7話:Re:start

あのあと、私はしばらく笑いが止まらんかった。

なんでやねん!
おばあちゃんからの縁って繋がるもんなんやなぁ。

なんやおかしくて、胸の奥がくすぐったくて、変な感じ。
隣におる謙也くん見上げて小さく笑いをこぼしたとき、ふっと記憶がよみがえった。

そういえば――。
あれ、いつやったやろ。

前に学校で倒れたとき夢を見た。
おばあちゃんの夢。

あたたかい笑顔で笑っとって。
大事そうに一粒ダイヤのネックレス持って。
おばあちゃん、そのときネックレス誰かに託しとった。

私やない――別の人。

背高くて、金髪で。
おばあちゃんとおんなじ優しい笑顔で、私のこと包み込んでくれる――。


――あれ、謙也くんやったんやなぁ。


あのときから、深層心理で謙也くんのこと求めとったんやろか、なんて。
そんなことを考えていると、不意に謙也くんが呟いた。

「なんや、こんな偶然あるんやなぁ」

ほんまにぼんやり言うもんやから、私はふふっと吹き出してしまう。

「忘れとっただけやろ、謙也くんは」

春の演奏会に来てくれたとき、侑士くんのお父さんにちゃんと『おばあちゃんの孫娘や』ってうちのこと聞いてたんやろ?

謙也くんはむっと口を尖らせて、拗ねた表情を浮かべると「いや、まあそうやけど」と続けた。

「でも、普通そんなんちゃんと覚えてへんって」
「まあ、分からんではないけど。うちかて『忍足』なんて、珍しい苗字やのに、すぐ繋がらへんかったしな」

私は肩をすくめた。

けど、それはそうやろ? 
謙也くんと初めて会うたんは確かに東京やけど、名前知らんかったし。
また会うたと思うたら、住んどんの大阪なんやもん。
繋がらんって。

謙也くんは感慨深そうに「はー……あとで侑士に言うとこ」とか言うている。

――謙也くんとおったら、新しいことばっかやわ。


私のために本気で怒ってくれるのも。
私がこれ以上傷つかんでええようにしてくれるんも。
こないに私のこと大切にしてくれんのも。

こんなん、今まで知らんかったなぁ。

私はふっと立ち止まって、目の前に広がる景色を見た。

ずっと白黒の世界におったのに、今は色がついている。
騒がしい雑音だけの世界やったのに、すぐ隣から「真優?」って優しい声が聞こえてくる。

「……なんや、息苦しかったなぁ」

ぽつりとそう呟けば、謙也くんの心配そうな「は? 体調悪いん?」という声が飛んできた。

私は首を横に振って「ううん」と笑う。
「あははっ! なんでもないよって」
意味が分からなさそうにしている謙也くんの横で、私は胸いっぱいに息を吸い込んだ。

――うん。
ちゃんと息吸えてる。

「よう分からん奴やなぁ」

謙也くんの呟きが、空っぽやった私の中に沁みていく。

「分からん奴なりにいろいろ考えとんの」

そう返せば、「そーですか」と呆れ口調で笑われた。
それすらも、今の私にとっては幸せで――。

「真優」
「んー?」
「ネックレス。また一緒に取りに来よな」

私に向けられる謙也くんの表情が優しい。
私は満面の笑みを浮かべると「うん」と頷いた。
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