな。

思わず見惚れていれば、不意に真優の視線がこちらに向いた。
目が合ってドキリとする。
真優は数回瞬くとふわりと笑って口を開いた。

「なぁに? そんな見て。穴開いてしまうよって」
「きれーやなって思とっただけ」
「うわぁ……びっくりするくらい典型的な口説き文句や」
「なんやねん。ほんまのこと言うただけやっちゅーのに」

ふっと同時に吹き出して笑う。
けど、真優の頬は少しだけ赤くて。

――きっと、花火のせいやないと思う。

ぎゃーぎゃーわーわー騒がしい声も、今だけは夏の幻のような気がしてならなかった。
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