6話: You are the most important to me.
ステージ上に今日演奏した十五人のピアニストが並んだ。
この中から、上位三名の名前がコールされる。
大会運営者の長い話の間、華南ちゃんは「そう言えば、今日お友達来てくれてる言うてなかった?」と小声で聞いてきた。
「ああ、うん。多分どっか座ってると思うけど」
そう言いながら客席に目を向ければ――。
――あ、謙也くんと目ぇ合うた。
瞬間、胸の奥がじんっと熱くなった。
謙也くんは一瞬びっくりしたように目を見開いたあと、ふっとほほ笑んだ。
つられて私も笑顔になる。
「おったよ」
「え、どこ?」
「……あの、なんやめっちゃ目立つ集団」
謙也くんの金髪、金ちゃんの赤髪、やたらイケメンな白石くん――。
なんであないに目立つんやろな、あの子ら。
華南ちゃんは「目立つ集団?」と訝しげに目を細めたかと思えば、すぐに「……あれか」と呆れ声になって続けた。
「あんな大所帯で。男の子ばっか」
「同じ部活の子らやねん。男子テニス部」
「マジ?」
興奮気味にこちらを向いた華南ちゃんに、瀬戸くんの咳払いが飛ぶ。
「今、ステージ上」
私たちは「はぁい」と言うと、照れくさそうに俯いた。
そうしているうちに、順位の発表が始まった。
「第三位。二番、瀬戸孝太郎さん」
受賞者が呼ばれるたびに会場は大きな拍手に湧く。
私と華南ちゃんも瀬戸くんに拍手を送る。
華南ちゃんは「今回は私の勝ちー」とニヤけ顔で、戻ってきた瀬戸くんの顔を覗き込んだ。
瀬戸くんは、一瞬むっとして「うっさいわ」と笑って、元の位置に戻る。
「第二位。十二番、淡路華南さん」
華南ちゃんと私は思わずハイタッチする。
彼女は軽やかに前に出ると盾をもらって帰ってきた。
「おめでとう」
「ありがとうな、真優ちゃん」
瀬戸くんと華南ちゃんが呼ばれた。
小さい頃から切磋琢磨してきた幼馴染の中で、まだ呼ばれていないのは私だけ。
きっと大丈夫。
そう思うものの、呼ばれるまで不安がないわけやない。
この数十秒が、永遠に感じられる。
「第一位。十三番、小鳥遊真優さん」
呼ばれた瞬間、私はほっと息を吐き出した。
同時に華南ちゃんが「お友達にお手々振りしといでや」と送り出す。
思わず振り返って華南ちゃんを見れば、シッシッとされてしまった。犬やないんやけど。
「おめでとう!」
大会運営の方から、一位の証である大きなトロフィーをもらって私は一礼した。
それから、客席に向かって深々と一礼する。
舞台を煌々と照らすライトが熱い。
客席から一斉に向けられる拍手の嵐に、ゆるりと目を細める。
それから私は――客席の四天宝寺のみんなに向かって、拳を突き出した。
――やったで、みんな!
全国大会の雪辱戦、勝ち切ったで!
割れんばかりの拍手の中、私はようやく肩の力を抜いた。
ほんまに、ほんまによかった!
□ + ◇ + □
表彰式が終わって、受賞した私たちは入賞者コンサートの説明を受けるため、別室に呼ばれた。
説明が終わり、楽屋に戻ればすでに他の演奏者たちは居なくなっていた。
まあ、受賞できんかったコンクールの会場にいつまでも居たくない気持ちも分かる。
けれど、あの――私のあとに演奏した子には、声を掛けたかったな、と今になって思う。
この大会まで出られたのだから、辞めないでほしい。
華南ちゃんは盾を置くなり、鞄からスマホを取り出した。
「真優ちゃん写真撮ろ」
「瀬戸くんも」
そう私が声を掛ければ、瀬戸くんは面倒くさそうにしながらも「しゃーなしやで」と寄ってくる。
三人であーでもない、こーでもないと言いながら写真を撮っていれば、不意に華南ちゃんが「そういえば」と口を開いた。
「真優ちゃん部活入ってるってほんま?」
「うん、ほんま」
「え⁉ マジで?」
私と華南ちゃんの会話を聞いた瀬戸くんが、変な顔になって続ける。
「どうやって時間捻出してんの?」
「や、単純に寝てへん」
「寝ろや」
呆れ口調の瀬戸くんに、私は思わず笑う。
同時に、華南ちゃんの眉間に皺が寄った。
「それ、お母さん大丈夫やったん?」
私は思わず遠い目をしてしまう。
「や、全然大丈夫やなかったよって」
「やろな」
瀬戸くんが同意する。
「小鳥遊母、エキセントリック過ぎんねんよ」
「あの人、ちょおおかしいさかいに」
