6話: You are the most important to me.
涙がとめどなく溢れる。
嗚咽混じりの涙は拭っても、拭っても留まることを知らない。
悲しいんか、悔しいんか分からへん。
怒っとるんかもしれへん。
でも、もうなんにも分からなくて。
「……なんであないに言われなあかんの」
ぽつりとこぼれた本音。
心の奥底にしまい込んでいた私の大事で大切な本音。
「うちはうちや。お母さんの人形やない」
謙也くんが私をふわりと抱き締めた。
「……知っとる」
私はすがるように、謙也くんの服をつかむ。
「いつになったら解放してくれんねやろ」
「……おん」
「やのに、うちはピアノをやめられへん」
「せやな」
「全部かなぐり捨ててピアノも捨てたら楽なん?」
「真優……」
思いついたままに言葉を発する。
きっと支離滅裂なことを言っているのに、そのどれもが全部本音で嫌になってしまう。
「やけど、今ピアノやめてもうたら……今までのうちの人生、全部。自分自身で否定することになってまう」
ほんま、くだらん人生。
私は自嘲気味に笑って「それだけやあらへんな」と吐き捨てた。
私が言おうとしてることが分かったんか、謙也くんが「それは――っ!」と、遮ろうとする。
けど、もう私の口は止められなくて。
「うちからピアノ取ってもうたら、なんにも残らんやん」
ただ、ひたすらにピアノに人生を捧げてきた。
空っぽになって――。
『一位』っていう結果だけ量産して。
「そんなんで、生きてる意味なんてあるん……」
小鳥遊真優からピアノを取ったら何が残るんやろう。
自分なりに、あの人の支配から逃れようと足掻いてきたつもり、やってんけどな。
……つもりになっとっただけで、ぐちゃぐちゃに壊されとったみたい。
叫び散らした私と反対に、廊下は静寂に包まれて。
力の入らんくなった腕はだらんと床に落ちて。
瞬間――私は強く、強く抱き締められていた。
絶対離したれへんみたいな強い力で。
やのに、ほんまに大切な宝物守るみたいに包み込んで。
「生きてる意味あるに決まっとるやろ……っ!」
謙也くんの声が震えとる。
なんでそないに泣きそうな声で言うん?
……なんで、私なんかに心割けるん。
「っ、真優が、ここに存在して、生きとって」
「それだけで、俺は幸せや」
「笑うて、泣いて、怒って――」
「いろんな感情見せてくれるだけで、俺は嬉しなる」
謙也くんがさらに強い力で、掻き抱いた。
「やから、お願いやからっ」
謙也くんのあたたかさが、触れた手から、胸から、声から伝わる。
「そんなこと言わんといて……」
謙也くんの切な願いに涙が止まらへん。
限界を迎えた心の叫びに心臓が軋むように痛む。
ぼろぼろに崩れた心に、謙也くんの優しさが沁みて痛くて、苦しくて仕方ない。
「安心しい。真優は生きとるだけで充分やねんで」
「そんだけで、真優を大事に想う人は、ちゃんとおるよ」
謙也くんの優しい声が降って来て、思わず顔を上げた。
謙也くんは今にも泣きだしそうで。
やのに、包み込むみたいに優しい表情で。
反対に、謙也くんの瞳に映り込んだ私は、ぐちゃぐちゃのどろどろで。
謙也くんは「少なくとも――」と、私の頭を撫でた。
「俺は真優が好きや」
一瞬、何を言われたんか理解できひんかった。
こんな私を好きだなんて……。
こんなにどろどろの感情をため込んだ――限界で、壊れてしまった私を、なんて。
「出会えて良かったって思うとるし」
「生まれてきてくれて良かったって心から思うとるよ」
真っ直ぐに告げられた、嘘偽りのない言葉。
蛍光灯の白い光が、涙を反射して。
そんなん、ずるいわ。
そんなこと言われたら私は私を認めてしまいそうになる。
醜くて小さい私を受け入れてしまいそうになる。
