6話: You are the most important to me.
俺は楽屋の外で、壁に寄り掛かって腕を組んでいた。
――大丈夫言うてたけど、大丈夫やないよなぁ。
あないに泣き崩れたんは、さすがに初めて見た。
ほんまどえらいもん、胸ん中に溜め込んどるからに……。
尚がこないだ言うとった『姉ちゃんがやばい』っちゅーんは、多分これのことで。
今日の――さっきの一件で、耐えきれんくなってしもたんやろなぁ。
薄皮一枚で繋がっとったもんが、ぷっつり切れて……。
ドロドロの澱みたいなん吐き出して、少しでも気持ち楽になっとったらええんやけど。
そこまで考えて、ため息を吐いた。
『生きてる意味あるん』なんて。
真優の口から聞きとうなかった。
生きてる意味あるに決まっとるし、大事に想うてるに決まっとるねんよ。
胸の奥がズキっと軋むように痛む。
なんでそこまで追い込まれとるって、気付かれへんかったんやろ。
ここ数ヶ月で、どう考えたって一人じゃ抱えきれんくらいの負荷掛かっとったやん。
再びため息が漏れ出た。
それと同時に『待て』と脳内にストップがかかる。
――ちゅーか、俺とんでもないこと口走ってないか!?
俺、真優に好きや言うた!?
気付いた瞬間、俺は口元覆ってずるずるしゃがみ込む。
頬がわずかに熱い。
話の流れとはいえ……。
今、言うことちゃうかったやろ。
小さく呻けば、ガチャっと扉が開いた。
真優が顔を出す。手には俺のスマホ。
「謙也くん、スマホ忘れとるで……って、何してはんの?」
いつも通りの真優の声音に安心しながらも、俺は口元を覆ったまま「なんでもあらへん」と言うのが精一杯やった。
真優は不思議そうな顔をしながらも、俺のすぐ傍にしゃがみこんで顔を覗き込んでくる。
「ふぅん?」
水色の瞳が俺を映し込む。
泣き腫らしたあとやのに、自棄に綺麗で目が離せん。
そう思って、食い入るように真優見つめとったら、突然合点がいったみたいな顔して、小首を傾げる。
「……もしかして、着替えてるとこ想像しはったとか」
思いも寄らない発言に、俺は思わず立ち上がって声を荒げる。
「はあああ!? そ、そそそそそんなんちゃうわっ!!」
真優も立ち上がると腕を組んで、一歩俺ににじり寄る。
「前もうちの着替え、見とったもんなぁ?」
――アレか。
部活で倒れたときのこと言うてるんか、こいつ!!
「いや! ちゃう! あれは真優がっ!」
「うちが何」
お前が!
寝ぼけて!
俺の前で着替えようとしただけやろ!!
声にならない叫びが全身を駆け巡る。
真優はゆるりとほほ笑んで、つま先立ちをした。
できるだけ背伸びをして、俺の耳元で「えっち」と囁く。
俺は反射的に飛び上がった。
「うううう、うるさいっ!」
「ちゃうって言うてるやろ!?」
真っ赤になって叫ぶ俺を、真優は笑って見ている。
――なんや、ちゃんと笑えるやんけ。
からかわれて悔しいやら、恥ずかしいやら感情が忙しい。
やけど、真優の嘘偽りのない笑顔が見られた。
ただ、それだけで全てをチャラにしてしまう俺がいて。
俺は「……覚えとけよ」と捨て台詞を吐くと歩き出した。
なんや、俺。
めっちゃ真優んこと好きやん。
――大丈夫言うてたけど、大丈夫やないよなぁ。
あないに泣き崩れたんは、さすがに初めて見た。
ほんまどえらいもん、胸ん中に溜め込んどるからに……。
尚がこないだ言うとった『姉ちゃんがやばい』っちゅーんは、多分これのことで。
今日の――さっきの一件で、耐えきれんくなってしもたんやろなぁ。
薄皮一枚で繋がっとったもんが、ぷっつり切れて……。
ドロドロの澱みたいなん吐き出して、少しでも気持ち楽になっとったらええんやけど。
そこまで考えて、ため息を吐いた。
『生きてる意味あるん』なんて。
真優の口から聞きとうなかった。
生きてる意味あるに決まっとるし、大事に想うてるに決まっとるねんよ。
胸の奥がズキっと軋むように痛む。
なんでそこまで追い込まれとるって、気付かれへんかったんやろ。
ここ数ヶ月で、どう考えたって一人じゃ抱えきれんくらいの負荷掛かっとったやん。
再びため息が漏れ出た。
それと同時に『待て』と脳内にストップがかかる。
――ちゅーか、俺とんでもないこと口走ってないか!?
俺、真優に好きや言うた!?
気付いた瞬間、俺は口元覆ってずるずるしゃがみ込む。
頬がわずかに熱い。
話の流れとはいえ……。
今、言うことちゃうかったやろ。
小さく呻けば、ガチャっと扉が開いた。
真優が顔を出す。手には俺のスマホ。
「謙也くん、スマホ忘れとるで……って、何してはんの?」
いつも通りの真優の声音に安心しながらも、俺は口元を覆ったまま「なんでもあらへん」と言うのが精一杯やった。
真優は不思議そうな顔をしながらも、俺のすぐ傍にしゃがみこんで顔を覗き込んでくる。
「ふぅん?」
水色の瞳が俺を映し込む。
泣き腫らしたあとやのに、自棄に綺麗で目が離せん。
そう思って、食い入るように真優見つめとったら、突然合点がいったみたいな顔して、小首を傾げる。
「……もしかして、着替えてるとこ想像しはったとか」
思いも寄らない発言に、俺は思わず立ち上がって声を荒げる。
「はあああ!? そ、そそそそそんなんちゃうわっ!!」
真優も立ち上がると腕を組んで、一歩俺ににじり寄る。
「前もうちの着替え、見とったもんなぁ?」
――アレか。
部活で倒れたときのこと言うてるんか、こいつ!!
「いや! ちゃう! あれは真優がっ!」
「うちが何」
お前が!
寝ぼけて!
俺の前で着替えようとしただけやろ!!
声にならない叫びが全身を駆け巡る。
真優はゆるりとほほ笑んで、つま先立ちをした。
できるだけ背伸びをして、俺の耳元で「えっち」と囁く。
俺は反射的に飛び上がった。
「うううう、うるさいっ!」
「ちゃうって言うてるやろ!?」
真っ赤になって叫ぶ俺を、真優は笑って見ている。
――なんや、ちゃんと笑えるやんけ。
からかわれて悔しいやら、恥ずかしいやら感情が忙しい。
やけど、真優の嘘偽りのない笑顔が見られた。
ただ、それだけで全てをチャラにしてしまう俺がいて。
俺は「……覚えとけよ」と捨て台詞を吐くと歩き出した。
なんや、俺。
めっちゃ真優んこと好きやん。