私がため息交じりに答えたとき、楽屋のドアがノックされた。
この中から、上位三名の名前がコールされる。
大会運営者の長い話の間、華南ちゃんは「そう言えば、今日お友達来てくれてる言うてなかった?」と小声で聞いてきた。
「ああ、うん。多分どっか座ってると思うけど」
そう言いながら客席に目を向ければ――。
――あ、謙也くんと目ぇ合うた。
瞬間、胸の奥がじんっと熱くなった。
謙也くんは一瞬びっくりしたように目を見開いたあと、ふっとほほ笑んだ。
つられて私も笑顔になる。
「おったよ」
「え、どこ?」
「……あの、なんやめっちゃ目立つ集団」
謙也くんの金髪、金ちゃんの赤髪、やたらイケメンな白石くん――。
なんであないに目立つんやろな、あの子ら。
華南ちゃんは「目立つ集団?」と訝しげに目を細めたかと思えば、すぐに「……あれか」と呆れ声になって続けた。
「あんな大所帯で。男の子ばっか」
「同じ部活の子らやねん。男子テニス部」
「マジ?」
興奮気味にこちらを向いた華南ちゃんに、瀬戸くんの咳払いが飛ぶ。
「今、ステージ上」
私たちは「はぁい」と言うと、照れくさそうに俯いた。
そうしているうちに、順位の発表が始まった。
「第三位。二番、瀬戸孝太郎さん」
受賞者が呼ばれるたびに会場は大きな拍手に湧く。
私と華南ちゃんも瀬戸くんに拍手を送る。
華南ちゃんは「今回は私の勝ちー」とニヤけ顔で、戻ってきた瀬戸くんの顔を覗き込んだ。
瀬戸くんは、一瞬むっとして「うっさいわ」と笑って、元の位置に戻る。
「第二位。十二番、淡路華南さん」
華南ちゃんと私は思わずハイタッチする。
彼女は軽やかに前に出ると盾をもらって帰ってきた。
「おめでとう」
「ありがとうな、真優ちゃん」
瀬戸くんと華南ちゃんが呼ばれた。
小さい頃から切磋琢磨してきた幼馴染の中で、まだ呼ばれていないのは私だけ。
きっと大丈夫。
そう思うものの、呼ばれるまで不安がないわけやない。
この数十秒が、永遠に感じられる。
「第一位。十三番、小鳥遊真優さん」
呼ばれた瞬間、私はほっと息を吐き出した。
同時に華南ちゃんが「お友達にお手々振りしといでや」と送り出す。
思わず振り返って華南ちゃんを見れば、シッシッとされてしまった。犬やないんやけど。
「おめでとう!」
大会運営の方から、一位の証である大きなトロフィーをもらって私は一礼した。
それから、客席に向かって深々と一礼する。
舞台を煌々と照らすライトが熱い。
客席から一斉に向けられる拍手の嵐に、ゆるりと目を細める。
それから私は――客席の四天宝寺のみんなに向かって、拳を突き出した。
――やったで、みんな!
全国大会の雪辱戦、勝ち切ったで!
割れんばかりの拍手の中、私はようやく肩の力を抜いた。
ほんまに、ほんまによかった!
□ + ◇ + □
表彰式が終わって、受賞した私たちは入賞者コンサートの説明を受けるため、別室に呼ばれた。
説明が終わり、楽屋に戻ればすでに他の演奏者たちは居なくなっていた。
まあ、受賞できんかったコンクールの会場にいつまでも居たくない気持ちも分かる。
けれど、あの――私のあとに演奏した子には、声を掛けたかったな、と今になって思う。
この大会まで出られたのだから、辞めないでほしい。
華南ちゃんは盾を置くなり、鞄からスマホを取り出した。
「真優ちゃん写真撮ろ」
「瀬戸くんも」
そう私が声を掛ければ、瀬戸くんは面倒くさそうにしながらも「しゃーなしやで」と寄ってくる。
三人であーでもない、こーでもないと言いながら写真を撮っていれば、不意に華南ちゃんが「そういえば」と口を開いた。
「真優ちゃん部活入ってるってほんま?」
「うん、ほんま」
「え⁉ マジで?」
私と華南ちゃんの会話を聞いた瀬戸くんが、変な顔になって続ける。
「どうやって時間捻出してんの?」
「や、単純に寝てへん」
「寝ろや」
呆れ口調の瀬戸くんに、私は思わず笑う。
同時に、華南ちゃんの眉間に皺が寄った。
「それ、お母さん大丈夫やったん?」
私は思わず遠い目をしてしまう。
「や、全然大丈夫やなかったよって」
「やろな」
瀬戸くんが同意する。
「小鳥遊母、エキセントリック過ぎんねんよ」
「あの人、ちょおおかしいさかいに」
私がため息交じりに答えたとき、楽屋のドアがノックされた。