私は崩れるように声を上げて泣いた。
嗚咽混じりの涙は拭っても、拭っても留まることを知らない。
悲しいんか、悔しいんか分からへん。
怒っとるんかもしれへん。
でも、もうなんにも分からなくて。
「……なんであないに言われなあかんの」
ぽつりとこぼれた本音。
心の奥底にしまい込んでいた私の大事で大切な本音。
「うちはうちや。お母さんの人形やない」
謙也くんが私をふわりと抱き締めた。
「……知っとる」
私はすがるように、謙也くんの服をつかむ。
「いつになったら解放してくれんねやろ」
「……おん」
「やのに、うちはピアノをやめられへん」
「せやな」
「全部かなぐり捨ててピアノも捨てたら楽なん?」
「真優……」
思いついたままに言葉を発する。
きっと支離滅裂なことを言っているのに、そのどれもが全部本音で嫌になってしまう。
「やけど、今ピアノやめてもうたら……今までのうちの人生、全部。自分自身で否定することになってまう」
ほんま、くだらん人生。
私は自嘲気味に笑って「それだけやあらへんな」と吐き捨てた。
私が言おうとしてることが分かったんか、謙也くんが「それは――っ!」と、遮ろうとする。
けど、もう私の口は止められなくて。
「うちからピアノ取ってもうたら、なんにも残らんやん」
ただ、ひたすらにピアノに人生を捧げてきた。
空っぽになって――。
『一位』っていう結果だけ量産して。
「そんなんで、生きてる意味なんてあるん……」
小鳥遊真優からピアノを取ったら何が残るんやろう。
自分なりに、あの人の支配から逃れようと足掻いてきたつもり、やってんけどな。
……つもりになっとっただけで、ぐちゃぐちゃに壊されとったみたい。
叫び散らした私と反対に、廊下は静寂に包まれて。
力の入らんくなった腕はだらんと床に落ちて。
瞬間――私は強く、強く抱き締められていた。
絶対離したれへんみたいな強い力で。
やのに、ほんまに大切な宝物守るみたいに包み込んで。
「生きてる意味あるに決まっとるやろ……っ!」
謙也くんの声が震えとる。
なんでそないに泣きそうな声で言うん?
……なんで、私なんかに心割けるん。
「っ、真優が、ここに存在して、生きとって」
「それだけで、俺は幸せや」
「笑うて、泣いて、怒って――」
「いろんな感情見せてくれるだけで、俺は嬉しなる」
謙也くんがさらに強い力で、掻き抱いた。
「やから、お願いやからっ」
謙也くんのあたたかさが、触れた手から、胸から、声から伝わる。
「そんなこと言わんといて……」
謙也くんの切な願いに涙が止まらへん。
限界を迎えた心の叫びに心臓が軋むように痛む。
ぼろぼろに崩れた心に、謙也くんの優しさが沁みて痛くて、苦しくて仕方ない。
「安心しい。真優は生きとるだけで充分やねんで」
「そんだけで、真優を大事に想う人は、ちゃんとおるよ」
謙也くんの優しい声が降って来て、思わず顔を上げた。
謙也くんは今にも泣きだしそうで。
やのに、包み込むみたいに優しい表情で。
反対に、謙也くんの瞳に映り込んだ私は、ぐちゃぐちゃのどろどろで。
謙也くんは「少なくとも――」と、私の頭を撫でた。
「俺は真優が好きや」
一瞬、何を言われたんか理解できひんかった。
こんな私を好きだなんて……。
こんなにどろどろの感情をため込んだ――限界で、壊れてしまった私を、なんて。
「出会えて良かったって思うとるし」
「生まれてきてくれて良かったって心から思うとるよ」
真っ直ぐに告げられた、嘘偽りのない言葉。
蛍光灯の白い光が、涙を反射して。
そんなん、ずるいわ。
そんなこと言われたら私は私を認めてしまいそうになる。
醜くて小さい私を受け入れてしまいそうになる。
私は崩れるように声を上げて泣いた。