5話:支配者

よく晴れたこの日、俺らはコンサートホールの前にいた。
揃ったんは、俺に白石、財前、千歳、金ちゃん。それから、銀と小春にユウジ、小石川。

大阪に帰ってきて三日。
オサムちゃんの意向で部活はまるっと休みやったから、久々の再会になる。
この三日間で各々、全国の結果に折り合いをつけとるのか、思ったより晴れやかな表情を浮かべとった。

もちろん、理由はそれだけやのうて。
今日――俺たちのもう一つの全国大会が行われることも関係しとると思う。

全日本音楽家コンクール。
日本中から予選を勝ち上がった上位十五名が出場できる、国内最大規模のコンクールやと、財前が言うとった。

これに、真優が出る。

テニスの全国大会の雪辱戦やと、発破かけた真優を俺たちは応援しに来たっちゅーわけや。

コンサートホールのロビーに入れば、不意に「謙也くん!」と声が掛かった。
声の方を見れば、尚が片手をあげて走って来とる。
「尚、今日ほんまおおきにな!」
俺は尚に礼を述べた。

なにせこの人数でコンクール見に行くと、言うたんは約一週間前。
そんな直前に言うて、チケットが手に入るんか分からんかったけど、尚が手配してくれた。

尚は首を横に振ると俺の手に九人分のチケットを渡す。

「姉ちゃんが持っとったんです」
「あ、そうやったん」

そんな会話を繰り広げとると、不意に白石がうしろから覗き込んできた。
「謙也、この子は?」
尚は白石を視界に納めると、ぺこっと頭を下げ口を開く。

「小鳥遊尚です。姉がお世話になってます」
「ああ、真優の弟かいな。なんや謙也と知り合いなんやな」
「うちの翔太と仲ええんやて。ほんで、こないだうち来とるときに話した」
「へぇ、翔太と」

尚はにこりと笑うと俺にそっと耳打ちする。

「姉ちゃんのこと、ありがとうございました」
「今日は少し元気そうやったから」

それ聞いて、俺はほっと息を吐き出した。
同時に、昨日の公園でのやり取りを思い出し、ぐっと息を飲む。

『充電させて』と抱きついてきた真優を、抱き締め返した自分の手を見て、意思に反して耳まで赤くなった。

尚はそんな俺の様子に気が付かず「そしたら……」と頭を下げる。

「俺、関係者やから。ずっとこっちにはいてられへんで」
「ああ、ほんなら姉ちゃんによろしく言うといて」
白石が軽い調子で続ける。
「みんな応援しに来たでって」

尚は頷くと、もう一度頭を下げて、走り去っていった。
うしろ姿を見送っていると、不意に肩に手を乗せられる。
――白石や。

「で、なんでお前は赤くなっとんの?」

いい笑顔で聞いてくる白石に、若干の苛立ちを感じながら、俺は「……ほっとけ」と返すのが精一杯やった。
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